
MAやCRM、SFAなどさまざまなITツールの活用により、日々の営業活動で効率的かつ効果的な施策が打てるようになってきています。
なかでも、見込み顧客の獲得や育成など、マーケティングを支援するツールとして注目されているのが、MA(マーケティングオートメーション)です。
本記事では、MAツールの概要や導入することのメリット、どのような課題を解決できるのかを解説します。MAツールの導入を検討する企業担当者の方は、是非ご一読ください。
MA(マーケティングオートメーション)とは?
・MA(マーケティングオートメーション)が必要とされる理由
・CRMとSFAとの関係性
MA(マーケティングオートメーション)の主な機能5つ
・【機能1】見込み顧客管理・リスト作成
・【機能2】顧客のスコアリング
・【機能3】メール配信
・【機能4】問い合わせフォーム作成
・【機能5】顧客行動のトラッキング
MA(マーケティングオートメーション)を導入するメリット4つ
・【メリット1】見込み顧客の取りこぼし防止
・【メリット2】見込み顧客の購買意欲向上
・【メリット3】マーケティング業務の効率化
・【メリット4】営業の属人化防止
MA(マーケティングオートメーション)を導入するデメリット3つ
・【デメリット1】データのクレンジングが必要
・【デメリット2】費用対効果が出るまでに時間を要する
・【デメリット3】使いこなすための教育や運用体制の準備
MA(マーケティングオートメーション)の導入に失敗しないための注意点3つ
・【注意点1】運用体制を導入前に整える
・【注意点2】カスタマージャーニーマップの作成
・【注意点3】KPI・KGIを設定する
MA(マーケティングオートメーション)とは?
MA(マーケティングオートメーション)とは、「Marketing Automation」の頭文字を取った略語で、見込み顧客を獲得するためのリードジェネレーションや、見込み顧客を育成するためのリードナーチャリングなど、マーケティング業務を自動化できるツールです。
自社サイトを訪問したユーザーをリスト化したり、商品やサービスの検討フェーズにあわせてメールを配信したりできるため、見込み顧客にあわせて最適な施策を実施したいときに役立ちます。
見込み顧客の獲得や、見込み顧客の行動の可視化などができるため、MAツールを導入することでマーケティング業務の効率化にもつながるわけです。
MA(マーケティングオートメーション)が必要とされる理由
ツールの導入を検討する際に、事前にオンライン上で情報収集してから比較し、ベンダーに問い合わせする方も多いのではないでしょうか。
近年ではMAツールなどを活用して、Webサイトへの閲覧や問い合わせなど顧客の行動を可視化することで、顧客の検討フェーズが把握できるようになってきました。
顧客の検討フェーズにあわせて施策を実施することは、取りこぼしを防ぎ、受注確度を高めることにつながります。今後さらにMAツールを活用して、見込み顧客を管理し、顧客行動を把握することが重要となっていくでしょう。
富士キメラ総研の調査によると、MAツールを含む「CX/デジタルマーケティング」のソフトウェアの国内市場は、2026年度は3,266億円を見込んでおり、2021年度と比較して151.5%になると予測されています。今後もMAツールの導入がすすんでいく可能性が高いでしょう。
CRMとSFAとの関係性
MAツールを導入するときに、あわせて検討されることが多いツールが、SFAとCRMです。どちらもマーケティングに関わるツールのためMAと混同しやすいものの、以下の表のように活用する場面や機能に違いがあります。
【MA・SFA・CRMの違い】
ツール |
MA マーケティングオートメーション |
SFA
営業支援システム |
CRM 顧客関係管理 |
活用 場面 |
・見込み顧客の獲得
・見込み顧客の育成 |
・商談から成約までの対応管理
・営業の進捗管理 |
・既存顧客のサポート対応
・プロモーション管理 |
導入 目的 |
・リードジェネレーション
・リードナーチャリング ・マーケティングの自動化 |
・営業活動の強化
・業務効率化や業務改善 |
・カスタマーサクセス、顧客対応の質向上
