近年、VRデバイスの普及により認知度は向上し、仮想世界でのエンターテイメントをはじめとするサービスも増加傾向です。
しかしながら、VRコンテンツを利用したことのある人はまだ限られています。
VRコンテンツを利用するにはソフト・ハード共に多くの障壁があることが要因として考えられます。
そこで近年注目を集めているのが「WebVR」。
WebVRはVR体験の敷居を大きく下げることができ、今後の可能性が期待されている技術です。WebVRはWeb上で利用できるコンテンツとなっており、特別なアプリは必要ありません。
そこで、本記事では下記について詳しく解説していきます。
● WebVRとは何か
● WebVR導入のメリットや将来性
● 親和性の高い業界や導入事例
ぜひ記事をご覧になり、WebVRの導入を検討してみてはいかがでしょうか。VRがより身近な存在に感じられ、企業のサービス向上にも役立つことは間違いありません。
<目次>
WebVRとは?通常のWebサイトとはどう違う?
・WebVRとは何か?サンプルで簡単に体験してみよう
・WebVRと従来のVRとの違いはサイト閲覧で体験可能な点
・WebVRと通常のWebサイトとの違い
WebVRアプリケーションの作成環境
・WebVR Device APIとは
・WebXR Device APIとは
WebVR導入3つのメリット
・互換性の問題や配布に関する制限がない
・特別なソフトウェアが不要
・VR体験のハードルを下げる
WebVRの応用が期待できる分野と事例
・事例1:企業の採用活動
・事例2:ゲーム業界
・事例3:ショッピングやコンテンツ体験
・事例4:観光体験
WebVRとは?通常のWebサイトとはどう違う?
WebVRはウェブブラウザ上で手軽にVR体験ができるものです。VRとはVirtual Realityを略したもので、日本語では「仮想現実」と訳されています。つまり、現実ではないが、仮想空間において現実に近い体験ができるというもの。
VRはまだまだ発展途上の技術です。しかし、その応用範囲は多く、ゲームや動画視聴、医療などでの利用が進んでいます。
従来のVRは、利用するのにアプリが必要でした。しかし、WebVRはウェブブラウザを利用してVR体験を行うため、専用のアプリやソフトウェアなどを用意する必要がなく、誰でも簡単にVRの世界を楽しめるものです。
それでは、WebVRについてもう少し具体的に解説していきましょう。
WebVRとは何か?サンプルで簡単に体験してみよう
WebVRは2014年にVladimir Vukicevicの提唱から始まりました。その後、2016年3月にWebブラウザ大手のMozillaが「WebVR API V1.0」をリリースし、2017年にV1.1にバージョンアップしています。
MozillaはVRを体験できるWebブラウザの機能を開発しました。これにより、今では誰もが簡単にWebVRを体験できるようになっています。
しかし、百聞は一見に如かずと言うように、いくら言葉で説明してもWebVRのイメージが掴めないかもしれません。そこで紹介するのが、WebVRのサンプルサイトです。 A-FRAMEではWebブラウザ上でいくつかのサンプルが体験可能となっています。サンプルの中でも、わかりやすいのは360度回転可能なモデルです。まずはサンプルでWebVRを体験してみてください。
続いてVRとWebVRの違いについて解説しましょう。
WebVRと従来のVRとの違いはサイト閲覧で体験可能な点
従来のVRとWebVRの相違点を簡潔に表すと、以下のようになります。
● VR: VRデバイスとVRアプリを通してVR体験が可能
● WebVR: VRデバイスとVRを搭載したWebサイトでVR体験が可能
従来のVRを体験するためには、VRアプリと VRデバイスが必要です。 VRアプリは「Google Playストア」または「Appleストア」で入手し、あらかじめインストールしなければなりません。
また、VRデバイスは5,000円以下のリーズナブルなものも多く販売されています。しかし、一体型やPC接続専用のものなどもあるので、用途によって機種を選択しなければなりません。
一方、WebVRはWebブラウザ上で利用できるので、特殊なアプリをインストールせずに体験可能です。また、VRデバイスについても、WebVRは多くの機種に対応しています。
関連記事:XR技術まとめ | VR、AR、MRの解説と注目されるメタバースとの違い https://www.techfirm.co.jp/blog/xr
WebVRと通常のWebサイトとの違い
WebVRと通常のWebサイトとの違いは下記のとおりです。
● 通常のWebサイト:二次元コンテンツ(2D)のみを描画
● WebVRサイト:3Dテクノロジーと仮想現実を体験できる
