フォトグラメトリとは?作成方法とメジャーなソフト9選

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近年、ARやVRなどで3Dの画像データを見る機会が増えました。

3Dデータと触れ合う機会が増え、注目されている技術があります。それがフォトグラメトリです。

フォトグラメトリとは、写真を元にして3Dデータを作成する技術を指します。フォトグラメトリは新しい言葉のように思えますが、実は何世紀も前から地球の表面や芸術作品の形を把握する分野では確立した技術でした。

フォトグラメトリはビジネスや教育現場にも取り入れられ、重要な役割を担っています。そこで、本記事ではフォトグラメトリを作成するソフトの紹介を中心に、フォトグラメトリ作成手順や活用方法について紹介していきます。

フォトグラメトリとは

フォトグラメトリとは、写真から3Dモデルを作成するものです。

例えば、地球の表面を把握するモデルや美術品の3Dモデルをイメージしていただけるとわかりやすいでしょう。フォトグラメトリは、さまざまな方向から撮影した対象物の写真データを元に、信頼性のある寸法を解析して3Dモデルを形成します。

フォトグラメトリ自体は何世紀も前から利用されている技術ですが、近年のコンピュータ技術の発達により、誰でも簡単に利用できるようになりました。今では建築業界や医療業界、教育現場などの専門的な分野をはじめ、ゲーム業界やエンタメ業界など多くの業界で活用されています。

それでは、具体的な作成方法について解説していきましょう。じつは、3Dモデルを作成するには特殊な機材や技術が必要ありません。

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フォトグラメトリの作成に必要な機材

フォトグラメトリの作成に必要な機材としては、主に下記の5点です。

  • パソコン
  • カメラ
  • フォトグラメトリ用ソフトウェア
  • 回転台
  • スタジオ

上記のとおり、フォトグラメトリの作成に特殊な機材は必要ありません。また、回転台とスタジオは無くても作成が可能です。ここでは、パソコン・カメラ・ソフトウェアについて具体的に解説します。

パソコン

フォトグラメトリの作成にはパソコンが必要となります。写真データを取り込み、ソフトウェアで処理するためのパソコンです。ただし、特殊な仕様ではなく、一般的なパソコンで問題ありません。

ただし、ソフトウェアによる処理が必要なため、できれば処理能力の高い仕様のパソコンがおすすめです。パソコンの能力によって処理時間は大きく変わります。また、古い仕様のパソコンではソフトウェアに対応できない可能性もあるため、注意が必要です。

カメラ

フォトグラメトリの作成には写真が必要なため、カメラの準備が必要です。しかし、カメラも特殊な仕様のものではなく、一般的なデジタルカメラであれば問題ありません。

推奨はデジタル一眼レフやミラーレス一眼ですが、近年はスマートフォンのカメラも解像度が高く高品質になりました。したがって、スマートフォンのカメラでもフォトグラメトリの制作は可能です。

ソフトウェア

写真データを3Dモデルに変換するには、専用ソフトが必要です。フォトグラメトリの作成ソフトは複数の企業からリリースされ、それぞれのソフトウェアには特徴があります。

有料のソフトウェアは機能も充実していて痒い所に手が届く印象がありますが、無料で利用可能なソフトウェアもあります。お試し感覚でフォトグラメトリを作成する場合には、無料のソフトウェアがおすすめです。具体的なソフトウェアについては後述します。

それでは、続いてフォトグラメトリの作成方法について解説しましょう。

フォトグラメトリの作成方法

フォトグラメトリで出来上がった3Dモデルを見ると、作成手順が難しい印象を持つかもしれません。しかし、実際は意外と簡単。フォトグラメトリの作成手順は下記のとおりです。

  1. 機材・ソフトの準備
  2. 写真撮影
  3. 3DCGモデルの作成
  4. レタッチ

それぞれについて、もう少し詳しく解説します。

STEP1:機材・ソフトの準備

前述したとおり、まずはPC、カメラ、ソフトウェアの準備が必要です。また、写真は明るい環境で対象物がはっきりわかるように撮影した方がよいため、スタジオや回転台の使用を推奨します。

