アンチマネーロンダリング国際認定資格「CAMS」合格ストーリー

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ラスベガスカジノ業界では「AML(Anti-Money Laundering=アンチマネーロンダリング」つまりマネーロンダリング対策は、「超」重要課題。

ちなみにマネーロンダリングとは犯罪資金をカジノでの金銭取引や銀行取引などありとあらゆる手段で洗浄し、犯罪資金のでどころを隠す犯罪行為。

3分でわかるマネーロンダリング』で簡単に説明しています。

そしてラスベガスの大カジノ達が恐れるのはこのマネロンへの対策を怠っていると見なされ連邦政府から罰金を支払わされること。その金額も桁違い。5億、8億の罰金はよくある罰金でベネチアンカジノは47億円も支払った!売上金も没収!と自分のカジノでマネロンを見逃すととんだ損害を被ることに。

そんな業界の影響を受け私達も慌ててCAMSの取得へ。

テックファームグループの社員がナゼCAMSを取得?

プリズムはカジノへ導入するモバイルペイメントシステムに携わっている開発会社としてマネロンの専門知識を持つことは業界では最低条件とされている。テックファームにおいても金融関係のお客様を多く抱え、さらに金融関連プロジェクトが増えてくることを想定している。そこでプロジェクトに携わるメンバーは最新のマネロン知識を持って業務に臨まなければならない。
(と上司からの指令。先頭をきってプリズムのアヤとエンジニア井口がCAMS取得を目指すことに)

CAMS(キャムス)とは何の資格?

キャ・ムズ?と首をかしげる一般人も多いが、知るヒトぞ知るニッチな「国際資格」。だからこそ貴重で重宝されている。日本では「公認AMLスペシャリスト」ともよばれていて、ACAMS®(Association of Certified Anti-Money Laundering Specialists)が認定するマネーロンダリング対策専門家の資格。ACAMSの営業さんによると「CAMS資格をとるだけでみんな平均のお給料がドンと上がっているのよ」とか・・。

関連記事 【カジノ事業者向け】AML(Anti-Money Laundering)セミナーレポート

CAMS取得体験記その1(アヤ)

CAMSは今日申し込んですぐにとれるわけではなく。合計かれこれ7~8ヶ月はかかりました。

まず「ACAMS」に入会、そして「受験資格」に達する30ポイントが溜まったら初めて受験資格がもらえます。

受験資格がとれたら「申込み審査」へ。大学の卒業証書のコピーを添えて申込書を送り、2週間程の申し込み適正審査を待ちます。と、ここまではスムーズ。そしてなんだか厳重な審査、何事もとてもカジュアルなアメリカでもさすが金融系はきっちりしていると思いきや、、

分厚いテキスト。みんな過去問シェアしたくないらしく。 過去問ググってもでてこない。

ここからやっぱり「アメリカン」な方向へ。。。

試験当日、朝8時、スタバでコーヒー2杯のみながら最後の詰め込み暗記後試験会場へ。

ちなみに、今日の試験受かる気「ゼロ」。私は「試験」が大嫌い。人生ここまで試験というものを出来る限り避けてきた。今回も上司が私がキャムスを受けることを忘れてくれないものだろうか、となんだかんだ試験日を延期し続けてきたけれど。。忘れてはもらえなかった。もう延期も限界、しかたなく今日試験会場に参上。

「試験会場」という雰囲気とはかけ離れた10畳程の小部屋へ。中はなんだかムシっと。ちょっと湿気た匂いもする。。(汗くさッ。)各ブースからは「ウィーンカラカラ・・」と嫌な音がする一昔前のパソコンが並ぶ。受付の彼女もさすがに「扇風機つける?」とすすめてくれた。

(あー、今日は受かる気しない。)

さて、部屋には私一人。扇風機の方向調整バッチリ!集中していよいよ試験開始!