・顧客対応の効率化 |
主な 機能 |
・見込み顧客管理・リスト作成
・顧客のスコアリング ・メール配信 ・問い合わせフォーム作成 ・顧客行動のトラッキング |
・顧客管理
・案件管理 ・行動管理 ・予実管理 ・名刺管理 ・ToDoリスト |
・顧客の情報管理
・顧客の行動分析 ・マーケティング支援 ・プロモーション管理 ・問い合わせ管理 |
たとえば、MAツールで見込み顧客の獲得や育成などをおこない、SFAツールを活用して商談管理など営業活動を支援することで成約率を向上させます。成約した既存顧客の注文や問い合わせ履歴など、顧客とのこれまでの関わりを情報として管理できるのがCRMツールです。
それぞれ顧客行動の上で活用される場面が違うため、マーケティングを強化したい施策内容や、効率化したい業務などを検討して、自社にあったツールを選定するとよいでしょう。
CRMとSFAについては、「CRMとSFAの違いとは?機能や導入メリットをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。是非、あわせてご覧ください。
MA(マーケティングオートメーション)の主な機能5つ
MAは、商談や成約につなげるために必要となる、見込み顧客の獲得や育成などのマーケティング業務を自動化してくれるツールです。
マーケティングに役立つ機能のなかから、以下の5つの機能を紹介します。
見込み顧客管理・リスト作成
顧客のスコアリング
メール配信
問い合わせフォーム作成
顧客行動のトラッキング
それでは、1つずつ解説しましょう。
【機能1】見込み顧客管理・リスト作成
MAツールでは、自社商品の問い合わせや資料請求したユーザーや、Webサイトを閲覧しているユーザーなど見込み顧客の情報を一元管理できます。たとえば、以下の情報をまとめてリスト化することが可能です。
企業情報
メール配信履歴
Webサイトへのアクセスログ
ウェビナー参加・資料ダウンロード履歴
商談履歴 など
MAツールによって項目に違いがありますが、見込み顧客が商品やサービスに関して、どの程度興味や関心を持っているのか判断するための情報を一元管理できます。
【機能2】顧客のスコアリング
商品やサービスに対する検討フェーズにあわせて、見込み顧客に点数をつけてスコアリングできる機能があります。
たとえば、資料のダウンロードは3点、メールの開封は1点などユーザーアクションによって点数を決めておき、点数が高いユーザーは商品やサービスに対して検討度が高いと判断できます。
顧客のスコアリングからホットリードがわかるため、優先的に営業すべき見込み顧客を絞りだしたり、見込み顧客にあわせてマーケティング施策を柔軟に変えたりすることが可能です。
【機能3】メール配信
メール配信機能は、MAツールに登録されている見込み顧客に対してメール配信することができ、顧客と接触する機会を増やしたいときに役立ちます。
事前にシナリオ設計しておけば、見込み顧客の検討度やアクションにあわせて配信するメールの内容を出し分けできるので、メールマーケティングの実施を検討している場合に最適です。
【機能4】問い合わせフォーム作成
MAツールのなかには、問い合わせフォームをかんたんに作成できる機能がついているツールが多くあります。作成した問い合わせフォームは、MAツールと連携しているため、ユーザーがフォームに入力した情報を自動で蓄積することが可能です。情報を入力する手間が省けるため、業務効率化にもつながります。
MAツールによっては、資料請求やキャンペーン、セミナー申し込みなど用途にあわせてフォームを変更できたり、LP(ランディングページ)を作成できたりする機能がついているものもあります。
【機能5】顧客行動のトラッキング
Webサイト上での顧客行動をトラッキングできるため、閲覧履歴などから顧客の興味や関心を把握できます。
たとえば、ウェビナーに参加したユーザーが資料請求のページを数回にわたって閲覧しているなどの情報が視覚化できるわけです。興味を持っている商品やサービスがわかるため、顧客にあわせて最適なアプローチができるようになるので、受注確度も高まるでしょう。また、MAツールに蓄積した顧客情報を営業担当者に共有して、営業に活用してもらうこともできます。
