オンラインとオフラインの融合「Online Merges with Offline(OMO)」とは

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日本では昨今、「中国ではモバイルペイメントやシェアエコノミーが普及している」という報道が目立ちますが、その背後には中国のデジタル環境の急激な進化により、社会とそこに住む人々の内面にまで変化が及びつつあります。

「スマホ1つあれば生きていける」とさえ言われる中国では、Online Merges with Offline(以下OMO)と言われる新たなマーケティング概念が隆盛を極めています。

今回はOMOの概念をご紹介し、中国の事例をピックアップしながら今後日本において予測できるマーケティング戦略の変化について述べていきます。

 

OMOとは

オンラインでの顧客行動をオフラインのリアル店舗で活かすO2O(Online To Offline)についてはご存知の方も多いでしょう。

たとえば、ユーザーに飲食店や販売店のアプリをダウンロードしてもらい、定期的にオンライン上でクーポンを発行し、実際の来店を促すなどの施策はO2Oの一環です。

オンラインとオフラインの連携が進む中国では、すでに両者の境目がなくなっているとも言える状況から、「O2O」の考え方がその発展形である「OMO」という概念にシフトしつつあります。

OMO(Online Merges with Offline)を日本語に言い換えると「オンラインとオフラインの融合」です。では、O2Oと何が違うのでしょうか?

O2OとOMOの違い

O2Oは、オンラインとオフラインを分けて考え、オンラインからオフラインの店舗等へとユーザーアクションを繋げることを指します。

オンラインからオフラインへと繋げるという、かつては存在しなかったユーザーを動かす新たなマーケティング手法として、2013年頃からO2Oが流行ったことを記憶されている方も多いことでしょう。

それに比べ、OMOはオンライン/オフラインの垣根にこだわらず、あくまでUX(User Experience、ユーザー体験)を主軸として考えます。あらゆるユーザー行動をデータ化して集約し、ユーザー体験を高めるマーケティングを行うことが肝です。

言い換えれば、ユーザー体験を良くするために適切なチャネルを適切なタイミングで使う、至ってシンプルな考え方です。

データとユーザー体験の関連

中国ではモバイルペイメントの普及により、都市部では現金を持ち歩かなくなったという状況については、誰もが知るところでしょう。その背景には、個人の食事や移動、レジャーといったオフラインの行動が、活用可能なオンラインデータになっていて、個別IDに紐付かれているという事実を知る必要があります。

たとえば都市部のスーパーでは、商品に付いているQRにスマホをかざせば、即座に商品の詳細や購入者によるレビューをその場で見ることができます。この「商品実物を見て、商品詳細を調べ、レビューをチェックした」というデータが個別IDに紐づくのです。

他にも、アプリを使ってセールの情報を見たり、実店舗でオンライン決済をしたり、購入したものを配送してもらったり等、あらゆるユーザーの行動がデータ化されていきます。

データを属性群で捉えるのではなく個人に紐づけることにより、ユーザーの嗜好を理解した上でユーザーに合ったコミュニケーションを取ることができるようになります。

このように、ユーザーがそのとき選びたい方法を選ぶという設計思想のもと、オンラインとオフラインの融合が図られたマーケティングが行われ、良いユーザー体験を実現していきます。

中国のインターネット企業Tencent(騰訊:テンセント)の事例

中国には3大インターネット企業BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)がインターネット業界でしのぎを削っています。特にTencent(騰訊:テンセント)とAlibaba(阿里巴巴集團:アリババ)は、それぞれWeChatPayとAlipayで、自社決済サービスを急速に普及させたことで知られています。

WeChatミニプログラム(小程序:シャオチェンシュ)

TencentはチャットアプリWeChat(微信)内に、ダウンロードもインストールも必要としない「ミニプログラム(小程序:シャオチェンシュ)」を2017年に開始しました。

たとえば日本では電車の発着時刻を知りたいとき、専用のアプリをダウンロードして、必要なときにアプリを起動します。

ミニプログラムは駅でQRコードをスキャンするだけで、電車の発着時刻を知ることができるので、WeChatさえあれば個別にアプリをダウンロードする必要がありません。

Tencentは、このミニプログラムをWeChatのOMO施策の基幹として、オンラインとオフラインの融合を図っていくとしています。

「周黒鴨」のスマート店舗化

Tencentは飲食業界のスマート化にも力を入れ、2018年5月には周黒鴨(鴨肉加工食品の小売店)とWeChatPayが提携して、周黒鴨×WeChatPayスマート店舗が開業しました。

ユーザーは初めてお店に入る時、TencentのチャットアプリWeChat上でアカウント作成と顔認識をすれば、次回移行は直接顔認識で入店可能となります。

会計もセルフレジに商品を置くだけで、設置されたカメラがユーザーの顔を認証、瞬時に支払いが済んでしまいます。現在中国の都市部で普及している無人コンビニでの「スマホでQRコードをスキャンする」行為すらも必要なくなります。

このように、ユーザーはこの店舗で顔認識とAIなどの新しい技術を搭載した新世代の販売方式を体験することができるのです。

財布から現金を取り出す手間もなければ、スマホをかざす必要もない。いかに中国で店舗体験の進化スピードが急速に進んでいるか、端的に証明する事例と言えるでしょう。

日本でもユーザー体験(UX)がマーケティングの主軸に

中国のTencentやAlibabaなどOMO中心に考えている先進企業が最も大事にしているのは、商品や店舗設計ではなくUXです。

先ほど事例として挙げた周黒鴨×WeChatPayスマート店舗のように、レジの順番待ちや支払いの手間を省き、ユーザーがより快適に消費行動を体験できる、「ユーザーの体験をより良くすることが最重要」と捉えています。

日本の製品は高品質で素晴らしいと有名ですが、良い商品作りのみを考える時代は終盤を迎えています。商品そのものだけではなく、商品をもってどのような体験ができるか、あるいはどのように従来の体験を改善できるのかがサービスと化してきているのです。

最近では国内でも「顧客体験」「UX」といったキーワードに触れる機会が増えましたが、今後もこの動きは続くばかりか、マーケティング戦略の軸となっていくでしょう。

まとめ

「中国だからできたこと。日本は違う」で終わってしまっては、日本で存在感を増している中国資本のサービスに飲み込まれてしまいます。

日本でもUXを主軸に、消費者を一人の個人として着目して行動の心理や文脈を捉え、人とモノとをつなげていく商品・サービスを生み出していく必要があるでしょう。

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