コロナ禍で加速するアメリカ 小売・飲食業界のデジタル化 最新事例4選

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コロナにより消費者行動には、大きな変化が生まれています。丁寧な接客が顧客からのニーズでも高い日本において、コロナ禍では、そのニーズが「非接触」や「密を避ける」ためにデジタルを活用したサービスに変化してきています。

企業にとっても、この変化に対応し変革する力、すなわちDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要とされています。特に、コロナ禍では、店舗を構える小売業や飲食業などは、コロナ前の売上や利益を確保することや、来店の促進や顧客の囲い込みは企業存続においても大きな課題として浮き彫りとなっています。

本記事では、コロナ禍で、海外の小売業や飲食業における新しいデジタル体験の導入事例についてデジタル化が進む欧米での最新事例を紹介していきます。

加速する小売業・飲食業のデジタル導入

本章では、世界的にデジタル導入が加速している背景や理由を説明した上で、コロナ禍で小売業や飲食業など店舗を構える企業が抱える課題について触れていきます。

その上で、作業や店舗運営の効率化だけではないデジタル導入の価値を整理していきます。

デジタル体験が導入される背景・注目の理由

コロナ前は、「店舗運営の効率さ」や「新しい顧客体験」を求め店舗におけるデジタル体験を導入する企業がありました。その結果、消費者は、その目新しさを求め、店舗に足を運ぶこともありました。これまでは斬新なサービスを通して企業知名度向上の目的や、店舗、ユーザー両者にとって効率的な販売や店舗運営を行うため取り組みとして、デジタル体験を取り入れる企業がITの先端を走る企業を中心に行われてきました。

しかし昨今はコロナの影響で、顧客の日常生活は「非接触」や「密を避ける行動」などの行動変化が生じ、その結果、日本でも多くの業界でデジタル化が加速し、新しいサービスが導入されています。

コロナ前は、先進的な取り組みとして、ごく一部の企業で行っていたものが、コロナ禍では、ビジネスの継続に必要不可欠な要素として取り入れられる傾向にあります。この変化に対応する力は、いま日本でも注目を集めているDX(デジタルトランスフォーメーション)にも繋がる部分です。

アフターコロナにおいても、コロナ禍で変化したことは継続的に続くものと考えられており、すでに欧米においては小売業や飲食業を中心に顧客の購買体験を根本から変えるサービスがニューノーマルとして受け入れられつつあります。

コロナ禍での小売業・飲食業の課題

コロナ禍で実店舗を構えることの多い小売業や飲食業においては、時短営業やソーシャルディスタンスの確保等の感染対策を行いながら、これまでの売上や利益を確保することは、とても難しいのが現状です。

また、顧客も実店舗に行くことに対して消極的になっていたり、ショッピングでの滞在時間を抑制するための購買行動が目立っています。

このような状況下でも店舗への集客を促す施策を行いながら、店舗での購入をしてもらうことは店舗運営を存続していく上では、とても重要であり大きな課題と言えます。

デジタル体験が提供できる価値

店舗におけるデジタル体験で提供できる価値は多岐にわたります。

コロナ前であれば、店舗でユーザーにとって目新しいデジタル体験を提供することができれば、それだけで広告効果や、新規顧客の獲得、店舗への集客にも大きな影響を与えたケース例も多くあります。

しかし現在は、コロナ禍の感染対策として、顧客に身軽に安全でストレスなく店舗での購買活動を支援する方法の1つとしてデジタル体験の導入が欧米を中心に進んでいます。顧客のコロナへの不安を払拭する取り組みでありながらも、企業にとってはデジタル化を推進することで、これまで以上に顧客の細かな購買データや行動データを蓄積することができる可能性があります。

例えば、これまではPOSデータのみの購買履歴が、モバイルオーダー等で個人のアカウントと紐付けた購買履歴を取得することにより、より細かな顧客データと購買履歴を蓄積することができます。このデータを活用することで、新規顧客獲得やリピート来店に有効なキャンペーン施策の打ち出しや、より精度の高い売上予測から無駄のない在庫管理など店舗運営においてもデータ活用の場が広がります。

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アメリカで進む小売業・飲食業のデジタル化 最新事例

本章では、アメリカや欧州を中心に繰り広げられている小売業・飲食業における最新の店舗におけるデジタル体験事例を紹介していきます。特にコロナで大きな環境の変化が生じているアメリカを中心に、いま顧客が求めるサービスとして、どんなものが顧客に受け入れられているのかを、テックファームのグループ会社Prism Solutions Inc.メンバーがリサーチし、紹介してくれました。

Prism Solutions Inc.では、アメリカ ラスベガスより最新のテクノロジー動向をブログとして配信しています。ぜひ、こちらもご覧ください!  ▷記事を読む

アメリカの店舗では、DXが大企業のみではなく中小企業でも推進されており、日本ではまだ浸透していないサービスもアメリカや欧米では顧客に受け入れられ、ニューノーマルとして浸透しつつあるようです。

Amazon Dash Cart

すでに米国各地で開店し、その人気が功を奏しイギリスでの開店が決まったアマゾン経営のAmazon Goコンビニ。アマゾンアカウントに結び付いたスマホQRコードを入店時にゲートにかざすだけで店内では買い物カゴも使わずに手ぶらでショッピングが出来ます。お会計もレジを通ることなくそのまま出店ゲートを通るだけで自動決済がされるという「手ぶらショッピング」を可能にしました。

