現代はIT技術の発展が目まぐるしく、誰もがPCやスマートフォンを当たり前のように所有している時代です。企業側はユーザーの需要に応えるため、多くのソフトウェアを開発、リリースしています。
便利になる一方で、企業側はユーザーの様々なニーズに応え続けなければ生き残れない厳しい時代でもあります。
この競争が激しい時代の中で注目されているのが「マイクロサービス」です。本記事では、メジャーになりつつあるソフトウェア開発技法のマイクロサービスについて紹介します。
<目次>
いま注目されている開発技法、マイクロサービス(マイクロサービスアーキテクチャ)
・マイクロサービスの対極、モノリシックとの違いとは?
マイクロサービスが注目されている理由とは?
・テクノロジーの進化に伴うニーズの多様化
・コロナショックにより、デジタル化の重要性が高まった
DXの推進が後押しするマイクロサービスの需要拡大
・マイクロサービスが推奨される背景「2025年の崖」とは?
いま注目されている開発技法、マイクロサービス(マイクロサービスアーキテクチャ)
マイクロサービスとは、一言でいうと「複数のサービスの集合体」です。
小さなサービスを組み合わせ、統合することにより一つの大きなサービスを開発する技法です。
この開発技法なら、一つひとつの小さなサービスに要する開発時間は短く、さらに並行して開発を進めることができるため、全体の開発期間を短縮することができます。また、元は小さなサービスの集合体なので、一部のサービスの改修を実施する際には、システム全体に大きな影響を与えることなく進めることが可能となる点も非常に魅力的です。
マイクロサービスの対極、モノリシックとの違いとは?
小さなサービスを組み合わせていくマイクロサービスですが、それとは反対に、一つの機器やOSにアプリケーションを開発することをモノリシックと言います。
マイクロサービスは、まだ新しい開発技法なので一般的に普及しているのはモノリシックになります。モノリシックでは一つの機器やOSを取り扱えば良いので、管理の面では優秀ですが、サービスの改修や機能の追加等のメンテナンスを実施した場合、全てのサービスに影響が出てしまいます。そのため、工数や負担が増えてしまうというデメリットが存在します。
マイクロサービスが注目されている理由とは?
新しい開発技法であるマイクロサービスは様々な企業が導入しています。なぜマイクロサービスが注目されているのかというと、世の中の急速なIT化が要因となっています。今回は、その中で大きな理由となってる2つを紹介します。
テクノロジーの進化に伴うニーズの多様化
現代の企業では多くのIT技術を導入し、業務を効率化、自動化しています。ビジネスの速度は加速し、数年前では考えられないようなスピードで様々なサービスが展開されています。しかし、これによって顧客のニーズに応えなければならないスピードも格段に上がっているのです。
たとえば商品を販売する際、店舗で直接販売するなら、顧客からの要望や意見は店員と顧客とのやり取りだけで完結します。ところが、ECサイトの場合は誰でもどこからでも店や商品を評価したり、レビューを書くことができたり、それを多くの人に共有したりすることができるのです。そのため、企業は速やかに要望に応えなければ顧客から不信感を持たれ、大きな不安を与えてしまうことになるのです。
マイクロサービスなら開発を生産的に進めることができ、ニーズに応えるまでの期間を短縮することができます。
コロナショックにより、デジタル化の重要性が高まった
新型コロナウイルスの影響により、人との接触を避ける生活を余儀なくされました。その中で、社会や経済を回していくためにデジタル技術の重要性が急速に高まったのです。
店舗での販売はECサイトに移行する等、生活の変化に伴い様々なサービスがデジタル化していくこととなりました。
そのため、柔軟性を持つマイクロサービスはこのような変化に強く、また開発期間の観点からも注目され、結果的に後押しされることになったのです。
DXの推進が後押しするマイクロサービスの需要拡大
政府が企業に対して「DX戦略」を推進しています。最近のニュースや記事では「DX」をテーマに取り上げることが珍しくない時代となりました。
そのため、DX戦略の導入を検討している企業が増加し、マイクロサービスの需要拡大に繋がっています。
マイクロサービスが推奨される背景「2025年の崖」とは?
経済産業省では、DXに関するレポートの中で「2025年の崖」という言葉を使用しています。この「2025年の崖」というのは、もしもDXに関する様々な課題を克服できず、DX導入が遅れてしまう状況が続いてしまえば、2025年以降には現在の3倍にあたる年間12兆円の経済損失が生じてしまう可能性があるという問題です。
この「2025年の崖」に対して、マイクロサービスの活用が推奨されているのです。開発速度や柔軟性が評価されているため、国の施策としてもマイクロサービスが取り上げられているのです。
マイクロサービスを導入するために
ここまで解説してきたように、マイクロサービスは注目されている最先端技術であり、現代に適した開発技法です。しかしながら、マイクロサービスにも注意すべき点があります。
開発するサービスや企業によっては、従来のモノリシックを採用した方が良い場合も存在します。
だからこそ、マイクロサービスの導入を検討する際には、メリットとデメリットを把握しておく必要があるのです。ユーザーのニーズに応えるための手段として、マイクロサービスを取り入れるべきか判断することが大切です。
マイクロサービスのメリット
マイクロサービスの最大のメリットは「柔軟性」です。なぜなら、新しい機能の導入や、他のサービスとは違う開発言語の採用を容易にできるからです。
マイクロサービスは小さなサービスの集合体であり、サービス同士の強い依存関係はありません。たとえば、新機能を導入する際には一つのサービスに対して改修をすれば良いので、アプリケーション全体への影響が少ないのです。また、違う開発言語を利用したとしても問題はありません。
だからこそ、アプリケーション開発をよりスムーズに行うことができるのです。
マイクロサービスのデメリット
マイクロサービスの最大のデメリットは「複雑化」です。小さなサービスの集合体であり、サービスにより違う技術や開発言語を取り入れられるため複雑化しやすくなります。これに伴い、サービスの運用監視にかかるコストは高くなってしまいます。
また、開発する際には全てのサービス内容を把握し、統括できる人物が必要となります。高い技術力と豊富な知識、優れたマネジメント力を持つ人材がいなければ、マイクロサービスの導入を成功させることは難しいでしょう。
マイクロサービスを導入している事例を紹介
実際にマイクロサービスを導入している企業を紹介します。
Amazon
今では誰もが利用しているオンラインショップの「Amazon」。
Amazonも最初は一つのシステムでサービスを管理しているモノリシックでした。しかし、急成長を遂げていく中でモノリシック特有のメンテナンスを実施する際の負担の大きさ、機能追加に伴う工数の高さがネックとなっていきました。
そこでマイクロサービスへと移行したのです。その結果、大きなサービス改修の負担を軽減し、機能追加等の工数を減らすことが可能となったのです。
ZOZOTOWN
株式会社ZOZOでは、「ZOZOTOWN」のシステムリプレイスを実施する際、モノリシックからマイクロサービスに移行しています。モノリシックを利用していたため、機能改修による影響の大きさ等、モノリシックならではの課題を抱えていました。
マイクロサービスに移行することによって課題を解決しつつ、開発速度の改善や柔軟性、耐障害性等を期待してシステムをマイクロサービス化しています。
まとめ〜デメリットを理解した上でマイクロサービスを検討すべき〜
今回は最先端技術のマイクロサービスを解説しました。ニーズが多様化する現代に適した開発技法であることはおわかりいただけたでしょうか。
テクノロジーは活用することによって、今までにない効率やスピードでビジネスを展開することができます。今回紹介した多くのメリットを得るためにも、大手の企業も導入しているマイクロサービスを是非検討してみてください。