MA(マーケティングオートメーション)を導入するメリット4つ
MAツールを導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。MAツールを導入するメリットとしては、以下の4つがあげられます。
見込み顧客の取りこぼし防止
見込み顧客の購買意欲向上
マーケティング業務の効率化
営業の属人化防止
MAツールを導入するメリットをそれぞれ解説します。
【メリット1】見込み顧客の取りこぼし防止
MAツールでは、見込み顧客の行動などからスコアリングして、優先してアプローチすべきユーザーを判別することが可能です。そのため、見込み顧客の取りこぼしが起きにくい仕組みがあります。
たとえば、以前資料請求したものの成約につながらなかったユーザーが、商品やサービスページを複数回閲覧していたり、メールを開封していたりとユーザーニーズの変化があった場合も把握できます。
ユーザーが再度関心を持っていることに気づかず、放置してしまうと訴求するタイミングを逃し、最終的に競合商品を購入してしまうケースもあるわけです。
MAツールを導入することでユーザーの行動が把握できるようになるため、見込み顧客の取りこぼしの防止につながるでしょう。
【メリット2】見込み顧客の購買意欲向上
見込み顧客の検討度によってグループ化できるため、検討フェーズにあわせて最適な施策を実施して購買意欲を高めることができます。
たとえば資料請求したばかりの見込み顧客と、すでに商談をしていて購入の検討をしている顧客に対して同じ内容の割引キャンペーンについてメール配信してしまうと、場合によっては顧客の信頼を失いかねません。
手動で見込み顧客の検討フェーズをひとり一人洗い出してリスト化するには膨大な時間がかかりますが、MAツールを活用すれば自動で振り分けできます。
【メリット3】マーケティング業務の効率化
資料請求や問い合わせがあった見込み顧客をリストアップし、顧客にあわせてメールを送信するなど、マーケティング業務を少ない人員で対応するには、多くの時間を要してしまうものです。
しかしMAツールを導入することで、見込み顧客に関する情報の入力やリスト化、メール配信などを自動で対応できます。運用体制が整っていれば、マーケティング業務の対応を大幅に削減して効率化できるでしょう。
【メリット4】営業の属人化防止
見込み顧客に対する営業活動は、担当者によって対応にバラつきが出やすく、営業が属人化しやすい問題があります。
MAツールを活用することで、顧客に関する情報や対応履歴を共有することが可能です。さらに、受注確度が高い顧客を営業担当者につなげられるため、担当者によって成約率の差がひらいてしまうことも起きにくくなるでしょう。
MA(マーケティングオートメーション)を導入するデメリット3つ
MAツールの導入でマーケティング業務の効率化などのメリットがあるものの、一方で導入するデメリットもあります。
MAツールを導入するデメリットは、以下の3つです。
データのクレンジングが必要
費用対効果が出るまでに時間を要する
使いこなすための教育や運用体制の準備
導入するデメリットを解説していきましょう。
【デメリット1】データのクレンジングが必要
MAツールを効果的に活用するためには、顧客情報をクレンジングする必要があります。たとえば、同一人物が重複登録されていたり、全角と半角が統一されていなかったりなど、顧客に関する情報を整えなければいけません。
とくにMAツールを導入する際には、名刺情報など入力されているデータの確認や、データの移行作業が必要です。入力した情報に誤りがあると、メール配信時の顧客の氏名が間違っているなどの問題が発生してしまいます。
メール配信などMAツールの機能を活用するためには、導入後も定期的にデータのクレンジングをしていくことが大切です。
【デメリット2】費用対効果が出るまでに時間を要する
一般的にMAツールを導入してから費用対効果が出るまでには、中長期的な時間を要します。MAツールを導入する目的としては、受注確度の高いリードを創出し、成約につなげることがあげられます。
