【技術体験レポート】ARCoreとは?新機能を使ってみた!

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近年、スマートフォンのカメラや装着型のARデバイスをはじめとする様々なデバイスが進化し、ARやVR、MRの性能も上がってきています。

そんな中、2022年5月にGoogle I/O 2022にてARCoreの新機能が発表されました。

今回の記事では、発表があった新機能「ARCore Geospatial API」、またバージョンアップされた「ARCore Depth API」を実際に使った技術体験レポートをお届けします!

体験レポートの終盤では、ARCore Geospatial APIが今後のビジネスで期待できそうな活用領域を考察し、実際に利用してみて分かった課題などにも触れていきます。

ARCoreとは?

ARCoreは、2017年に発表された拡張現実(AR)を構築するためのGoogleのプラットフォームです。ARCoreを利用することで、現実世界の中にキャラクターや物を登場させることができます。例えば、GoogleMapのウォーキングナビのようにカメラをかざして矢印を表示して道案内を行ったりすることができます。 

ARCoreは特殊な機器を使わずに、スマートフォンにデフォルトで搭載されているカメラとセンサーのみでARコンテンツを利用することが可能です。リリース後から対応デバイスも増えており、AndroidでもiOSでも利用することができます。 

ARCore v1.31.0 の新機能 とバージョンアップの概要

2022年5月にARCoreの新機能が発表されました。本章では、新機能とバージョンアップされた内容について解説していきます。

新機能:ARCore Geospatial API

ARCore Geospatial APIとはGPSを代表とするデバイスのセンサーデータと画像データを使用して、緯度・経度・高度の位置情報を判断するVPS(Visual Positioning Service)です。Googleストリートビューで使用されている数百億の画像を用いて位置情報を判断しています。 

ARCore Geospatial APIでは、カメラから得られた周囲の映像から特徴点を抽出し、サーバー内のデータベースと照合することで、カメラを向けている確度、位置情報を高精度で取得できるようになりました。

その結果、アンカーを高精度で配置できるようになりARを現実世界とのずれが少なく表示できます。

バージョンアップ:ARCore Depth API

Depth API は、奥行きのあるアルゴリズムを使用して深度画像を作成することができます。RGBカメラを使用してさまざまな角度から複数のデバイス画像の比較によって距離を推定します。デバイスに深度センサー(ToFなど)が搭載されている場合は、精度が増します。 

v1.31.0から長距離の深度検出が含まれるように最適化されており、表現可能な深度観測の範囲を広げています。深度の最大範囲が8mから20mにアップグレードされました。このことにより屋外でもオクルージョンができるようになっています。 

オクルージョンとは、奥行きを考慮してARコンテンツを配置する機能です。 現実世界と同様にARコンテンツの手前に物体がある場合には、その部分が隠れて見えるようになります。 

アンカー配置の方法の比較とそれぞれの特徴

GPSやコンパスなどの内蔵センサーを利用する方法 

デバイスのセンサーから取得できる位置情報をもとにアンカーの配置を行います。世界中指定した場所どこにでもアンカーを配置できますが、ビル群の中だったりすると位置情報がいきなりジャンプして移動してしまったり、環境により位置情報の精度が低いため配置の信頼性も低いです。 

AR Core Cloud Anchors APIのような空間アンカーを利用する方法 

事前にアンカーを配置する場所の情報をスキャンすることで、高精度なアンカーの配置を行うことができます。ただし、事前の情報取得が必要なため特定の空間のみでの利用に限られます。 

ARCore Geospatial API を利用する方法

今回追加された新機能です。位置情報の精度が高いため、空間アンカーのように事前のスキャンを行わずとも緯度経度、高度を指定することで世界中にアンカーの配置が可能です。ARCore Geospatial APIは内臓センサーと空間アンカーのいいとこどりのような機能となっています。 

ARCore Geospatial APIを使ってみた

実際使ってみたらどんな感じなのかを確かめるため、ARCore Geospatial APIのサンプルアプリを動かしてみました。 

サンプルコードを動かすために準備した環境は以下の通りです。 

・Pixel 4 XL(Android11) 

・Android Studio(バージョン 3.0 以降) 

・Android SDK Platform (バージョン 7.0(API レベル 24)以降) 