STEP2:写真撮影

準備ができたら、対象物を撮影します。フォトグラメトリ用の写真撮影には、下記の4点に注意してください。

  • 対象物のすべての面を撮影する
  • 手振れに気を付ける
  • 光の反射や照明物の色飛びに注意する
  • ざらざらした質感の台の上に置いて撮影する

対象物のすべての面を撮影するには回転台の使用がおすすめです。必須ではありませんが、撮影時の時短アイテムといえます。

手振れはシャッタースピードが遅い場合に発生しやすいため、可能であればリモート機能による撮影がよいでしょう。また、撮影時にはシャッタースピードを上げるためにも明るい撮影環境がおすすめです。

ただし、明る過ぎると逆に反射や色飛びの可能性もあります。対象物の輪郭や凹凸がはっきり写るように注意してください。対象物が小さい場合には、ざらざらした質感の台の上に設置した方が3Dモデルの仕上がりがよくなります。

STEP3:3DCGモデルの作成

写真が撮影できたら、いよいよ3DCGモデルの作成です。具体的な手順は次のとおり。

  1. 撮影した写真をパソコンに取り込む
  2. 専用ソフトで3DCGモデルを生成

写真をパソコンに取り込む際には、パソコン内蔵のストレージに保存してください。外部メモリでもフォトグラメトリ作成は可能ですが、処理が遅くなる可能性があります。

また、写真枚数が多いほど高精度の3Dモデルが生成されますが、その分処理に時間がかかります。したがって、作業をしながら最適な写真枚数を見つけてください。なお、フォトグラメトリの作成方法は使用するソフトにより異なるため、ここでは言及しません。

STEP4:レタッチ

フォトグラメトリ作成ソフトによって出来上がった3Dモデルは、最終的なレタッチが必要となります。レタッチとは、輝度やホワイトバランス、コントラスト、彩度などを調整して修正することです。

完成した作品を見て「何か物足りない」と感じたら、レタッチをおすすめします。実際のイメージと3Dモデルの違いを埋めるように、表面の質感や風合いの微調整を行なってください。

それでは、つづいてフォトグラメトリの作成ソフトを紹介しましょう。

無料で利用できるフォトグラメトリ用ソフトウェア5選

フォトグラメトリ作成用のソフトウェアには有料のものと無料で利用できるものがあります。無料ソフトの最も大きなメリットは、手軽に利用できる点でしょう。機能面では有料ソフトに劣るかもしれませんが、フォトグラメトリの入門としては最適です。

ここでは、無料で利用できるフォトグラメトリ作成ソフトを紹介します。無料ソフトはいくつもの種類がありますが、おすすめできるソフトは以下の5つです。

  • 3DF Zephyr
  • Meshroom
  • VisualSFM
  • COLMAP
  • Regard3D

それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。

3DF Zephyr

3DF Zephyrはイタリアの3DFLOW社が開発したフォトグラメトリ作成用のソフトウェアです。特徴は以下のとおり。

  • 無料版と有料版(Lite版・Pro版・Aerial版)がある
  • 使用できる写真枚数が異なる
    ・無料版:50枚
    ・Lite版:500枚
    ・Pro版・Aerial版:枚数制限無し
  •  編集ツール
    ・無料版:利用制限あり
    ・有料版:制限無し
  •  ユーザー数が多く情報が豊富
  •  出力ファイル:ply、obj、fbx、pdf 3D、u3d、dae、pts、ptx、xyz、txt、las、e57に対応

Meshroom

MeshroomはAdobe Researchが開発した、無料で利用できるフォトグラメトリ作成用のソフトウェアです。特徴は以下のとおり。

  • AliceVisionフレームワークに基づいている
  • Windows・Linuxで利用可能(Mac非対応)
  • サーフェスポイント間の距離を計算してオブジェクトのメッシュを作成
  • ドラッグ・アンド・ドロップエディター搭載
  • 最大1000枚以上の写真を利用可能
  • Houdini、Blender、Mayaとも互換性あり
  • 出力ファイルのフォーマット:abc、obj

VisualSFM

VisualSFMは「Structure from Motion(動きからの構造)」 を意味する名前の、完全無料で利用できるフォトグラメトリ作成用のソフトウェアです。VisualSFMの特徴は以下の通り。

  • 3D生成のワークフローがシンプル
  •  機能制限なし
  • メッシュの作成や点群のクリーンアップには追加のソフトウェアが必要
  • 取り扱い説明が豊富
  • 出力ファイルのフォーマット:ply
  • 対応OS:Windows、macOS、Linux

