サービスデザインのプロセスやUX/CXとの違いを解説

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現代社会では商品やサービスなどモノが溢れ、顧客が商品を購入する際に質の高さだけでは選ばれにくくなり、顧客体験などが重視されるようになってきました。

そこで市場での競争優位性を確立していくためには、顧客体験を意識したり、継続して商品を提供できる組織や環境を作り上げたりするためのサービスデザインの導入が欠かせません。

本記事では、サービスデザインの概要やプロセス、混同しやすいUX(ユーザーエクスペリエンス)・CX(カスタマーエクスペリエンス)との違いをわかりやすく解説します。

目次(クリックで展開)

サービスデザインとは?
サービスデザインの6原則

UXデザインとCXデザインとの違い
UXデザインとサービスデザインの違い
CXデザインとサービスデザインの違い

サービスデザインの重要性とは

サービスデザインの設計プロセス4つ
【プロセス1】リサーチ
【プロセス2】アイディエーション
【プロセス3】プロトタイピング
【プロセス4】実装

サービスデザインで活用できる分析手法
カスタマージャーニーマップ
サービスブループリント
ユーザーテスト・ユーザビリティテスト

サービスデザインの導入事例
【事例1】エフコープ生協「コープのれいちゃん」
【事例2】虎ノ門ヒルズのインキュベーションセンター「ARCH」

まとめ

サービスデザインとは?

サービスデザインとは、顧客視点で商品やサービスの新たな価値を創造し、継続して提供できる運営体制を構築していくことを指します。

経済産業省の調査研究報告書では、以下のように提言しています。

「サービスデザイン」とは、「顧客体験のみならず、顧客体験を継続的に実現するための組織と仕組みをデザインすることで新たな価値を創出するための⽅法論」

引用元:我が国におけるサービスデザインの効果的な導入及び実践の 在り方に関する調査研究報告書

経済産業省の調査研究報告書で提言されているように、サービスデザインでは顧客体験だけではなく、商品やサービスを提供する企業の体制や、従業員や社内オペレーションを含めてサービス向上を目指していきます。

たとえば顧客体験を可視化するためには、顧客への定性調査やカスタマージャーニーマップの作成を実施するとよいでしょう。

また、商品やサービスを提供する企業側の体制を見直す際には、顧客がサービスを受けるときのプロセスとあわせて、サービスを提供する側の動きやシステムを可視化するサービスブループリントや、商品やサービスを取り巻く環境を可視化したステークホルダーマップを取り入れると役立ちます。

サービスデザインは、商品やサービスを提供する企業のほかにも、地域の活性化や働き方改革への活用も期待されています。

サービスデザインの6原則

サービスデザインの実践書である「This is Service Design Doing」では、サービスデザインの考え方として「サービスデザインの6原則」が提唱されています。

【サービスデザインの6原則】

原則 概要
1.人間中心 商品やサービスを利用する人の体験や経験を考慮すること
2.共働的であること さまざまな価値観や背景、役割を持つステークホルダーがサービスデザインのプロセスにおいて関わる必要がある
3.反復的であること 実装に向けて、実験や探索、改善を繰り返すこと
4.連続的であること サービスに関わる行動は相互関係があると考え、可視化して統合しなければいけない
5,リアルであること ユーザーのニーズを把握し、アイデアをもとにプロトタイプを作成し、目に見える現実的な形にする必要がある
6.ホリスティック(全体的)な視点 サービス全体を包括的に把握し、すべてのステークホルダーに対応しなければいけない

サービスデザインを取り入れる際には、サービスデザインの6原則を念頭に置いてアイデアを考えましょう。

UXデザインとCXデザインとの違い

サービスデザインと関連していて混同しやすいUXデザインと、CXデザインとの違いをそれぞれ解説します。

UXデザインとサービスデザインの違い

UXとは「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略語で、ユーザー体験を指し、Webサイトやアプリを利用して商品購入するといった一連の体験のことをいいます。

UXデザインとサービスデザインは、商品やサービスを提供する企業やステークホルダーなどを含めて考えるかどうかに大きな違いがあります。

たとえばUXデザインはユーザー体験にフォーカスしていますが、一方でサービスデザインはユーザー体験とあわせて、商品やサービスを提供する企業の体制や仕組みのデザインをおこないます。

UXデザインとサービスデザインをどちらも意識することで、顧客視点で商品・サービス開発や組織改善がしやすくなるでしょう。

関連記事 UIとUXの違いをわかりやすく解説|いまUI/UXが重要視される理由とは?

