近年、XR技術はゲーム分野をはじめとし、企業ビジネスにおいても取り入れられることが増えています。それに伴い、開発環境であるゲームエンジンも大きく変化してきています。
その中でも注目されているゲームエンジンが、「フォートナイト」や「ドラゴンクエスト12」などの開発に使用されているUnreal Engine(アンリアルエンジン)です。
しかし、ゲームの開発に携わっていない人にとってはゲームエンジンという言葉すら馴染みのないものかもしれません。
そこで、本記事ではUnreal Engineとは何か、その特徴や強み、活用が広がる理由について、非エンジニアの方でも理解しやすいように解説しています。また、Unreal Engineを利用したいくつかの事例についても具体的に紹介しています。これからUnreal Engineをビジネスに活用しようと検討されている方は、ぜひ本記事をご一読ください。
<目次>
Unreal Engine(アンリアルエンジン)とは?
・ゲームエンジンとは?
・Unreal EngineとUnityの違い
Unreal Engineが使われているサービスを紹介
・オンラインバトルロワイヤルゲーム「 フォートナイト」
・建築CGで物件のイメージ確認
・バーチャルK-POPバンド「MAVE:」
Unreal Engine(アンリアルエンジン)とは?
Unreal Engine(アンリアルエンジン)はEpic Games社が提供しているゲームエンジンです。1998年にリリースされたFPS(First Person Shooter、一人称シューティングゲームの略称)「Unreal」に実装されたのが最初で、約25年の歴史があります。
Unreal Engineの最大の魅力は、様々なツールがすべて無料で開放されている点でしょう。しかも、プログラミングを得意とする人以外でもゲームや3Dアニメーションの制作が可能です。
ゲームエンジンの世界シェアは「Unity」が約46%を締め、次いで「Unreal Engine」が約17%を締めています。3位以下は企業独自に開発されたものが多いため、実質的には「Unity」と「Unreal Engine」の2つのゲームエンジンでほとんどのシェアを締めていると言ってもよいでしょう。ただし、最近ではXR分野においてUnityより有力との声もあります。
ところで、ゲームエンジンでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか。
ゲームエンジンとは?
ゲームエンジンとはプログラミング経験が浅くても、感覚的な操作でゲーム開発ができるソフトウェアのことです。具体的には下記のような機能があらかじめ組み込まれています。
- 主要な振る舞い
- 3D描画処理
- 物理演算
- 衝突判定
- サウンド入出力
したがって、ゲームエンジンを利用することで、ゲームの振る舞いなどの基礎的な部分を一から開発する必要がありません。また、既に完成している部品などを再利用することで、開発者だけでなくユーザー側も理解しやすいゲーム開発が可能です。
つまり、ゲームエンジンはゲームの開発工程の効率化や品質向上が図れる画期的なソフトウェアといえます。Unreal Engineは、近年のゲーム開発には無くてはならない存在です。
Unreal EngineとUnityの違い
Unreal EngineとUnityは、どちらも世界的に有名な3Dゲーム開発のゲームエンジンです。しかし、それぞれに特徴があるため、目的によって選択するべきでしょう。Unreal EngineとUnityにはどのような違いがあるのでしょうか。
Unityは初心者でも扱いやすい点が最大の特長です。モバイルアプリなどの簡単なアプリケーションを開発するのには最適なゲームエンジンになります。軽量化され、カスタマイズ性に優れている点も大きなメリットです。
一方、Unreal Engineは高度なグラフィックス表現に優れています。また、大規模なゲームの開発だけでなく、映画やアニメーションの3Dグラフィックスの作成にも最適です。
Unityがモバイルアプリなどの開発に適しているのに対し、Unreal EngineはPCやプレステ5などのゲームデバイスでの開発に適しています。
それでは、具体的にUnreal Engineを利用すればどのようなことが実現できるのでしょうか。
Unreal Engineで何ができる?