 

「何かあったら手をあげてね、ビデオでみているから。Good luck !」と受付の彼女は去った。

ぶーーーんという扇風機の音とカチっ、カチっというクリックの音のみでシーーーン。

「はぁ・・。全部5択だけど答えが当たってる気がしない。」

問題を慎重に解きはじめて10問目「ん?」画面がフリーズし始めた、と思ったら完全フリーズ。

右手を上げて受付の彼女を待つ。受付の彼女来ない(気付いていない?ちゃんと見てる?)

しょうがなく部屋をでて受付の彼女の元へ。「もぅ、またフリーズ?カモンカモン、早く立ち上がってよ」といいながらテストプログラムを立ち上げ直し。(よくあることのようだ)。

「じゃ、また何かあったら手を上げてね」といってまた彼女は部屋を去る(っていうか見てないでしょ?)

⇒フリーズ⇒私手を挙げる⇒めっちゃ手を振ってみる⇒受付の彼女来ない⇒部屋をでて受付の彼女の元へ再び。

手をふってもふっても気づかないハズだ。。

しばらくして。。最後のトドメ。プログラムが完全に落ちた。

ここで初めて「昨日も同じ症状だったのよ、またサーバー落ちたみたい。」と受付の彼女。

(サーバー落ちた?試験中止念力が伝わったのか?念ずるものは。。何でしたっけ)

そして「どうする?もう今日は止めてまた違う日に来て一からやり直せば?」と受付の彼女。

(☆へ?もう一回やり直せるの?いやいやー、久しぶりに神さま降臨。神さまありがとうーー!今日は受かる気が全くしなかったの!)

「えー、もう3時間くらい問題解いてきたのに。。」ちょっと迷惑をかけられたように振る舞いつつ、、

サーバーが復帰してしまわない間にささっーーと退散「じゃあ受付の彼女、また来週くるわ!」

上司にはちゃんとテストセンターのサーバーがダウンして「しょうがなく」引き上げたことを説明。

そこからまた1週間程詰め込み猛勉強をした後見事合格!ギリギリセーフの点数でしたが間違いなく合格。

上司からは「おめでとうぅぅ!」とお言葉が、同時に「ミニマムエフォートでギリギリの点数で合格ってあやさんらしいね!」と。(あの、それはお褒めのお言葉でしょうか?ちょっと気になりますが)ま、合格は合格です。そして一ヶ月後?わすれたころに立派なサティフィケイトとバッジ!(写真)が届きめでたくCAMSに!

バッジがレアすぎて付けていくところがないけれど。なんかカッコいい!

 

ちなみにこちらがCAMSトレーニング内容の一部。

<訳>

  1. 顧問弁護士を呼びましょう
    (はい、ここは専門家にハンドルしてもらうのが一番!先生よろしくお願いします)
  2. 捜索令状を呼んでスコープを理解する
    (これは実際FBIエージェント達の前で読むのは勇気がいりそうです)
  3. 捜索令状のコピーを依頼する
    (これも勇気ある行動です)
  4. 捜索令状の根拠を示す書類を見せてもらいましょう。しかしエージェント達にこれを見せる義務はありません
    (そんな義務はない!と言われたら「あ、はい。」とおとなしく。潔く「ガサ入れの根拠はなんだ?」とはとても言えません。映画じゃあるまいし)
  5. ガサ入れのその場に居とどまること。
    (自分の会社へのガサ入れ、、見守りましょう)
  6. エージェントが没収した書類が何かを記録しておくこと
    (はい、ちょっとそこのエージェントさん、それは何の書類箱につめてますか・・?)
  7. エージェントに没収した書類の記録のコピーをもらいましょう
    極力自分でメモってさっさとガサ入れを終了していただきたい)
  8. FBIエージェントの氏名、部署名などを書き留めること。
    (これもまたエージェントの機嫌を逆撫でしないようやんわりと)