その他にも、今まで通りの決済をする店舗でのコンタクトレス手かざし決済「Amazon One」も展開を開始。この手かざし決済はショッピング以外(例えばコンサート会場への入場やポイントカード、社員証やオフィスアクセスキーのかわり)にも汎用が可能でアマゾンは次々にイノベーションを進めています。

ここ最近ではアマゾン経営のスーパーAmazon Fresh店舗でのスマートカートも人気を集めています。買い物客はカートに付属されているディスプレイ部分にアマゾン口座のQRをかざしサインイン。そのままエコバックなど自分の買い物袋をカートに装着させた状態で商品を入れていくだけ。買い物が終わるとカート専用レーンを通って出店、自動的に決済が終わり、レシートがEメールされてきて終了。様々な機能がありますが、家庭のアマゾンエコーでアレクサに頼んでおいたショッピングリストを確認しながらのお買い物ができるのも便利な機能の1つです。

お店の人やレジの人に会うことなくすべてコンタクトレスでショッピングを終えることができ、レジに並ぶ行為もなくなるため、コロナ禍でも非接触で安全かつ無駄のない買い物を実現できていると言えます。企業にとっては、人件費の削減によりコストを抑えられ、蓄積した購買データを解析することで、より効率的な店舗運営や顧客の購買活動を促す糸口を発見することに繋がります。

カーブサイドピックアップ

米国が車社会であることや、食料品や日用品などを週に一度、買い込みをする傾向があること、またコロナ禍で「非接触」も大きな要因となり最近では普通になった光景がカーブサイドピックアップです。

簡単に言えばモバイルオーダーピックアップですが、これは店舗のピックアップカウンターに行く必要もなく、車で店舗駐車場に駐車するだけで買い物が完了するという便利なサービスです。

米国大手食品スーパーKroger、Vons 日用品スーパーWalmartTargetなどはもちろん、日頃から利用する近所のスーパーやレストランなどでも今や日常となりました。ウェブやモバイルから買い物をし仮決済を済ませると、約2時間以内には買い物完了メッセージがお店から届きます。メッセージを受け取ったらお店に出向き指定の場所に駐車し、アプリから駐車スペース番号を入力して、トランクを開けて待つだけです。

窓越しにQRコードをスキャンして決済、もしくは定員さんがトランクを閉めて「オッケー!」と親指を立ててサインしてくれたら店員さんのタブレットで決済が完了されます。車内からサイドミラー越しに手を振るだけで店員さんとのやり取りが完了し、また客として訪れる人との接触も完全に避けることが可能となりました。

最近ではカーブサイドピックアップが当たり前になり、カーブサイド専用駐車スペースが増えたため普通の駐車スペースが店舗入り口から遠くなっています

Robot Delivery

フードデリバリーサービスもコロナの影響で「食べ物はドア前に置いていってね!」というオプションボタンができたり、「置き配」が当たり前になってきましたが、一部都市部や大学キャンパスなどの敷地内ではロボットデリバリーが人気です!

ロボットがホテルで客室へ備品デリバリーすることはここ数年メジャーになっていましたが、これはロボットが一人で公道を通ってユーザーの元まで食べ物を配達します。一部都市ではこのロボットは法律上も「歩行者」として指定されているほど。

大手フードデリバリー会社Grub hub, Postmates, Door Dashなどはもちろんのこと大学やコーポレートキャンパスなどでもロボットデリバリーを採用、敷地内の配達に活用されています。学内でもコロナの影響で、ソーシャルディスタンスを確保することや、非接触に対応した感染対策としても有効なサービスと言えます。

PopID

Amazonが手かざし決済ならPopIDは「チラ見決済」!

2020年夏頃からロサンゼルスエリアではファーストフード店舗に顔認証決済が導入され始めました。使用方法は、あらかじめ顔写真を登録した上で、PopID口座にお金をいれておくだけ。店舗では「ニコっ」と微笑まずにキオスク、もしくはタブレットをチラ見するだけで決済が完了します。

おもしろいのはチップの付け方。米国では通常決済時にPOS画面にある「10%、 15%、 20%、 Noチップ 」のチップ%のボタンを押すのが一般的ですが、PopIDは完全にコンタクトレスのため顔決済をする際にカメラにジェスチャーを送ることでチップの%を決定できます。例えば10%は親指でグッドサイン、15%はピースサイン、Noチップの場合はげんこつサインなど。ちなみにロシアでも大手スーパーがクレジットカード会社のVISAと提携し顔決済を開始したとのこと。

おサイフケータイ、アップルウォッチ決済から手かざし、顔認証と決済手段もますますコンタクトレスになってきています。自分の身体1つで、決済まで完了してしまう身軽さや、スマートさは顧客のストレスをより軽減し、企業・運営側においても人件費の削減や、効率の良い運営が可能となりそうです。

まとめ

コロナ前からDXの重要性が叫ばれていましたが、コロナの影響によりビジネスも変化を必要とされる時代になりました。

今回、紹介したアメリカでのデジタル体験の導入事例は、まさにコロナ禍で顧客に必要とされるものも多くありました。また、アメリカではすでに大手企業だけではなく、中小企業も含めた取り組みとなり、社会全体がすでに変化しているように感じます。

日本においても、コロナ禍やアフターコロナを見据えた新たなデジタル体験を活用したサービスを考え、提供していくことで企業価値を高められるかもしれません。