Unreal Engineでは主に下記のようなことができます。
- 3Dキャラクターの制作
- 3Dワールドの構築
- ゲームの設計・構築
- 3Dアニメーションの編集
- 製作したコンテンツを様々なデバイスで楽しむ
それぞれについて、もう少し詳しく解説していきましょう。
3Dキャラクターの制作
Unreal Engineではゲームやアニメで利用可能な3Dキャラクターの製作ができます。近年、グラフィックスは劇的に進化し、実写かと思えるようなクオリティになってきました。
Unreal Engineでは、提供されているツール「メタヒューマン」によってリアルな3Dキャラクターの制作ができます。メタヒューマンでは、3Dキャラクター制作に必要となる顔や体などの様々なパーツを選ぶだけ。肌の色や髪の色、髪型なども多くのデータベースがあるので、あなただけの個性的なキャラクターも作れます。
3Dワールドの構築
ゲーム制作やアニメ制作をする際、キャラクターの次に必要となるのがキャラクターを動かすステージです。Unreal Engineでは、キャラクターの世界を「3Dワールド」と呼びます。
3Dワールドの制作に使用するのは、Unreal Engineで提供されている「ランドスケープツール」です。ランドスケープツール内には海や川、空、草花、風などの要素をリアルに表現できます。また、「Chaos」プログラムを利用すれば、映画のような爆発や崩壊シーンの演出も可能です。さらに、Unreal Engineは仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)といった仮想空間の制作にも対応しています。
ゲームの設計・構築
Unreal Engineの利用方法として多いのはゲーム制作です。ゲーム制作には、「ブループリント」というツールを使います。「ブループリント」の最大の特長は、プログラミング言語によるコード入力が不要な点でしょう。
つまり、プログラミングの知識がなくてもゲームシステムの制作ができるのです。もちろん、プログラミング言語を使ってのコード入力にも対応し、オリジナルの動作を作り出すことも可能です。Unreal Engineは非常に自由度の高いゲーム制作環境といえます。
3Dアニメーションの編集
Unreal Engineでは3Dアニメーションの制作・編集も得意としています。3Dアニメーションの編集に使用するツールは「シーケンサー」です。
3Dキャラクターと3Dワールドを制作したら、キャラクターやワールドを自由自在に動かせます。しかも、シーケンサーはカットの編集、ライティング、レンダリング、ポストエフェクトの操作をワンストップでできるので、編集作業も簡単です。
また、Unreal Engineは複数人での同時作業にも対応しているので、大規模なゲームの制作にも適しています。また、制作時間の短縮も可能でしょう。
制作したコンテンツを様々なデバイスで楽しむ
Unreal Engineで制作したゲームやアニメ-ションはパソコンやスマートフォンなど多くのプラットフォームで自由に公開できます。Unreal Engineで制作したコンテンツは下記のプラットフォームで利用可能です。
- Windows
- MacOS
- Linux
- PlayStation 4 / PlayStation 5
- Xbox One / Xbox Series X
- Nintendo Switch
- iOS
- Android
有益なコンテンツ制作し、多くのプラットフォームで公開してみてはどうでしょうか。
Unreal Engineの特徴
Unreal Engineには、下記のように多くの特徴があります。
- 全機能無料で使える
- ソースコードが公開されている
- プログラミングなしでコンテンツ制作可能
- 高品質のグラフィックス
- 高品質なアセットが豊富
- 制作したゲームを公開・販売できる
それぞれの特徴について、もう少し詳しく説明していきましょう。
Unreal Engineは全機能無料で使える
Unreal Engineの最大のメリットは全機能が無料で利用できることです。ゲーム開発や3Dアニメーションも全て無料で制作ができます。また、ライブラリや学習教材、サポートまでもが無料。ただし、一部の条件を満たした場合においては有料となるので注意が必要です。
Unreal Engineマーケットプレイスでは多くのコンテンツを公開しています。しかも、驚くことに、多くのコンテンツは無料です。つまり、プロが使用するツールや素材を、そのまま誰もが無料で使用できることになります。
ソースコードが公開されている
Unreal Engineのソースコードは、オープンソースでGitHubに公開されています。GitHubとはエンジニア各々が公開用のプログラムをアップできるサービスで、多くのエンジニアに共有する目的で運営されているものです。
公開されているソースコードをダウンロードすれば、ソースコードの改変もできます。詳しい人にとっては喉から手がでるほど欲しい情報ではないでしょうか。ただし、ソースコードを理解するにはゲームエンジンの構造に関する知識が必要です。興味のある方は、事前に勉強してください。
