Cookie(クッキー)規制で何が変わるのか|マーケティングへの影響と解決策

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Cookie

インターネット・マーケティングをフル活用している企業は、Cookie(クッキー)規制について知っておく必要があるでしょう。
現在、クッキー規制が強化される流れにあり、企業のマーケティング戦略に大きな影響を与えるからです。
この記事では、クッキーの基礎知識とクッキー規制について紹介したうえで、企業のマーケティング戦略への影響や、その対策について考えていきます。

Cookie(クッキー)はなぜマーケティングで重要なのか

総務省はクッキーを「Webサーバーがクライアント・コンピュータに預けておく小さなファイル」と定義しています。
クライアント・コンピュータとは、「私たちのパソコンやスマホ」のことです。そして人々がパソコンやスマホでサイトを閲覧しているとき、そのサイトを開設している大きなコンピュータのことを、Webサーバーといいます。

ある人が自分のパソコンで、あるサイトに初めて接続したとします。このときWebサーバーにクッキーの仕組みが組み込まれていると、Webサーバーがそのパソコンに、そのWebサーバー専用のクッキー・ファイル(=クッキー)をつくります。
そのクッキーには、その人の個人情報が含まれています。

そして同じ人が次に同じサイトを開くと、ブラウザがクッキーをそのWebサーバーに送信します。Webサーバーが、送信されたクッキーを読み取ることで、その人の情報を入手することができます。

ではなぜクッキーが、企業のインターネット・マーケティングで重要な位置を占めているのでしょうか。

企業がCookie(クッキー)を使ってできること

企業が自社のサイトや自社のWebサーバーにクッキーの仕組みを搭載しておくと、次のことができます。

【事例1】
ある人が通販サイトを開き、商品を買い物カゴに入れたものの、支払いの手続きをせずにその通販サイトを閉じたとします。同じ人が次にまたその通販サイトを開くと、買い物カゴに商品が入ったままになっていることがあります。
通販サイトのWebサーバーが、この人の個人情報が入ったクッキー(=クッキー・ファイル)を受け取ったうえで内容を読み取っているので、こうしたことが通販サイト上で可能になります。

【事例2】
あるサイトを閲覧したあとに、そのサイトとはまったく関係ないSNSを開いたときに、そのSNSにそのサイトに関連する広告が表示されることがあります。これもクッキーの送受信が行われたことで起きた現象です。

【事例3】
同じ傾向のサイトをいくつも閲覧していると、別の機会にコンテンツを提供しているサイトを開いたときに、その傾向に合致したコンテンツが優先的に表示されることがあります。このサービスもクッキーによって可能になりました。

事例1では、通販サイトの利便性が高まるので、販売増が見込めます。
事例2では、サイトのPRができます。事例3では、企業は、自社がつくったコンテンツを、そのコンテンツを「みたがっていそうな人」にみせることができます。コンテンツの視聴率が高くなり、無視される確率が低くなります。
いずれもマーケティングを強化しており、クッキーはマーケティング・ツールである、ということが言えます。

その他にも、クッキーを使えば、企業は次のことができるようになります。

  • 顧客のスコアリングが可能になり、顧客の状況に合わせたマーケティング施策を自動化できる。
  • 顧客1人ひとりに適したパーソナライズされたマーケティング・キャンペーンを提供できる。
  • 離脱した顧客の追跡ができる。
  • ターゲティング広告を出すことができる。

こうしたインターネット・マーケティングを実現できるのは、サイトを運営する企業がクッキーを使い、閲覧者や消費者の個人情報、メールアドレス、訪問回数などを入手できるからです。
しかし多くの人はそのことについて意識はしておらず、知らない間に個人の情報が取得されているという状況が続いていました。そこで起きたのが「クッキーの規制」という考えです。

Cookie(クッキー)規制とは

クッキーには、ファーストパーティ・クッキーとサードパーティー・クッキーがあります。

ある人が、あるサイトを閲覧したとき、そのサイトのサーバーが閲覧者に発行するクッキーのことを、ファーストパーティ・クッキーといいます。
閲覧者が閲覧しているサイトのサーバー以外の別のサーバーが発行するクッキーのことを、サードパーティー・クッキーといいます。

例えばとあるサイトを閲覧した際、そのサイト自身が発行するのはファーストパーティ・クッキーですが、そのサイトに別のサーバーから出されている広告が表示されていた場合、実は、その広告を通じて発行されるクッキーがあるのです、それがサードーパーティー・クッキーです。

なぜサードパーティー・クッキーが問題なのか

ファーストパーティ・クッキーが規制の対象にならないのは、利用者が自主的に訪問しているサイトのサーバーがクッキーを発行しているからです。
しかしサードパーティー・クッキーは、利用者が自分で訪問しているわけではないサーバーがクッキーを発行しています。そのため、インターネットの利用者は、「知らないうちに自分の個人情報を抜き取られている」状態とみなすことができ、それが問題視され、規制につながりました。

Web広告は、利用者が自分で訪問しているわけではないサーバーと紐づいており、サードパーティー・クッキーの発行が可能になります。

サードパーティー・クッキーは、インターネット利用者がアクセスしたあらゆるサイトの情報を継続的に収集できます。サードパーティー・クッキーの実行者は、クッキー内のデータを使ってターゲティング広告やコンテンツ表示の最適化を実現でき、それをビジネスとしているのです。
例えばFacebook広告を出したいと思ったとき「車に興味がある」という属性をターゲットにして広告を出すことができます。これは、サードパーティー・クッキーのデータを基にしたデジタルマーケティングです。

