「DX人材不足」打開に向けて、必要スキルや確保・育成の仕方を解説

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DXを推進したいが適切な人材がいないとお困りの方も多いのではないでしょうか?

情報通信白書(令和3年版)におけるアンケートでは、約53%の企業がDXを推進する上での課題として「人材不足」を挙げています。2018年時点で約22万人が不足しているとされており、2030年には約45万人に達するとも言われています。

しかし残念ながら、まだまだDXに適切な人材である「DX人材」の特徴が理解されていないのが現状です。

本記事ではDX人材の特徴を解説しながら社内で確保できない場合の対処方法もご紹介いたします。

DXとは?なぜいまDX人材が求められ背景

DX(デジタルトランスフォーメーション)には様々な定義や考え方がありますが、簡単に言うと、「顧客や社会のニーズを基に、ITやデジタル技術を駆使して、ビジネスモデルや企業風土を変革していくこと」と言えます。

企業が既存のビジネスモデルやシステムを変革できずに2025年を迎えた場合、現在の3倍の経済損失にあたる12兆円/年もの負債が発生するという、「2025年の崖」もDXの課題とされています。

スマホが普及して、誰でも気軽にインターネットに触れることができるようになった今日、SNSやインターネットでの情報を通じて、あらゆる情報が世の中にあふれていると言えるでしょう。この情報の多様化により、消費者や顧客のニーズが複雑化しています。それゆえ、これまで以上にDXの推進が叫ばれるようになっているのです。

DX推進における課題はDX人材不足

DXの重要性を理解する企業が増える一方で、深刻化しているのは、DXを推進する人材不足です。
それでは、DXを推進させるためには、一体どのような人材が必要なのでしょうか?

DX人材とは?

DX人材とは以下のような人材を指します。

  • デジタル技術とデータ活用に強い人材
  • DX推進を社内でリードしてくれる人材
  • DX推進の実行を担っていく人材

デジタルやデータに強い人材、DX推進を実際に進める人材の両方がいて、初めて企業におけるDXが進むと言えるでしょう。
上記に加えて「既存業務の内容にも精通している」というポイントがあると、さらに良い人材です。

DXを推進する「DX人材不足」の状況

前述したとおり、「2025年の崖問題」では既存のビジネスモデルやシステムを変革できないことが問題視されています。さらにDX人材の枯渇も大きな課題です。
2021年現在の日本では少子高齢化社会となっており、国内の労働人口は減少の一途をたどっています。その中で、激化するグローバル競争に対応すべく、各企業がDXを推進しようと考えており、DX人材の奪い合いが起こっているのです。
みずほ情報総研株式会社が発行する「IT人材需給に関する調査」では、このままDX人材の枯渇が続いた場合、2030年には最大79万人ものDX人材が不足する可能性があると報告されています。

参考:みずほ情報総研株式会社2019年3月発行「IT人材需給に関する調査」

これは最悪のシナリオを想定したものです。このシナリオを回避するためにも、今からでもDX人材を増やしていく必要があります。

DX人材に必要なスキルと適した職種

DX人材になるためには、スキルの習得が必要です。どのようなスキルを身に付ければ良いのか、スキルを身に付けた上で、どのような職種がDX人材に適しているのか、確認していきましょう。

DX人材に必要なスキル

DX人材には以下5つのスキルが求められます。

  1. IT関連の基礎知識
  2. AIなど先進技術・テクノロジーの知見と探求心
  3. データ蓄積、分析能力
  4. UI/UX思考
  5. プロジェクトマネジメント思考

DX人材にはデジタル技術やデータなどのIT技術を駆使するスキルと、実際にDXを推進・実現していくスキルの両輪が必要です。

前者のスキルには、ITやデジタル技術の基礎知識だけではなく、AIなどの先進技術などの知識を吸収し、常に新しい技術はないかという姿勢が大切となります。さらに、データドリブンな意思決定をするために、データサイエンス領域の能力も必要です。
後者のスキルには、UI(User Interface)やUX(User eXperience)といったユーザー目線で物事を考える力が求められます。さらみ実際にDXを推進するために、納期や予算、人材の配置などを管理するプロジェクトマネジメントの資質も必要となるでしょう。