CXデザインとサービスデザインの違い

CXとは「Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)」の略語で、商品やサービスを認知して購入し、使い終わるまでの顧客体験を指します。またCXデザインは、顧客満足度を向上させるためのプロセスや施策のことをいいます。

サービスデザインとCXデザインは、どちらも顧客視点で捉える点は共通していますが、CXデザインはあくまで商品やサービスに対する体験に関することに対応範囲が限られています。そのため、サービスデザインのように従業員や組織などはCXデザインでは範囲外となります。

関連記事 顧客体験(CX)とは ~なぜ今注目?どう向上させる?~

サービスデザインの重要性とは

現代社会では、商品やサービスなどモノが市場にあふれているため、質が高いだけでは差別化できず、顧客から選ばれにくくなっています。

また、顧客の見る目が肥えたことで、商品やサービスの選定基準が高くなってきているため、商品やサービスのほかに、ユーザーサポートや企業風土などを含めて付加価値をつけることが求められているといえるでしょう。そのため、商品やサービス、企業を含めて顧客視点で考える、サービスデザインの重要性が高まっています。

さらにサービスデザインを導入することで、新たなビジネスのアイデアや、既存商品の改善にもつながることが期待されています。

関連記事 銀行・証券・保険業にサービスデザインが求められる理由とそのステップ

サービスデザインの設計プロセス4つ

サービスデザインを取り入れるには、どのようなプロセスが必要となるのでしょうか。

サービスデザインの設計プロセスは、以下のとおりです。

  • リサーチ
  • アイディエーション
  • プロトタイピング
  • 実装

サービスデザインの設計プロセスをひとつずつ解説します。

【プロセス1】リサーチ

サービスデザインで始めに取り組むプロセスは、リサーチです。まず、ユーザー行動の仮説を立て、リサーチしながら検証していきます。

サービスデザインのリサーチでは、顧客インサイトへの理解を深めることが重要です。ユーザーを理解するためには、ユーザーリサーチやカスタマージャーニーマップの作成などをおこない、顧客のモチベーションや行動、価値観を分析しましょう。

【プロセス2】アイディエーション

リサーチや顧客インサイトなどから、ユーザーの抱える問題解決方法を考えたり、新たなアイデアを生み出したりするプロセスをアイディエーションといいます。

出し合ったアイデアは、さまざまな視点から分析をおこない、アイデアを分類したり、統合したりしながらブラッシュアップを重ねていきましょう。

【プロセス3】プロトタイピング

ブラッシュアップしたアイデアは、成果物などのプロトタイプや、サービス設計図であるワイヤーフレームを作成して、検証していきます。

プロトタイピングを実施することで、商品やサービス化する前の不具合に気づけたり、顧客の反応から搭載する機能を見直したりすることが可能です。必要に応じて、プロトタイプをユーザーに使用してもらうユーザーテストや、使いやすさを検証するユーザビリティテストをおこなうとよいでしょう。

【プロセス4】実装

プロトタイピングをおこなった後は、プロトタイプを本番環境に実装します。実装する際には、運用体制や商品の生産体制など、顧客に提供するまでの環境を整備することも考慮しておかなければいけません。

サービスデザインで活用できる分析手法

サービスデザインをおこなう際に、役立つ分析手法を3つあげて解説していきます。

カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを認知して、購入するまでの流れを可視化したもので、サービスデザインにおいてはリサーチやアイディエーションのプロセスで役立ちます。