COLMAP

COLMAPはスタンフォード大学とGoogle AIによって開発された無料で利用できるフォトグラメトリ作成用のソフトウェアです。COLMAPの特徴は以下のとおり。

  • コマンドプロンプトでの作業が必要(インストール・コマンド実行)
  • 高度なオプションが多い
  • 研究目的で開発された
  • 時短での3Dモデリングには不向き
  • 詳細な3Dモデルに最適
  • 対応OS:Windows、macOS、Linux
  • 日本語に対応している

Regard3D

Regard3DはフランスのArevo社によって開発された無料で利用できるフォトグラメトリ作成用のソフトウェアです。Regard3Dの特徴は以下のとおり。

  • 強力なサードパーティツールとライブラリを搭載
  • 設定やパラメーターの操作がやや難しい
  • 密な点群の復元には別のツールが必要
  • 対応OS:Windows、macOS、Linux
  • 日本語に対応している
  • 継続的に更新されている

有料のフォトグラメトリ用ソフトウェア4選

有料のフォトグラメトリ作成用ソフトウェアは無料ソフトに比べて高機能で動作も安定しています。したがって、本格的にフォトグラメトリを作成してみたいと考える場合には、有料ソフトをおすすめします。

おすすめの有料ソフトウェアは下記の4つです。

  • RealityCapture
  • Agisoft Metashape
  • Artec Studio
  • PhotoModeler

それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。

RealityCapture

RealityCaptureはEpic Games社が提供しているフォトグラメトリ作成用のソフトウェアです。RealityCaptureの特徴は以下のとおり。

  • UIが使いやすい
  • フル機能搭載
  • チュートリアルとサポートが充実
  • Windowsでのみ使用可能
  • 出力ファイルのフォーマット:jpg、png、XYZ、XYZRGB、tiff、bmp、dib、rle、jpeg、jpe、jfif、exif、exr、tif、wdp、jxr、dds、KML、KMZ、obj、ply、partlist、fbx、dxf、dae、 bvh、htr、trc、asf、amc、c3d、aoa、mcd、wmv、mp4
  • 価格:
    ・無制限のライセンス: US$3,750
    ・3,500 PPIまで: US$10
    ・8,000 PPIまで:US$20

Agisoft Metashape

Agisoft Metashapeは航空写真、近距離写真、衛星写真などの3Dモデル作成を得意とするフォトグラメトリ作成用のソフトウェアです。Agisoft Metashapeの特徴は以下のとおり。

  • クラウドおよびネットワークの処理機能
  • 包括的なナレッジベース
  • 豊富な機能の数々
  • 短所
  • Professional EditionはUS$3,499 と比較的高め
  • Standard Editionはお手頃価格の(US$179) ですが、機能がかなり制限されており、ProfessionalとStandardの中間版はありません。
  • 出力フォーマット:
    ・テクスチャ: JPG、TIFF、PNG、BMP、OpenEXR、JPEG 2000
    ・カメラのキャリブレーション: xml、ini、cal、dat
    メッシュと点群: obj、ply、pts、las、laz、e57、u3d、dxf、oc3、cl3、3ds、dae、abc、stl、fbx、wrl、glb、x3d、osgb、kmz
  • 対応OS:Windows、macOS、Debian/Ubuntu
  • 価格:
    ・Professional Edition: US$3,499
    ・Standard Edition: US$179

Artec Studio

Artec StudioはAIニューラルエンジンを搭載したフォトグラメトリ作成用のソフトウェアです。Artec Studioの特徴は以下の通り。

  • 使いやすさ
  • 直感的な操作が可能
  • 技術の習得がしやすい
  • 高精度(最大2ミクロン)
  • 定期的なアップデートあり
  • サポートが充実している
  • Artec 3Dスキャナのみに対応
  • 出力ファイル:
    ・メッシュ:OBJ、PLY、WRL、STL、AOP、ASC、Disney PTEX、E57、XYZRGB
    ・点群 (Artec Rayのみ): PTX、BTX、XYZ
  • 対応OS:Windows、Boot Campを介したmacOS
  • 価格:
    ・永久ライセンス: US$2,900
    ・サブスクリプション: US$1,200/年