マネロンの疑いがある金融取引の見極め方だけでなく、例えば「自分の会社にFBIからガサ入れ!捜索令状を叩きつけられた!」場合の対処法も学びます。

これは実際のトレーニングマテリアルの一部抜粋ですが、これを実際全てこの通りに行うと相当エージェント達の気分を逆撫でするのでは、、と思いますが。こういった対応までしっかりとトレーニングされます。

これは避けたいシナリオですが、こういったガサ入れに至らないよう、日々しっかりとマネロン対策を行うことがCAMSの指名です。

さいごに

CAMSの勉強を通して、日本がマネロン対策において先進国諸国よりもはるかに遅れをとっていることを痛感しました。そのため日本はその遅れを取り戻すべく、また日本カジノでのマネロン対策準備の為にもこれからより厳しいマネロン対策への取り組みを推進していくと思われます。それに先駆してマネロン対策のスペシャリストであるCAMSの資格を得た私達はその知識を活かして政府に先駆けた国際レベルのマネロン対策をもって金融関連システム製品、カジノでのモバイルペイメント展開にたずさわっていきたいと思います。

CAMS取得体験記その2(井口)

ACAMS取得で一番時間がかかったのは受験資格のために取得しないといけない30CAMSポイント。これを無料のwebセミナーを受講することで取得しました。無料のものは月に2〜3回程度しかないのでここでだいぶ時間がかかりました。webセミナーは基本英語なので(たまに中国語やスペイン語がありました)、リスニングの勉強も兼ねてました。

並行して試験のためのCAMSの勉強も頑張りました。

ベガスの空港の近くにあるサンセットパークは長閑で読書や勉強に最適。ポケモンの聖地で他は人が集まらないですが、ここならレイドができます。

試験はアメリカ(ラスベガスの郊外)で受験。Criminal mapで1週間以内の近くの犯罪を見ると安全なとこではない。銃のマークも。。。


予約は5:30pmからだったので30分前くらいに到着したらこんな張り紙が。

仕方ないので車の中で待っていたら試験官の人が到着しきちんと時間内にopenしてくれました。よかったです><

急いで申し込みを済ませ、ID確認(2種類)、メールで受け取った受験用の認証コードを渡し、IDやら携帯やら財布やら全ての荷物をロッカーに入れるよう指示され単身試験部屋へ。

試験部屋の写真は撮れなかったですが、こんな感じの狭い部屋でした。PCがずらっと並んで扇風機が回ってました。

耳栓と3枚の紙と2本の鉛筆が支給されて試験を開始しました。120問、3時間半の長い試験です。

ちなみに紙は試験後に回収されます。

試験問題は以下のような構成で一問ずつ出されました。顧客、従業員、役員、CEOなど様々な立場の人の行動を元にマネロンの疑いがあるかどうかを訊ねる問題が多かったです。クレカ、保険、不動産、貴金属、プリペイドカード、流行りの仮想通貨を使った方法など色々出てました。FATF、バーゼル委員会、ウォルフスバーグ、エドモンドグループ、米国愛国者法あたりも抑えておく必要があります。

問題を解き始めて残り1時間でなんとか全問解きました。見直ししてふと時間を見ると残り時間が1時間10分に。なんか増えてる。。暫く経ってから再度確認すると1時間20分に。また増えてる。。

試験中にサーバが落ちるというのも聞いていたのでその前兆かと焦り、残り時間が増えていく無限ループを振り切って、規定の時間内で勇気を出してSubmit。

「本当にいいのか?」、「全てはお前の責任だからな」みたいな警告を英語で出され、恐る恐る確定。。結果見事合格しCAMSメンバーに!

アメリカで受験すると色々あるので日本での受験がお勧めです。。

色々ありましたが結果的にはマネロンや脱税しようとする人たちを検知するポイントがよく分かった良い資格でした。手口は多岐にわたり変化するものなので引き続き最新の情報をキャッチアップし、今後はCertified AMLエンジニアとしてカジノ業界、金融業界に関わっていこうと思います!