最近よく耳にする「ChatGPT」は生成AIサービスの一つですが、生成AIとはそもそも何なのか、今更聞けないと思う方も多いのではないでしょうか。
生成AIは、人工知能(AI)の一種です。
この記事では、まずそもそもAIとは何なのかをおさらいし、生成AIが誕生して注目されるようになった背景を紹介した上で、生成AIの仕組みや種類について解説します。
まだAIについて詳しくない人にも、それぞれわかりやすく解説していきますので、ご参考ください。
<目次>
生成AIを導入した企業の事例
・生成AIを活用し商品開発の強化(アサヒビール)
・個別業務に特化した生成AIアプリケーションを開発(大和証券)
・製造現場の改善を実現(旭鉄工)
・全庁で生成AIサービスを導入(福井県)
・「AIあべのべあ」による会話型生成AIアバター接客を導入(近鉄不動産)
そもそもAIとは?
AIとはArtificial Intelligenceの略称で、直訳すると人工知能となります。AIの誕生は1956年、計算機科学者・認知科学者のジョン・マッカーシー教授によってアメリカのダートマス大学で開催された会議で提案されました。
誕生当時からさまざま分野で研究が続けられており、明確な定義がなく統一されていないのが現状ですが、主に人間の脳の動き(思考・学習)を人工的に作り出し「人間の知能を再現するコンピューター技術」とされています。
関連記事 AI(人工知能)とは?機械学習やディープラーニングとの違い
AIの時代による変化
AIには、これまで3度のブームと冬の時代が交互に訪れ、現在の技術に至っています。
第一次AIブーム(1950〜60年代)では、特定ルールの中で「推論」や「探索」を行い、特定の問題に対して回答を導き出すことができるようになりました。実はこの時代に、心理療法士の役割を担う対話型AIのチャットボット「ELIZA(イライザ)」の開発を始め、生成型AIの研究も本格的に始まっています。
第二次AIブーム(1980年代〜90年代)では、知識データを人工知能に与え、ルールから推論し、特定分野の専門家のように振る舞うシステムが生み出されました。同時代に世界初のニューラルネットワークを利用した生成型AIプログラム「Backpropagation(バックプロパゲーション)」が開発されています。
第三次AIブームは、2000年代から始まり現在も続いています。このブームの大きな特徴は、AIがビックデータと呼ばれる大量のデータを用いて、自ら学習・習得をする機会学習が実用化されたことです。そして、コンピューター技術の進化で、この機械学習の学習量やアウトプットの精度やスピードが向上し、現在ChatGPTのような生成AIが注目されているのです。
生成AIとは?
近年、AIから発展を遂げた生成AIが注目をされています。生成AIとは、「プロンプト」と呼ばれる指示や質問を投げかけるとその内容を解読し、自動で新しいコンテンツを生み出して、学習もしていくものです。
生成AIの概念
生成AIとは入力されたプロンプトの規則性や構造を学習し、訓練をしていきます。同じような特性を持つ新しいデータを生成し、0から1を作り出すものです。これまでのAIは自らが持つ知識から学習や認識することができるものだったのに比べ、生成AIは新たにコンテンツを生成できることが特徴となります。
生成AIの仕組み
生成AIはプロンプトから解析し、予め学習している大量なデータの中から特徴を抽出し、適切な回答を導き出す仕組みになっています。この仕組みでは、大量データから特徴を自動的に発見できる人工技術の一種であるディープラーニングが用いられています。ディープラーニングは機械学習の手法で、学習しているデータを元にAI自身が最も適切な回答を導き出す手法です。
生成AIの種類
生成AIには4つの種類があります。それぞれ解説していきます。
画像生成
テキストを入力することで入力した内容のイメージに近いオリジナルの画像を生成できます。WEBサイト制作の際の背景画像などの素材として画像を生成するなど、デザイン業界での活用方法が期待できます。
代表的なサービス: Canva、Stability AI
テキスト生成