近年ではWebVRの利用可能なWebブラウザが増えています。したがって、WebVRと通常のWebサイトはコンテンツの作り方のみの違いです。
通常のWebサイトでは仮想現実を体験できません。オブジェクトは2次元となり、立体的に見ることは不可能です。しかし、WebVRサイトではオブジェクトを回転させたり、反転させたりできます。まるで、実際のショールームでディスプレイされている商品を見ているような感覚になるでしょう。
ここまで、WebVRの概要について解説してきました。続いてWebVRの作成環境について解説します。
WebVRアプリケーションの作成環境
WebVRの実現のためにJavaScriptを利用し、必要な位置・向き・加速度などの情報を取得するのがWebVR Device APIです。APIとは「Application Programming Interface」の頭文字を取ったもの。日本語でわかりやすく説明すると「ソフトとプログラムの接点」です。つまり、窓口のような役割を果たすものになります。
WebVR Device APIとはどのようなものでしょうか。詳しく解説していきましょう。
WebVR Device APIとは
WebVRではWebVR Device APIによって以下のような情報を取得しています。
● ディスプレイの認識
● ジャイロセンサやポジショントラッキング等の情報を認識
特にジャイロセンサやポジショントラッキングによってユーザーの位置や姿勢情報、目の瞳孔間距離などの取得が可能です。
また、5G(第5世代移動通信システム)のサービスが開始されたことで、3Dレンダリングの処理をサーバー側で実施して通信による情報取得が可能になります。
3Dレンダリングの情報取得を行っているのもWebVR APIの役割です。ただし、現在はWebVR Device APIは廃止され、ARにも対応したWebXR Device APIが公開されています。
WebXR Device APIとは
WebXR APIはWebVRの上位互換です。VRだけでなく、ARをサポートするための各種センサやXRデバイスのインターフェースとして機能します。
XRデバイスにはスマートフォンも含まれており、従来のヘッドマウントディスプレイよりも手軽に扱えるようになりました。
WebVR導入3つのメリット
WebVRを導入することで得られる主なメリットは次の3つです。
● 互換性や配布に関する制限がない
● 特別なソフトウェアが不要
● WebVRはVR体験のハードルを下げる
上記の3点について、もう少し詳しく解説します。
互換性の問題や配布に関する制限がない
WebVRはWebブラウザ上で動作するものです。したがって、互換性という部分に関しては、かなり柔軟に対応します。アプリケーションの配布についてもストア登録が必要です。したがって、アプリケーションの配布にも制限を受けることになります。
また、従来のVRではヘッドセットはアプリケーションに対応したものが必要でした。つまり、機種依存度が高くなるということです。しかし、WebVRの場合はほとんど機種に依存しないと言っても良いでしょう。
ソフト・ハード共に制限が少ないことは大きなメリットです。
特別なソフトウェアが不要
前述したように、WebVRの体験には対応しているWebブラウザさえあれば良いので、従来のような特別なソフトウェアは不要です。現在、一般的に利用されている主要なWebブラウザはWebVRに対応しているので、特殊なブラウザを使用していない限り問題ありません。
WebVRに対応しているWebブラウザに関しては後述します。
VR体験のハードルを下げる
上記の2点より、WebVRがVR体験のハードルを大きく下げることに繋がります。従来のVRでは、アプリを選び、アプリに適合したヘッドセットを購入しなければなりません。
たとえば、おすすめのVRゲームがあったとして、そのゲームをプレイするためだけにハードを揃えるのは難しいでしょう。思った以上に費用もかかります。
その点、WebVRは余計な機材やソフトウェアも必要ありません。したがって、誰でも簡単にVR体験ができるようにハードルを大きく下げられます。
それでは続いて、WebVRの具体的事例を紹介しましょう。
WebVRの応用が期待できる分野と事例
WebVRの応用可能な分野は範囲が広く、今後もさらに応用分野は拡がりを見せることになるでしょう。既にWebVRの実用可能なレベルのサービスとして考えられているものとしては、下記の事例です。
● 不動産
● インテリア設計
● ゲーム
● 旅行やドライブ
● 訓練・トレーニング
● 展示会
● 就職面接・就職活動
不動産物件の内見などは既に多くの企業が取り入れている事例でしょう。ここではその他の具体的事例について、動画を交えて紹介します。
