DX推進は何から始めれば成功する?経産省DX推進ガイドラインを簡単解説

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DX推進

もはやバズワードとなったDX(デジタルトランスフォーメーション)。

以前からこの流れは起きていましたが、新型コロナ感染拡大によってその勢いは一気に加速し、様々な情報が世の中に出ています。

とは言え、DXを検討・推進する立場の多くの現場担当者は、具体的に何から始めれば良いのかが分からなかったり、多くの課題に直面している状況です。

本記事では、DXとはそもそもどのようなことなのか、そして推進するためのポイントを、経済産業省が発信している「DX推進ガイドライン」の内容を少し噛み砕いてお伝えしていきます。

 

DX解説書

DXとはそもそも何か

聞かない日がないのでは、と感じるぐらいに世の中に出回っている「DX」というワード。みなさま果たしてその定義をご存知でしょうか。そして、これまで使われてきた「IT化・デジタル化」との違いはどのような点にあるのでしょうか。まずはDXの定義を改めてみていきましょう。

経済産業省が発表している「DX推進ガイドライン」内に明記されている定義によると、

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジ タル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのも のや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

という事になっています。言葉だけが先行しがちなバズワードですが、ここで大切になってくるのは「競争上の優位性を確立すること」という一文。ただ単に何かをデジタル化したからといって、DXを達成・推進したとはならないのです。IT化というワードとの違いはそこにあります。

関連記事 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?成功する為の5ステップと事例紹介

いまDXが求められる背景〜2025年の崖〜

なぜここまで企業におけるDX推進は求められているのでしょうか?背景として2つの大きな理由があります。

一つの大きな理由は、新型コロナウイルスの感染拡大による新しい働き方の必要性です。テレワークの導入によって、企業内でのコミュニケーションに課題ができただけでなく、営業面からすれば、顧客とのコミュニケーションにも大きな損失が生まれてしまいました。

そこで登場したのが「Zoom」をはじめとするテレビ会議システムです。社内コミュニケーションのみならず、顧客との商談でも使用され、直接面談が不可能となった現代では必須のツールとなりました。さらに紙で行っていた名刺交換すら、デジタルデータのやり取りにて行うことも可能となったのです。

ほとんどの企業はこのレベルのDXであれば対応できている可能性が高いですが、この変化に対応しきれない企業は厳しい戦いを強いられ、成長戦略は描けません。

そしてもう一つ、DX推進を加速させたのが、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」です。詳しくは本レポートをご参照いただければと思いますが、非常に強烈なメッセージがそこには記されています。

「既存のビジネスモデルやシステムを変革できずに2025年を迎えた場合、それ以降12兆円/年(現在の3倍)の経済損失が発生する可能性がある」

個々の企業の成長が鈍化することにより結果的には国力が低下し、他の国から大きな差をつけられてしまうことになってしまうのです。

また、2021年8月に公表されたDXレポート2.1では、更に進んでデジタル社会時代の企業の在り方についても情報があります。かなりビジョン的な話に寄った内容ですが、DX推進の大切な部分ですのでぜひご覧ください。

DX推進のためにまず用意するべき事

では実際にDXを推進するためには、何から始めたら良いのでしょうか?先にご紹介した「DX推進ガイドライン」の内容を簡単にご説明していきます。大きくまとめると、次の3つの要素を整えることからスタートするべきです。

経営戦略・ビジョンの提示

戦略・ビジョンなくして戦術はありえません。多くの失敗事例はこの戦略がないことによって起こります。思いつきでのPoC(Proof of Conceptの略で、「概念実証」という意味)は無駄を生み、やがて疲弊へ繋がります。また経営層からの丸投げも戦略なきDXの典型事例で、現場は混乱します。

まずは経営層とのコミュニケーションをしっかり取り、DX推進の目的を明確に定め、どのような価値を生み出すのかを設定した上で、経営ビジョンを策定することが必須です。さらにビジョンを達成する戦略には、具体的な計画と指標をセットにすることでより明確なイメージを提示することができます。

経営トップのコミットメント

戦略・ビジョンを策定したら、次はそれを経営者がコミットすることが重要です。多くの場合、情報システム部や経営企画部の担当にDX推進は託され、孤軍奮闘するケースに陥りますが、担当者を待ち受けるのは各部門からの抵抗です。

人は現状を維持したいという気持ちが強く、変革は受け入れ難いもの。そういった時に経営者のコミットがしっかりとしていることで、トップダウンによるDX推進力という大きな勢いをつけることができるのです。経営者にはDX推進についてしっかりとコミットしてもらい、全社的な発信をしてもらう、もしくはDX推進に課題が発生した際には後押しをしてもらうことがDX成功には不可欠です。