PhotoModeler

PhotoModelerはシンプルなプロジェクトから大規模なプロジェクトまで対応できるフォトグラメトリ作成用のソフトウェアです。PhotoModelerの特徴は以下のとおり。

  • StandardとPremiumの2種類がある
  • 作業時間の短縮が可能
  • 非接触測定に対応
  • 高精度
  • 動いている対象物のキャプチャが可能
  • 他の測定データソースとの統合が可能
  • 対応OS:Windows、Macintosh、Hybrid、Linux、Unix、Android、iOS

価格は下記のように、製品とライセンスの種類によって異なります。

製品名 ライセンスの種類 価格
PhotoModeler Standard 恒久ライセンス ¥153,670
恒久ライセンス メンテナンス更新 (年間) ¥28,270
アカデミック ライセンス 問い合わせ
年間サブスクリプション ¥84,370
PhotoModeler Premium 恒久ライセンス ¥353,870
恒久ライセンス メンテナンス更新 (年間) ¥48,950
アカデミック ライセンス 問い合わせ
年間サブスクリプション ¥149,050

ビジネスにおけるフォトグラメトリの活用方法

フォトグラメトリは、下記のようなさまざまな分野で活用されています。

  • デジタルアーカイブ化
  • Webサイトでの活用
  • VRやAR、メタバースでの活用
  • 教育ツールとしての活用
  • 医療現場での活用
  • シミュレーションでの活用
  • NFTでの活用

今後は上記以外の分野においても、さらに活用されるシーンが増えるでしょう。フォトグラメトリがビジネスに与える影響も計り知れません。

ここでは、代表的な活用事例を3つに絞って紹介します。

フォトグラメトリを使ってデジタルアーカイブ化

フォトグラメトリを利用すれば、出版物や芸術作品などをデジタルアーカイブ化できます。つまり、対象物そのものを保存しておかなくても、そのときの状態を3Dモデルとして保存しておけるというもの。

たとえば美術館の作品や博物館の貴重な資料なども3Dモデルとして保存できるだけでなく、データさえ送ればどこでも再現や共有、検索が可能です。

しかも、デジタルデータのため、月日が流れても風化することはありません。また、元の作品や資料を正しく保管すれば、余計な劣化や破損を防げます。

フォトグラメトリをWebサイトで活用

フォトグラメトリをWeb上での公開が可能です。フォトグラメトリをWebサイトに掲載することで、従来の写真や2Dの映像で表現していたWebサイトよりもイメージしやすくなります。

フォトグラメトリの最も大きなメリットは、ユーザーの操作によって360度どこからでも対象物を見られる点です。

たとえば、ショップ内の商品画像がフォトグラメトリを活用した3Dモデルであったと考えてください。フォトグラメトリで商品を360度確認できれば、商品のメリットをより伝えられ、購買意欲も高まります。

現在、Web上にはショップや不動産物件の内見など、さまざまなサービスがあります。今後はさまざまな分野のWebサイトでフォトグラメトリが活用されることになるでしょう。

メタバースではフォトグラメトリが有効

近年、話題の尽きないメタバースでもフォトグラメトリで作成した3Dモデルが活用されています。メタバースとはビジネスモデルとしても注目を集めている、インターネット上に構築された仮想空間です。

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メタバース内では、建造物や町並みをリアルに再現しています。これらすべては3Dモデルです。仮想空間に出店している店舗も同様で、現実世界に近い世界を体験できます。

また、メタバースはゲームエンジンの最適化によって、さまざまなデバイスに対応できる点にも着目すべきです。ビジネスチャンスは今後ますます拡大することが予想されます。

フォトグラメトリ作成ソフトの活用で便利な世の中に

フォトグラメトリは写真から3Dモデルのデータを生成する技術です。現在は美術館や博物館などのデジタルアーカイブやWebショップの商品画像などに活用されています。

フォトグラメトリ作成ソフトの中には無料で利用できるものもあり、手軽に楽しみたい場合には無料のソフトの利用がおすすめです。ただし、無料ソフトは機能制限があったり、使いづらかったりとデメリットがあります。そのため、本格的な3Dモデルを作成する際には有料ソフトがおすすめです。

フォトグラメトリは多くの可能性を秘めています。しかし、現状では手付かずの分野もあり、まだまだ活用されていません。今後はフォトグラメトリでビジネスの可能性が広がるでしょう。