DXに限らず昨今、エンジニアスキルを持っている人材の獲得競争は激しく、そういった素地をもっている人材を探すのには苦労するケースが多く見受けられます。もちろんそうした技術職出身でなくてもDX人材になることは可能ですので、そういった基本知識がある人材を幅広く見ていくことも大切かもしれません。

DX人材に適した職種

必要なスキルを身に付けたDX人材は、スキルに合わせて、以下の職種に配置していきます。役割を明確にすることで、企業におけるDX化が円滑なものとなるでしょう。

  • ビジネスプロデューサー:DXを主導するリーダー
  • ビジネスデザイナー:DXの立案・推進を担うビジネスプロデューサーの補佐
  • ITアーキテクチャー:DXに関するシステムアーキテクトを担当
  • データサイエンティスト:社内外のデータの収集、統合、分析を担当
  • UI/UXデザイナー:DXのシステムをユーザー目線でデザインする
  • エンジニア・ブログラマー:デジタルシステムの実装やインフラを構築する

DX推進における重要なポイントは、全ての役割を1人の人材に任せないということです。それぞれの役割を明確にして、チームでDXを進めていきましょう。ビジネスプロデューサーのように、自社の経営環境や戦略を知る必要がある経営者のような役割から、エンジニアのようにシステム開発スキルまでが求められます。いくつかの役割を持った複数人で推進していくことが重要です。

DX人材を確保する3つの方法

当然ですが、企業がDXを推進するためには、DX人材を確保する必要があります。社内に適切な人材がいない場合のDX人材確保の方法を3つ確認していきましょう。

外部パートナーにDX推進を依頼する

1つ目は外部パートナーにアウトソーシングする方法です。

コンサルタントにDX推進の企画を立案してもらう、社内のデータを開示して現状分析をしてもらうなど、社内で対応が難しいことは外部パートナーに依頼することができます。外部パートナーに依頼する場合は、DXに精通している業者かどうか、コストや納期に妥当性があるかなど総合的に判断することが大切です。

大きく分けるといわゆるコンサルティングファームと、SIベンダーが具体的にはその立場になるでしょう。経済産業省から公表されたDXレポート2.1では、既存企業とDXベンダーの理想についても紹介されていました。

関連記事 【図解付き】DXレポート2.1をわかりやすく解説!デジタル社会における企業の在り方

社外からDX人材を獲得する

2つ目は社外にいるDX人材を採用する方法です。

前述したとおり、DX人材の枯渇が大きな問題となっています。裏を返せば、DX人材は引く手あまたの状態であり、より良い労働条件を求めて流動的になっていると言えるでしょう。最近ではDX人材に特化した転職サービスも出現しています。ヘッドハンティングなど直接のスカウトが難しい場合は、このようなサービスを利用することも検討しましょう。

社内でDX人材を育成する

3つ目は社内の人材を、DX人材として教育していく方法です。

前述した2つの方法と比べると、即効性には劣りますが、DX人材を継続的に確保するためにも、社内でのDX人材育成は必要不可欠と言えます。DX人材を社内育成するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • DX人材に必要なスキルを学べる環境を整える
  • OJTや社外研修などリアルな経験をさせる
  • 全社でDX人材育成の取り組みを可視化する

運輸業最大手のヤマトグループでは、DX人材を社内育成するために「Yamato Digital Academy」を2021年4月より本格化させたことが話題となりました。全社員向けカリキュラムの他、デジタル機能本部に特化したDX育成カリキュラムや、経営層向けカリキュラムを用意し、社内全体でDX化に取り組んでいます。

まとめ

複雑化するユーザーや消費者のニーズに応えるため、また激化するグローバル競争で生き残っていくためにもDX推進は必要不可欠です。しかし、その一方でDX人材が不足しており、思うようにDXが進まないという問題があります。

労働人口が減少する日本においてDX人材を確保するということは簡単なことではありません。しかし、だからこそ社内でDX人材を育成していこうとするアクションが必要となってくるでしょう。

まずは社内全体にDX推進の土壌を作り、社員全員の認識を共通のものとすることが大切です。競争に勝ち抜くためにも、DX推進を力強く進めていきましょう。