DX推進のための体制整備

DX推進体制には以下4つの要素が必要になります。

①マインドセット
②推進・サポート体制
③人材
④予算(投資)

①マインドセット

DX推進において大切なことの一つにスピーディーな仮説・実行・検証の繰り返しがあります。現代的なシステム開発としても有名ですが、アジャイル開発などはその典型的な例です。失敗することを恐れるあまりプロジェクトが前に進まなくては意味がありません。仮説・実行・検証をスピーディーに回し、徐々にスパイラルアップさせてDX成功に導くことが重要です。そのためにも、経営者やマネージャー層はそうしたマインドセットを醸成していくことが求められます。

②DX推進・サポート体制

基本的にDXとは既存概念の変革ですので、必ず発生する課題が抵抗勢力や部門間の利害調整です。たいていそういった話は当事者同士が話し合っていても平行線を辿ることが多く、第三者が公平性を持ってバランスを取ることが必要となります。そのためにも、DX推進やサポートを担う人材、もしくは部門を設置することで課題のスピード解決を図るべきです。

③人材

②で述べた体制を整えるためには、データやデジタル技術の活用が可能な人材が必要です。まずはそうした人材の確保が最低限必要となります。社内を見渡し、適任者がいない場合は社外との連携も模索するのも選択肢です。またその他にも次世代のDXリーダー候補を育成していく必要もあります。時代は変化し続け、今DXに成功したとしても永遠とそれが通用するわけではありません。その時代に合わせた変化に対応し続けることが真のDX成功企業ではないでしょうか?

関連記事 不足する「DX人材」に必要なスキルや確保の仕方

④予算

DXにかかる費用はただのコストではありません。。当然、費用対効果を見定めて投資をするべきですが、もっと幅広い視野を持つ必要があります。自社がDX化に手間取っている間に、競合他社は着々とDXを推進していきます。そしてその結果、マーケットにおける自社の競争力が圧倒的に不利になってしまう可能性があるのです。

DXに関する予算に関しては、未来への積極投資という側面もあるということを忘れずに経営層とのコミュニケーションを実施するべきでしょう。

DX推進における課題

実は裏を返すと、DX推進における課題は、先に紹介した「DX推進のために用意するべきこと」になってきます。
経営戦略・ビジョン、経営トップのコミットメント、人材や予算確保が上手くいかず、DX推進に課題を感じている担当者様は多いはずです。
このパートではそれ以外の課題について解説いたします。

どこから始めればいいのか分からない

2021年、ABBYジャパンの調査結果によれば、DX推進の課題として「どこから始めればいいか分からない」と回答したユーザーが28%にも及びました。また、プロジェクトの進め方が分からなかったり、使うべき技術について分からないという声も多くあり、スタートの時点で躓いている企業が多くいることが分かります。
この部分においては、必要に応じて外部パートナーを積極活用することにより、プロジェクトを推進することが可能になります。

既存システムのブラックボックス化

企業のIT環境が整備されてきたのと同時に、様々なシステムが並行して稼働しており、統合されていないという問題も発生しています。そうしたシステムを一貫した社内システムに統合していくことの困難さも課題としてあるようです。

また、基幹システムのような古くからある大規模なシステムになると、度重なる改修やアップデートによって、システムが複雑化していることや、担当したエンジニアやベンダーがいなくなってしまったことにより、システムがブラックボックス化してしまうという課題もやっかいです。こうした場合、まずは既存システムのアセスメント調査からスタートする必要があり、DX推進を阻む課題となっています。

ベンダー依存から脱却できない

DX人材の不足とも関係してきますが、長期間に渡ってシステムに関する業務をベンダー任せにしてしまった結果、DXを推進するデジタル人材が社内にいないという状況を生んでしまいます。結果として社内を深く理解していないベンダーからは積極的なデジタル改革は提案されず、既存システムからの脱却が進まないという課題を生んでしまいます。
この課題に関しては担当レベルだけでなく、トップからの強いコミットをベンダーに伝え、DX推進のために既存システム改革を推し進めていく必要があります。

まとめ〜DX推進にはまず戦略が大切〜

「DXをするぞ!!」となるとまず思い浮かぶツール選定になりがちです。あくまでもツールは戦術。大切なのはその上流である戦略やビジョンです。現在、クラウド系のツールが多く存在し、導入ハードルは非常に低くなりました。しかし、導入したものの運用に課題が多かったり、思った通りの効果が発揮されないケースが散見されます。その多くは今回の記事でお話をした要素が足りていない場合に起こっているようです。

DX推進は何から始めればよいのか?その答えは戦略・ビジョンの設定など、上流フェーズからスタートすることがDX成功の近道です。