Android 開発用デバイスにARGoogle Play 開発者サービス 1.31 以降がインストールされている必要があります。 

サンプルアプリのコードをGoogleが提供してくれているため、そちらのコードを使用しました。サンプルアプリを動かすための手順も細かく記載されています。

今回動かしているアプリは、自分の位置情報をもとに、現在の場所にアンカーを配置するアプリです。アプリ動作時はVPS情報を利用するためインターネットに接続している必要があります。 

まず、現時点にアンカーを配置し、その後階段を上ってみました。 

クリックすると拡大します

階段の上からは先ほど配置したアンカーが下に小さく見えています。 続いて、階段の上からアンカーを配置し、階段を下りてみます。 

クリックすると拡大します

下から見たときにはオブジェクトの下面が見えています。 

道沿いのストリートビューのデータがあると思われる場所で利用すると、位置情報が正確に取得できるため歩道橋の下と上それぞれで的確な位置にアンカーを表示することができました。 

ビルの敷地内でも同じように階段の下からアンカーを配置し、階段の上から配置したアンカーを見てみました。 

位置情報をGSPで取得できているため、距離が離れたように表示されていますが、ほぼ同じ高さにあるように表示されてしまい、道沿いで試したときほどの正確性はありませんでした。

クリックすると拡大します

後から、ストリートビューで確認したところ、敷地内も一応ストリートビューで表示されるエリアではありました。ストリートビューがあるからといって、まだすべての場所で機能提供はされていないそうです。

ARCore Depth APIのサンプルアプリを動かしてみた

ARCore Depth APIも、サンプルアプリを動かしてみました。手順はこちらのページを参照してください。 

深度マップが見やすいように、表面を検知したときの画面描画を非表示にしてあります。 サンプルアプリを起動して、右上の歯車を選択し、「Depth API」を選択、「Show depth map」へチェックを入れると深度マップを表示することができます。 

古いバージョンのものと深度マップの比較を行ってみました。 

クリックすると拡大します

古いバージョンでは、ある一定の距離以降はすべて同じ距離と認識されていますが、新しいバージョンの方だとさらに奥行きがあることまで把握できるようになっていることが確認できました。 

今回試した以外のARCoreの機能のサンプルも色々と提供されています。

今後、期待できる活用領域

今回、実際にARCoreの新機能を試す中で、今後の活用領域についても考えてみました。

配達先の伝票と道案内を連動

近年、配送サービスが急増しています。配送スタッフが伝票をスキャンし、届け先の住所情報と連動して道案内を出せる活用ができるかもしれません。配達の効率化などに繋がる可能性があります。

地域活性化

例えば、漫画や映画の舞台となっている地域で、そのキャラクターが出てくるような仕掛けを作ることで観光客の集客、認知度の拡大に繋がる可能性があります。観光業の1つのコンテンツとして用意するのも面白いかもしれません。

商業施設内や倉庫内での活用

広大な商業施設や倉庫内で店舗や物の位置情報等が知れると便利ではあるものの、商業施設や倉庫の屋内は基本的にARCore Geospatial APIサービス外のため、利用することができません。ARCore Geospatial APIはGoogleが提供するストリートビューの画像を利用し、位置測位をするため、現状ではストリートビューが提供されない範囲では利用することができないのです。

今後、サービス範囲が広がり屋内でも正確な位置測位が可能になれば、屋内での活用方法も広がるかもしれません。

道案内等に利用する場合にはスマホのカメラ画像上にARコンテンツが表示されるため、デバイスを掲げておく必要があるため長時間利用に向いていないことや、利用中は画面に集中してしまうため、安全面での懸念があります。 ユーザが動きながら、AR体験をしたい場合には、ARグラスのように装着型のデバイスであれば更なる活用方法が増えていきそうです。 

まとめ

今回、新たなにARCoreに追加された機能「Geospatial API」により、その場所に行かずともアンカーを配置することができるようになりました。これにより、今後のAR活用領域もますます広がる可能性があります。また、高精度で位置情報が取得できように改善されており、ARの精度もこれまで以上に上がることが期待されます。

さらに近年では、Magic Leap OneやNreal Lightと言ったARグラスと呼ばれる装着型デバイスの開発も進み、比較的安価で手に入れやすくなってきています。装着型デバイスと組み合わせることでARのビジネス活用の幅も格段に広がるかもしれません。

是非、この機会にARのビジネス活用を検討してみてはいかがでしょうか?