事例1:企業の採用活動
新型コロナウイルスのパンデミック以降、世の中は直接的な接触を減らす方向に進んでいます。企業での採用活動についても同様です。実際に会って面接せずにオンラインで済ませることも増えてきました。下記の動画はWebVRを活用した企業の採用活動の様子です。 WebVR採用
動画で紹介しているWebVRの事例では、実際に企業を訪問せずにオフィスの雰囲気や業務内容などを紹介しています。さらに、WebVRのコンテンツ内にフォームが設置されており、直接応募も可能です。
上記の事例のようにWebVRを活用すれば、就職活動も円滑に進められます。採用する側と採用される側の両方にメリットが感じられるでしょう。
事例2:ゲーム業界
VRの代表的な活用方法として、ゲームが考えられます。ゲーム内の仮想空間にプレイヤー自身が入り込むことで、現実世界では不可能な体験もできるでしょう。下記の事例はオープンソースによるスパイダーマンのゲームです。 スパイダーマンのゲーム
プレイヤー自身がスパイダーマンとなり、ビルを登ったり空を飛んだりしながらゲームを楽しめます。
事例3:ショッピングやコンテンツ体験
WebVRを活用することで、あたかも実店舗に訪問しているかのようなイメージでショッピングすることも可能です。MiraiLab WebVRでは下記のコンテンツを紹介しています。
● WebVR内でのショッピング
● WebVR内での映画鑑賞
● 実店舗で使用可能なクーポンの配布
詳しくは下記の動画を御覧ください。 MiraiLab WebVR
動画内では、他にも宝探しやイラストに奥行きを出すような工夫もされています。仮想現実なので、工夫次第で様々なことができるのが理解できるでしょう。
事例4:観光体験
WebVRでは地図と連動したサービスも多数あります。また、WebVR内で観光することも可能です。下記の動画はWebVRによって世界中を旅行しています。 360 度動画で家にいながら世界中を旅する!
また、地図をWebVRで立体的に利用することも可能です。行きたいところに手軽に行けるWebVRはこれから需要が増えるでしょう。
WebVR 対応ブラウザとデバイス
WebVRを利用するのに必要なのは次の2点です。
● Webブラウザ
● VRデバイス
ただしWebVRに対応しているWebブラウザと、WebVRに対応しているVRデバイスでなければなりません。それでは、どのようなWebブラウザとVRデバイスを使用すれば良いのでしょうか。
そこで、この章では対応しているWebブラウザとVRデバイスについて紹介します。
WebVRに対応しているWebブラウザ
WebVRに対応している主なWebブラウザは次の5つです。
● Firefox
● Firefox Reality
● Chrome
● Edge
● Safari
上記を見てもわかるとおり、一般的に使用されているWebブラウザはWebVRに対応しています。したがって、上記のブラウザがインストールされている状態であれば、難しいことを考えなくてもWebVR体験が可能です。
では、続いてWebVRに対応しているVRデバイスについて紹介します。
WebVRを使用できるVRデバイス
実は、WebVRは現在市場に出回っているほとんどのVRデバイスで利用可能です。下記はほんの一例になります。
● Oculus Quest 1& 2
● Oculus Rift S
● Oculus Go
● Sony PlayStation VR
● Samsung Gear VR
● HTC Vive
● HTC Vive Focus
前述したとおり、WebVRでは多くのVRデバイスに対応しています。したがって、上記に記載していないVRデバイスでも問題なく利用できるでしょう。
まとめ~WebVRは将来性に期待できる技術~
本記事ではWebVRについて詳しく解説しました。
WebVRはWebブラウザ上でVR体験ができる画期的な技術です。従来のVRではアプリのインストールや機種に依存するヘッドセットが必要でした。
しかし、WebVRではWebブラウザ上で利用できるのでアプリが必要ありません。また、ヘッドセットも市販されているほとんどの機種に対応しているため、機種に依存することなくVR体験が可能となります。
したがって、WebVRはVR体験へのハードルを大きく下げることができ、今後さらに利用が増えるでしょう。 VR・ARの市場規模は2025年には750億ドルまで拡大する予想となっています。WebVRの応用範囲は広く、企業のサービス向上に大きく貢献するだけではありません。今後は日常生活でも利用されることになるでしょう。今後はVR市場におけるWebVRの占める割合も増え、市場拡大に大きく貢献するものと考えられます。