プロンプトを入力することでAIがその内容を解析して回答のテキストを生成できます。単純に質問に対する答えを生成することもできますが、例えばプログラミングにおいて、エラーが表示されたコードを入力し、エラー箇所を指摘してもらうという指示を出すこともできます。
動画生成
動画生成AIもテキストで指示を出し、オリジナルの動画を生成することができます。生成AI開発の中でも難易度が高いとされており、現時点では数秒ほどの短い動画生成になっています。また今ある動画を入力して新しく作り変えることも可能です。
将来的には長尺の動画も生成できる可能性もあるとされていて、プロモーションビデオの作成なども期待できます。
音声生成
音声生成AIは音声を生成するAIです。例えばある一人の声を入力すると、その人の声質を高精度で再現することができ、その人の音声を使ったテキスト読み上げなどが可能になります。つまり本人の声を収録せずとも、ナレーションを読み上げたりすることができるのです。
生成AIができること・苦手なこと
生成AIにはさまざまな種類があり、便利で業務効率に役立てることも多い一方、不得意な分野もあります。生成AIは、出された指示に従ってその指示を解読し、情報を集め、テキストで回答したり、音声・動画・画像データをわずか数秒で生成できることがポイントです。
しかし、情報の真偽性に対しては確認ができていないので、こちらで正しい情報なのかや著作権に問題がないかをチェックする必要があります。また、人間の指示の裏側にある意図を汲み取ることも難しいので、生成AIのレベルに合わせた適切なプロンプトが必要になってきます。そのほかにも、セキュリティ面での懸念もよく上がっており、入力する内容に個人情報や機密情報が含まれていないか注意することも重要です。
生成AIのメリット
生成AIを活用することで、以下のようなメリットがあります。
- 業務効率化
- 人手不足の軽減
- 新たなサービス創造
それぞれ解説していきます。
業務効率化
生成AIを活用することで、あらゆる業務の効率化が図れます。例えば、資料のグラフ作成、長文文章の要約、議事録の作成など社内のスペシャリストとして、業務をお手伝いします。ChatGPTでは、回数制限はあるものの無料でもエクセルファイルをアップロードして関数を実行した状態でアウトプットがされます。今まで関数を調べながらやっていた人も、ChatGPTをお願いしている間に他の業務ができたりと、生産性の向上にも繋がります。
人手不足の軽減
2つ目は人手不足の軽減です。例を一つ上げると、チャットボットへの生成AI導入です。本来は人が行っていたカスタマーサポートで生成AIチャットボットを活用することで、24時間対応可能なカスタマーサポートや、自動化による脱属人化を実現できます。
また、生成AIに社員マニュアルを学習させることにより、社員のスキルレベルを問うことなく一定のサポート品質が確保することが可能です。
関連事例 イメージ・マジック様 ECサイトに生成AIチャットボット導入
新たなサービス創造
生成AIの一番の特徴として、0から1を生み出す点からアイディア出しも要求することができます。特に生成AIならではのメリットと言えるでしょう。蓄積されているデータから学習し、人では気づくことのできなかったアイディアや新規事業展開へのアドバイスとしても役立てることができます。
生成AIを導入した企業の事例
実際に生成AIを導入した事例を5つご紹介します。
生成AIを活用し商品開発の強化(アサヒビール)
アサヒビールでは株式会社丹青社と連携し、マイクロソフトが提供する生成AIを用いた社内情報検索システムを導入しました。社内情報検索システムを導入することで、技術情報の収集、整理を行うことが狙いです。情報を効率的に取得し、グループ全体の知見を共有できるようになります。
アサヒビールの社内情報検索システムは、PDF、Word、PowerPointなど様々な形式の資料をデータ化して検索できるという特徴を持ちます。検索結果としては、資料の概要、サムネイル、100文字程度の要約などが出力されます。
