アメリカリテール事例「返品ビジネス」の実情とは?

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日本では「返品」と聞くとサービス提供側の企業も、消費者にとってもネガティブなイメージを抱くことが多いかもしれません。

しかし、アメリカでは、返品文化をビジネスの大きなチャンスと捉え、新規顧客・リピート顧客を獲得し、売上を増加させている企業があります。

今回の記事では、新規顧客ならびに既存顧客を囲い込む手法として注目される「アメリカの返品ビジネス」について、現地アメリカ ラスベガス在住でテックファームグループ会社 Prism Solutions Inc.所属メンバーが紹介してくれました。

Prism Solutions Inc.のブログでは、アメリカ現地のおもしろいトピックや生活情報、カジノ業界の話題、アメリカのIT サービスやテクノロジー、ビジネスについてアップしています。興味がある方は、是非、ご覧ください。


アメリカの返品ビジネスの実情

返品大国アメリカではお買い物に行く際に「あ~!この店の返品忘れた!」という言葉が良く飛び交います。

クリスマスの翌日はお店にいくと返品の行列が・・・(欲しいものもらえなかったから返品)というのはよくある風景。普通の日でも2人に一人は購入と同時に返品があるくらい。

アメリカの路面店購入品の5~10%が返品されます。オンラインは30%の返品率

どうしてそんなに返品するの?アメリカン消費者はわがままなの???

Photo by Alexander Dummer from Pexels

そう、わがまま・・・それは確かです。気に入らないものにお金は一銭も払いません。しかし、この返品はアメリカンに古くから根付く「リテール戦略からできたリテール文化」でもあるのです。

そんなに返品が簡単なの?」基本的になんでも返品できます。一般的な返品期間は30~90日でレシートがあればカードや現金で返金もしくはお店のクレジットカードを使ったり、メンバーシップカードを持っていればレシートもなしで返品可能。30~90日を超えた場合はそのお店のクレジットとして返金してくれます。

お店でOKな返品理由:

コストコのアップルパイが美味しくなかったから半分食べたけど返品

コーヒーメーカー買ったけど音が思ったよりうるさいから返品

ソファー買ったけど配達後みたら色が気にいらないから返品

洋服買って来てみたけど、やっぱりやーめた。返品

私のお気に入りはホームセンターに訪れた横のレジのおばちゃん。カートに枯れ果てたお花乗せて来店。「あんたとこのお花枯れちゃったわよー。だから返品にきたわ」「よく枯れるわよ、このお花よくないわ」・・・笑。

最近では車も7日間なら返品可能。アマゾンなんて軽くて安い商品の場合は返品送料の方がもったいないから返品は結構です。返金だけするので商品は処分するかチャリティーに寄付してください・・・と。

返品がリピーターに繋がる 再来店を促す方法

となんでもありですが・・・。実はこの返品客は大事な大事な「再来客」つまり知らない間に「リピーター」獲得。

以前はアメリカの返品は「怒ってブランド離れをするよりは心地よく返品を」「お客様満足度アップに返品受付」「返品から傾向察知」「うちの商品には自信があります」というブランディング、マーケティング戦略でしたが今や返品はついで買いで売り上げ増加戦略

アマゾン独占EC市場が加速、オムニ戦略で困った路面店リテーラーはとにかく路面店に足を運んでくれた顧客からの売り上げ獲得を目指しているのです。だから

  1. 返品レジまでには陳列ケースが並び、ついで買い製品を陳列
  2. 返品とオンライン購入路面ピックアップカウンターは店の奥
  3. 返品してくれたら当日有効クーポン発行

となるわけです。ちなみに返品が簡単な方が顧客のリピーター率が高い!消費者の多くは購入前に返品ポリシーを確認します。全米大手のコールズ(Kohl’s)ではわかりやすいほどこれを実行、路面店舗の厳しい経営状況を立て直し中。

Photo by Tim Douglas from Pexels

ケーススタディ:コールズ(Kohl’s)の場合

路面店舗への客足が遠のいていたコールズ。2019年頃からアマゾンと提携してコールズ店舗内にアマゾン製品返品デスクを設置。アマゾン返却客のコールズ誘導を目指しました。

  • デスクはもちろん店の奥深く
  • 返品は梱包の必要なく品物そのまま持って行くだけ
  • 返品がおわるとコールズの当日有効クーポン(しかも20%OFF!)発行

これだけで2020年にはコールズは200万人の新規顧客を獲得したのです。まさに返品戦略!(しかも敵とみていたオンラインリテーラーと提携)

先日、日本では「返品はできないものと考えましょう」という記事をみかけましたが、どうでしょう?日本でも返品リテーラー戦略で顧客獲得戦略を試してみませんか?


まとめ

アメリカの返品ビジネスはいかがでしたでしょうか?

日本では、返品と聞くと企業側・消費者側にとっても良い印象を与えません。しかしアメリカでは、企業は返品を1つのビジネスチャンスと捉えられており、返品で来店する顧客に対してさまざまな施策が行われていることが分かります。そして、その施策によりリピート来店が促されたり、競合他社と提携することで新規顧客の獲得に繋げています。

また、消費者にとっても、気に入らなければ確実に返品できるという当たり前が、商品購入時の安心感に繋がり、日本ほどネガティブな印象がないのかもしれません。

ECサイトの発展などにより、ますますリテール業界での競争は激化しています。店舗における新規顧客の獲得やリピート顧客を促進させることに多くの企業が課題を感じている可能性があります。新たな店舗の来店促進の施策として、海外の取り組みを参考にしてみてはいかがでしょうか。