【図解付き】DXレポート2.1をわかりやすく解説!デジタル社会における企業の在り方

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DXレポート

経済産業省は国内企業がグローバル競争で生き残っていくためには、DX推進が必要不可欠であると発表しています。

内容をまとめたDXレポートは示唆に富んだ内容ですが、見る人によっては「内容が固く、正直分かりづらい…。」と感じることもあるでしょう。

そこで本記事では、2021年8月に公表されたDXレポート2.1について、なるべく分かりやすく解説します。ぜひDXに関する情報収集にお役立てください。

 

DX解説書

DXレポート2.1とは?

DXレポート2.1を解説する前に、DXレポート2をおさらいしましょう。

DXレポート2とは、2020年12月に経済産業省から発表された、日本におけるDXについて言及した第2弾のレポートのことです。2018年に発表された第1弾のレポート「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」から2年が経過し、新型コロナウイルス感染症の流行などで国内企業を取り巻く環境は以前より不安定になっていました。国内のDXを加速度的に推進していくために、経済産業省が課題や対策についての中間報告をまとめたものが、DXレポート2です。

DXレポート2の中では「デジタル産業」と表現されていた内容が具体的ではなかったことから、経済産業省は2021年8月31日にDXレポート2.1を公表し、デジタル産業について補足をしています。

ユーザー企業とベンダー企業の現状

国内企業のDX推進を見ると、DXを推進したいユーザー企業と、ITを駆使してユーザー企業の下請けとなるベンダー企業に分かれていることが分かります。DXレポート2.1では、この業界構造こそが、デジタル競争の敗者になる要因であると警鐘を鳴らしており、それに対応する必要があります。

既存産業における業界構造

既存産業における業界構造
(出典:経済産業省DXレポート2.1 P5より)

DXレポート2.1では上図上部のとおり、ユーザー企業とベンダー企業の区別はなく、各企業がデジタルケイパビリティ(価値を創出するための事業能力)を独自で磨いていくことで、新たな価値の創出ができるとしています。

しかし、既存の産業構造は上図下部が示す通りで、ユーザー企業とベンダー企業がお互い依存関係となっているのが現状です。この状態では、両者ともデジタル競争の敗者となる可能性が高く、日本のグローバルでの競争力低下が懸念されています。

ユーザー企業、ベンダー企業が抱える3つのジレンマ

ユーザー企業とベンダー企業は、デジタル産業の企業へと変革したいという想いはあるものの、下記3つのジレンマにより、行動に移せていないのが実情です。

  1. 危機感のジレンマ:目先の業績が良く、デジタル競争に対する危機感がない
  2. 人材育成のジレンマ:DXやIT技術は陳腐化が早く、学習スピードが追いつかない
  3. ビジネスのジレンマ:ベンダー企業の存在価値が薄れてしまう

3つ目のビジネスのジレンマは、ベンダー企業のみが抱えるジレンマです。

現在、ユーザー企業のDX推進を受託しているベンダー企業は、ユーザー企業が自社でDX化を進めることによって、システム開発など仕事が無くなっていきます。国内企業のデジタル競争力を高めると、目先の仕事が無くなるという、まさにジレンマだと言えるでしょう。

DX企業への変革を阻むジレンマを打破するためには、企業経営者が「未来の日本を想って、DX推進を成し遂げるんだ!」というビジョンとコミットメントが必要となります。経営のトップメンバーが率先して会社を引っ張っていくことが大切です。

デジタル社会・産業の目指すべき姿とは

DXレポート2.1では、デジタル社会の実現に向けて、企業が提供するデジタル産業が重要だとしています。特にこのパートはDXレポート2で詳細が描かれなかった部分でもありますので、詳しく確認していきましょう。

デジタル社会について

DXレポート2.1では、日本が目指すべきデジタル社会の姿を以下のように定義しています。

  • 社会課題の解決や新たな価値・顧客体験の提供が迅速になされる
  • グローバルで活躍する競争力の高い企業や世界の持続的発展に貢献する企業が生まれる
  • 資本の大小や中央・地方の区別なく価値創出に参画できる

このようなデジタル社会の実現に向けて、重要となるのが企業が提供するデジタル産業です。

デジタル産業と既存産業の違い

DXレポート2.1ではデジタルケイパビリティという言葉が何度も登場します。「デジタル化を組織として推進する能力」と言い換えると分かりやすいかもしれません。既存産業のユーザー企業やベンダー企業が、デジタル産業に到達するためには、デジタルケイパビリティを活用し、他社や顧客とつながりを持つことが必要です。

既存産業では、デジタルケイパビリティを価値創出の一部でしか活用しておらず、自社内という閉じた環境でしか共有していないという問題点があります。デジタル産業を目指す国内企業は、自社で活用するデジタルケイパビリティを、広く他社や顧客に開示し、つながりを持つことが求められているのです。

産業構造のネットワーク化と企業種別

産業構造のネットワーク化と企業種別
(出典:経済産業省DXレポート2.1 P12より)

上図の通り、既存産業の業界構造は大企業を頂点としたピラミッド構造とされています。
日本が目指すべきデジタル産業は、既存の業界構造にとらわれず、多様な価値を結びつけるためにネットワーク型の構造となることが理想的です。

DXレポート2.1では、デジタル産業を構成する企業種別を以下の4つに類型化しています。

  1. 企業の変革を共に推進するパートナー:新たなビジネス・モデルを顧客と共に形成
  2. DXに必要な技術を提供するパートナー:DXの専門家
  3. 共通プラットフォームの提供主体:業界毎に協調できるプラットフォームを作成
  4. 新ビジネス・サービスの提供主体:DXによる新しいサービスを提供

デジタル産業においては、それぞれの企業が自社で保有するデジタルケイパビリティを広く開示することで、企業同士でつながりを持つことが重要です。これからは協業や共創といった言葉がテーマになるかもしれません。

今後実施される予定の施策

日本でデジタル産業を目指すために、DXレポート2.1では今後の施策について、方向性が示されています。

デジタル産業指標(仮)の策定

デジタル産業指標(仮)の策定

(出典:経済産業省DXレポート2.1 P16より)

デジタル産業を形成する企業への変革を促すため、デジタル産業指標(仮)の策定が検討されています。デジタル産業指標(仮)は、DXの推進度を表す「DX推進指標」の2階部分として位置づけられることが特徴です。

前述したデジタル産業における企業の4類型それぞれについて指標を策定し、自社が「どれだけデジタル産業に移行しているか」を自己評価できるようにすることが狙いとされています。

DX成功パターンの策定

現在、DX事例として公表されているものの多くは、デジタル産業への変革のどの段階にあたるかが明確になっていません。そのため、企業が事例を再現しようとした時に、実現できないことが多々ある状況です。

今後は、DX全体の地図や、変革に向けてのDX成功パターンが策定されるでしょう。DX成功パターンは企業が再現しやすい形でまとめられる予定です。

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まとめ〜ユーザーとベンダーの垣根を超えて共創する必要がある〜

日本全体でデジタル社会を目指すためには、これまでの既存産業の構造を大きく変革させる必要があります。
具体的にはユーザー企業とベンダー企業といった、注文する側と受託する側という概念を超えて、ともに協力して価値を高めるために競争していくという考え方が重要です。目先の売上や利益ももちろん大切ですが、将来国内の企業がグローバル競争で生き残るために、今から各企業が連携してデジタル産業を作り上げていく必要があるでしょう。