カスタマージャーニーマップを作成することで、ユーザーの行動を可視化できるため、顧客のフェーズにあわせてインサイトを理解した上でコンテンツを検討できます。また、アイデアを考える際の共通認識としても活用できます。

カスタマージャーニーマップを作るときは、ユーザーの感情の動きや、商品やサービスとの接点なども確認しておくとよいでしょう。

サービスブループリント

サービスブループリントは、商品やサービスを顧客に提供するまでの流れを、システムや提供者側の動きとあわせて可視化することを指します。

カスタマージャーニーマップでは顧客視点で一連の行動を可視化していきますが、サービスブループリントは顧客視点だけではなく、サービス設計や運営体制も含めて可視化することが可能です。サービスデザインでは、顧客視点で企業側の提供体制の改善なども必要となるため、サービスブループリントの実施が役立ちます。

ユーザーテスト・ユーザビリティテスト

ユーザーテストは、インタビューやワークショップなどを通してアイデアに対する理解を深めてもらい、アイデアがユーザーに受け入れてもらえるか調査することをいいます。

一方でユーザビリティテストは、ユーザーにプロトタイプを使ってもらい、操作感や使いやすさなどを検証することでUIの改善などに役立ちます。

どちらもプロトタイピングのプロセスで取り入れることで、商品やサービス完成後の手戻りを防いだり、顧客満足度の向上やUI改善したりすることが可能です。

関連記事 Webサイト/アプリのコンバージョン率を上げるユーザビリティ調査3ステップ

サービスデザインの導入事例

サービスデザインの成功事例を2つ紹介します。サービスデザインを取り入れて、新たなアイデアを創出したいときや、サービス設計をおこなう際にお役立てください。

【事例1】エフコープ生協「コープのれいちゃん」

エフコープ生活協同組合では、サービスデザインを取り入れ、組合員が楽しく食材を管理し、注文ができるアプリ「コープのれいちゃん」の開発に成功しました。

「コープのれいちゃん」は、要件定義やUIデザイン、設計などのさまざまな工程を経て約1年をかけて制作されています。なかでも5か月と多くの時間をかけたのが、サービスデザインの工程です。

サービスデザインは、以下の流れで実施しました。

  1. 現状理解
  2. 課題インタビュー
  3. 解決策の設定(ワークショップ)
  4. 解決策構築(プロトタイピング)
  5. 解決策の検証(ユーザビリティテスト)

先にアプリの機能やデザインを決めずに、アプリを通して組合員の「どのような課題を解決したいのか」や「どのように利用してもらいたいか」など、ユーザー視点でアイデア出しをおこないました。アイデアや仮説を見直すためにインタビューを実施してリアルな声を聞いたことで、企業とユーザーの乖離を防ぎ、組合員にとって利用する価値があるアプリの提供につなげています。

【事例2】虎ノ門ヒルズのインキュベーションセンター「ARCH」

森ビルが運営するインキュベーションセンター「ARCH」のシステム設計や開発、プロジェクト立ち上げをサービスデザインの視点でおこないました。

まず、システム開発に取り組む前に「ARCH」がどのような場として利用されるべきかをサービスデザインの観点から考え、施設のコンセプトにあわせてカスタマージャーニーマップを作成し、インサイトを整理したことでデジタルとアナログで設計すべきシステムを明確化しています。

また、ユーザー体験に最適化したUI設計をおこなったコミュニティシステムや、ユーザーとスタッフの状況が把握できる位置情報システムを設計し、ユーザー同士のコミュニケーション活性化などを実現することに成功しました。

まとめ

現在、世の中に商品が溢れており、商品を購入する際に質の高さだけでは選ばれなくなりつつあります。

そのため市場での競争優位性を確立し、顧客に選ばれる商品やサービスを提供していくためには、顧客視点で継続して商品やサービスを提供できるような組織や環境を作り上げ、顧客体験を意識したサービスデザインを取り入れることが重要です。

テックファームでは、事業創発支援から要件定義までを中心としたサービスデザインを提供し、専門知識を持ったスタッフがチームを組み、サービス設計をしてプロジェクト成功へと導きます。

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