これを快適に感じるインターネット利用者にはクッキーは問題になりませんが、クッキーを過剰なサービスとみなしてプライバシー侵害と考える人もいます。

Cookie(クッキー)規制の内容

普通「規制」といえば、政府や行政機関が法律などを使って、企業に特定のことをさせないようにすることですが、クッキー規制は自主規制の色合いが強くなっています。つまり、これまでクッキー(特にサードパーティー・クッキー)を使ってビジネスをしてきた企業が、個人情報保護の観点から、自ら「やめていこう」と判断したわけです。
例えばグーグルは、2022年までにサードパーティー・クッキーのサポートをやめると宣言しています。またApple社が提供するwebブラウザ「safari」では、既にサードパーティ・クッキーをブロックする仕様になっています。

クッキー規制は今後、強まることはあっても弱まることはないでしょう。そのため、インターネット・マーケティングを活用している企業は、クッキーに代わる、インターネット・マーケティング・ツールを探さなければなりません。

Cookie(クッキー)規制によるマーケティングへの影響

クッキー規制が強まるということは、インターネットを使った顧客データの収集が難しくなることを意味します。具体的な影響としては、そうした顧客データを基にしたターゲティング広告が出しづらくなったり、パーソナライズ化の精度が落ち、顧客に最適なコンテンツを届けることが難しくなったりします。
つまり企業は、広告効果が低下したり、コンテンツ・マーケティングの成功率が下がるということです。

クッキーの誕生によって、企業が求める消費者へのアプローチを容易にしました。しかし逆に今、クッキー規制によって、企業が求める消費者へのアプローチが難しくなろうとしています。
クッキーが生まれる以前に行なっていた、不特定多数を対象にした「無駄撃ち」が多いマーケティング・キャンペーン戻ってしまう可能性があるのです。また、マーケティング・キャンペーンのパーソナライズ化も後退するでしょう。

では、企業のマーケティング担当者は今後、何をしたらよいのでしょうか。

Cookie(クッキー)規制に対して、マーケティング担当者が取りうる対策は

クッキー規制に対して、マーケターが取りうる対策を考えていきましょう。

グーグルの新サービスを活用する

インターネット・マーケティングでは、多くの企業がグーグルのサービスを利用しています。そのため、クッキー規制(サードパーティー・クッキー規制)でも、グーグルの自己規制が最も大きな課題になるでしょう。

しかしグーグルは、クッキー規制を実施するのであって、インターネット・マーケティング支援ビジネスは続けます。
その1つがFLoC(フェデレーテッド・ラーニング・オブ・コホート)です。
グーグルは2021年1月、FLoCを「Web広告の発展のための、プライバシーに配慮した新たな仕組み」と説明しています。

FLoCはAI(人工知能)を使って、グーグルのサービスを利用している人のインターネット利用動向を分析して、人々を分類していきます。
「人々を分類する」とは例えば、「旅行を検討している人のグループ」や「ゲームをしたがっている人のグループ」や「焚火台を探している人のグループ」といったように分類します。

このようにインターネット利用者をグループに分類できれば、そのグループに適した広告を出すことができます。旅行を検討している人のグループには、その人のパソコンやスマホに、旅行のWeb広告を出せばよいわけです。

クッキーは、インターネットの利用者個々人を特定して、個々人の情報を集めて広告やコンテンツの表示の最適化を図ってきましたが、FLoCならグループしか特定しないので、プライバシーへの侵害は最小限になって個人の特定が難しくなります。「それなら許容範囲と考えることができる」と認識する人が増える可能性があります。
企業のマーケターは、FLoCの利用を検討していくことになるでしょう。

レジェンド的なマーケティングを強化する

クッキーはいわば、最新のマーケティング手法といえます。
そのためクッキーが使えなくなるのであれば、レジェンド的なマーケティング手法を強化すればよいという考え方もあります。

  • テレビ広告、雑誌広告などを増やす
  • リピーターを増やす取り組みをする
  • 顧客のロイヤリティを高めるマーケティング・キャンペーンを実施する
  • クッキーを使わない、単純なインターネット広告を増やす

またインターネット・マーケティングは、単純なインターネット広告以外にも、検索エンジン最適化(SEO)、SNSの活用などがあります。特にSEOを意識したコンテンツマーケティングについては、ユーザーの課題に沿った最適な設計を行うことによって、広告費をかけずに集客をすることが可能ですので、注力する価値はあるでしょう。

クッキーは、数多く存在するインターネット・ツールの1つにすぎません。重要なツールではありますが、それ以外のツールを強化して使えば、その穴を埋めることは可能でしょう。

まとめ~クッキー規制が強まってもネット依存を弱めないほうがよい

「クッキー規制」と聞くと、「ネットを使用したマーケティングが使えなくなる」と感じるかもしれません。確かにその一面はありますが、しかしそれは一面にすぎず、インターネット・サービスは多面的です。
企業のマーケターはクッキー規制が強まっても、インターネット利用を減らさないほうがよいでしょう。
そしてグーグルのFLoCのように、消費者や顧客のプライバシーを侵害せず、消費者や顧客にアプローチする新しい手法が編み出されるはずです。マーケターはそのような情報をキャッチして、自身のマーケティング戦略に取り入れていくことで、より良いマーケティング活動ができるでしょう。