プログラミングなしでもコンテンツ制作ができる
Unreal Engineのツール「ブループリント」はプログラミングの知識がなくてもゲームなどのコンテンツ制作ができます。
ゲームの制作と聞くと、かなり難しいイメージがあるかもしれません。もちろん、従来のゲーム制作はプログラミングの知識がなければ不可能でした。しかし、Unreal Engineでは視覚的にグラフをつなげる事でゲームの機能を実装していくというもの。したがって、コンテンツのストーリーが描ければ、経験の少ない人でも制作できます。
高品質のグラフィックス
Unreal Engineが他のゲームエンジンと大きく異なるのはグラフィックス性能です。ゲームだけでなく映像制作においてもUnreal Engineが利用されているのは、グラフィクスが優れているからに他なりません。
しかも、最新のUnreal Engine 5では、グラフィックのクオリティが劇的に向上しました。特にライティングにおいては、本物の映像と見間違うほどでしょう。高画質のグラフィックスはゲームや映像以外にも製造、土木・建築、自動車業界、XRでも活用されています。
高品質なアセットが豊富
Unreal Engineで使用できる下記のようなオブジェクトは、アセットとしてマーケットプレイスで入手可能です。
- キャラクター
- 背景
- エフェクト
- 音楽
アセットには有料のコンテンツとして販売されているものもありますが、無料で利用できるものも多くあります。しかも、無料のアセットでも高品質な素材が多く、開発期間とコストを劇的に減らすことができるでしょう。
制作したコンテンツを公開・販売できる
Unreal Engineで制作したゲームや映像などのコンテンツは誰でも公開・販売が可能です。ただし、販売した場合の収入が100万米ドル以上の場合、5% のロイヤリティを支払わなければなりません。
前述したとおり、制作したコンテンツはWindowsやMacOSなどの様々なプラットフォーム上で公開可能です。
Unreal Engineが使われている事例を紹介
実際にUnreal Engineが使用されている事例を紹介しましょう。様々な事例がありますが、今回紹介するのは下記3つのサービスです。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
オンラインバトルロワイヤルゲーム「 フォートナイト」
Unreal Engineで制作されたコンテンツといえば、「フォートナイト」が最も有名ではないでしょうか。
フォートナイトは2017年に公開され、大人から子供まで世界中を席巻する人気となりました。中でも人気があるのはバトルロイヤルモードです。2018年11月には同時接続プレイヤーが830万人に達したほどです。世界大会なども頻繁に開催され、16歳の少年が優勝賞金3.3億円を獲得したニュースは世界中を驚かせました。
また、2023年には新たなツール「Unreal Editor for Fortnite」が公開され、フォートナイトは次のステージへと進んでいます。「Unreal Editor for Fortnite」は人気ゲームのフォートナイト向けのコンテンツを制作できるツールです。これにより、フォートナイト上で新たなゲームを開発することも可能になりました。今や、誰もがゲームクリエイターになれる時代です。
建築CGで物件のイメージ確認
建築系のCG制作を手掛ける株式会社積木製作では、Unreal Engineを使ってリアルタイムコンテンツの制作を実施しています。
こちらの動画では実際に武蔵小杉に開発されるタワーマンションをUnreal Engineの技術を使って3Dで再現しています。高層階からの眺望なども体験することができ、今までのモデルルームとは違った顧客体験を実現しています。
バーチャルK-POPバンド「MAVE:」
今やどのようなコンテンツでもバーチャルで表現できてしまう時代になり、バーチャル空間でコンサートなども開催されるようになりました。K-POPバンド「MAVE:」もその一つ。Unreal Engineを駆使して制作されています。
一見すると、ただのミュージックビデオと見間違うかもしれません。しかし、実際は生の人間ではなくUnreal Engineが作り出した3Dキャラクターです。「この世界のどこにも存在しない、まったく新しいキャラクター」の制作を試みた結果、短期間で大量のコンテンツを生み出すことに成功しました。
まとめ〜Unreal Engineで高品質な3D制作ができる
本記事ではUnreal Engineについて詳しく解説しました。Unreal Engineは1998年にリリースされた歴史あるゲームエンジンです。
ゲームエンジンを利用すれば、プログラミング経験が浅くても感覚的な操作で本格的なゲーム開発や3Dアニメーション制作ができます。ゲームエンジンの中でも、Unreal Engineは高画質のグラフィックスで人気のソフトウェアです。
また、Unreal Engineはプロが使用するツールをそのまま無料で利用でき、高品質の3Dゲームや3Dアニメーションを制作できます。
ゲームや映像分野だけでなくXR分野や産業分野でも活用され、今後はさらに利用者や開発者が増えるでしょう。