アサヒグループは、中期経営方針において、3つのコア戦略のひとつとして「DX=BX(ビジネス・トランスフォーメーション)と捉え、(プロセス、組織、ビジネスモデル)でのイノベーションを推進」を掲げています。また2023年5月下旬に『ジェネレーティブAI 「やってTRY」プロジェクト』を発足し、業務効率化や高度化、生活者インサイトの掘り起こしなどを目的に、生成AIの試行を通して同技術に関する利活用の知見を蓄積しています。
今後、商品開発だけでなく、全社員の業務効率化を目指して、様々なシステムへの生成AIの導入を検討していくと発表しています。
大和証券、個別業務に特化した生成AIアプリケーションを開発(大和証券)
音声データから個別業務に特化したアウトプットを生成するアプリケーション「Speech2Summary」を開発し、社内での業務利用を開始したと発表しました。
2023年4月に、全社員約9,000人を対象に対話型AIの「ChatGPT」の利用を開始しましたが、全社員が高度なスキルを身に着け、ChatGPTを使いこなすためのハードルは高く、現場での活用が思うように進まないという課題がありました。そこでプロンプト不要でChatGPTを業務活用できる方法を検討し、本アプリケーションを開発しました。今後は、ユーザーのフィードバックをもとにチューニングを進め、精度向上を図るとしています。
参考:大和証券、個別業務に特化した生成AIアプリケーションを開発
製造現場の改善を実現(旭鉄工)
旭鉄工では、上位概念を設定した200以上の現場での改善事例を蓄積しています。
もともと属人的に管理された改善方法は、個人が紙やファイルで保存している状況で、改善パターンなども共有された状態ではありませんでした。
そこで旭鉄工様では、この改善のノウハウを共有し、問題の対策と人材育成の早期化を目指しました。そのためにノウハウを抽出して作成したのが「横展アイテムリスト(ノウハウ集)」です。
しかしこのノウハウ集には、書き方はどうしても個人差が出てしまったり、事例によっては活用しにくいものがあるというのが課題でした。
そこで旭鉄工は、生成AIを活用して、従業員が簡単に必要な情報を収集できる仕組みを作りました。
具体的には、ChatGPTにノウハウ集の内容を読み込ませ、自然言語で質問し、上位概念も含めた最適な改善事例を回答できるようにしました。
参考:ChatGPTで製造現場カイゼンを簡単に、過去事例や注意点を引き出す生成AI活用事例
全庁で生成AIサービスを導入(福井県)
福井県では、2024年4月から全職員が利用可能な生成AIサービスを導入するとして、米マイクロソフト社の対話型AI「コパイロット」導入を発表しました。
2024年度より全職員への導入に向けて、課ごとにアカウントを割り振って実証するとともに、ガイドラインや活用事例集を作成してきました。全庁的に業務の効率化を進めるとしています。
「AIあべのべあ」による会話型生成AIアバター接客を導入(近鉄不動産)
近鉄不動産は、メタバース空間 バーチャルあべのハルカスのオープン1周年を機に、バーチャルあべのハルカスにて、OpenAI社が開発・提供する大規模言語モデルを活用した会話型生成AI「AIあべのべあ」を導入すると発表しました。
「AIあべのべあ」 は、あべのハルカスの展望台「ハルカス300」のキャラクター「あべのべあ」をモチーフとしたAIロボットで、お客様の質問に対し自動で回答を生成し、日常会話やあべのハルカスの案内を行います。「AIあべのべあ」の導入と併せて、バーチャルあべのハルカス内に「あべのべあの部屋」をオープンしました。「あべのべあの部屋」を楽しんでいただくことに加え、同部屋内のカラフルな家具等のクラフトアイテムの購入促進にも繋げています。
将来的にはAIによる不動産接客など次世代のビジネスモデルの構築を目指すとしています。
参考:「AIあべのべあ」による会話型生成AIアバター接客を導入
まとめ
生成AIにはたくさんの種類があり、正しい使い方をすることで、業務効率・コスト削減が期待できます。しかし便利である一方、現代の技術では課題も多く、使用方法を間違えると、会社として大きなリスクを抱えてしまいます。
2023年以降もさまざまな生成AIサービスがリリースされていくでしょう。今後の発展に期待しつつ、現状の技術もしっかりと把握をしながらうまく活用していきましょう。