しかし、受注確度の高いリードを創出するためには、まずはリード数を集めなければいけません。そのためには、セミナー開催やメールマーケティングなど、さまざまな施策の実施が必要です。
MAツールを導入する前に、リード数の獲得するための施策も含め、成約までにどの程度の単価がかかるのかを把握しておきます。また、導入前には時間がかかることを念頭において稟議を通すように留意するとよいでしょう。
【デメリット3】使いこなすための教育や運用体制の準備
MAツールを導入するだけでは、うまく使いこなせず、思ったような効果が発揮できません。MAツールを活用するためには、運用体制のあり方を考え、従業員が使いこなせるようにマニュアルを用意するなどの準備が必要です。
MAツールの問い合わせ担当者を任命したり、導入を推進するチームを作ったりするなどうまく活用するための環境を整えましょう。
MA(マーケティングオートメーション)の導入に失敗しないための注意点3つ
MAツールの導入を成功させるためには、事前に準備をしておくことが大切です。MAツールを導入する際には、以下の3点に気をつけましょう。
運用体制を導入前に整える
カスタマージャーニーの作成
KPI・KGIを設定する
それでは、導入するときの注意点をひとつずつ解説します。
【注意点1】運用体制を導入前に整える
MAツールの導入を成功させるためには、運用体制を整えておくことが重要です。MAツールには、顧客情報が蓄積されていくので、どのように活用するのかをあらかじめ決めておかなければいけません。
社内体制によっては、部署をまたいでMAツールを利用する場合もあります。部署間で連携できていないと、情報を活用したマーケティング施策が実施できず、MAツールの機能を活かしきれません。運用体制のすり合わせをおこない、リード獲得や商談化につながる環境を作りましょう。
【注意点2】カスタマージャーニーマップの作成
見込み顧客の検討フェーズにあわせて、どのような施策を実施するのか選定したり、シナリオ設計したりするためには、顧客の行動を理解しておく必要があります。
顧客が自社の商品やサービスを認知し、比較検討して成約するまでの行動を可視化したものがカスタマージャーニーマップです。
見込み顧客の行動を把握するためには、まずカスタマージャーニーマップを作成し、顧客行動に対する認識を一致させた上で施策を検討しましょう。見込み顧客の検討度にあわせた施策を実施することで、購入意欲を高められます。
【注意点3】KPI・KGIを設定する
MAツールをやみくもに運用するだけでは導入した効果を実感できません。導入後に運用しながら体制や業務内容などを見直し、改善していくことで効果が得られます。
MAの導入効果を検証するためには、まず定量的に計測できるKPI(重要業績評価指標)とKGI(重要目標達成指標)を設定しましょう。KGIとは、最終目標となる指標を指し、KPIはKGIを達成するための中間目標となる指標をいいます。
たとえば、MAツールの導入であれば最終目標となるKGIに商談率やリード数などを設定し、中間目標となるKPIには資料のダウンロード数や問い合わせ数、メール開封率などを設定します。
目標を設定することで、うまく運用できていない原因を見つけられるため、運用体制を改善していくことが可能です。
KPI・KGIについては「【IR資料から見る】有名メディアのKPIと成長戦略」で解説しています。是非、ご一読ください。
まとめ
MA(マーケティングオートメーション)とは、見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)や、見込み顧客育成(リードナーチャリング)など、マーケティング業務を支援し、自動化するツールです。
自社サイトを訪問したユーザーや、メールを開封したユーザーをリスト化し、ユーザー行動を把握できます。さらに、見込み顧客の検討度にあわせて施策を実施できるため、マーケティング業務の効率化に役立ちます。
ただしMAツールの導入を成功させるためには、運用体制の整備やカスタマージャーニーマップの作成などが必要です。自社での運用方法を検討してからMAツールを導入し、質の高いリードの獲得につなげましょう。