3分で読める情報通信白書のポイント〜IoTの潮流〜

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総務省が毎年最新のITやICT動向をまとめて発行している「情報通信白書」をご存知の方は多いでしょう。目を通しておきたい書類ではあるものの、500ページ程のボリューム感があり、読みやすいとは言いづらいものです。

そこで本記事では、IoTにまつわる動向が記載されている最新の「情報通信白書29年版」の第3章第3節のポイントを要約してまとめていきます。

出典:「平成 29 年版情報通信白書」(総務省)

情報通信白書29年版の本節では、IoTが情報通信産業に及ぼすインパクトについて、関連する通信技術や産業分野別に解説しています。

成長著しいIoT産業

昨今なにかとよく目にする「IoT」ですが、実態として既に爆発的な増加傾向にあり、この傾向は今後加速していくと予測されています。2016年度に173億個だったのIoTデバイスが、2021年度までに年平均成長率が15%にまで上ると想定され、2020年には約300億個になる見通しとなっているのです。

産業分野別に見ると、成長が目立つのはコンシューマ向けと産業用途分野です。特にコンシューマ向けは、2017年時点で既に世界人口の70億を超えています。また、現時点ではまだ数量は少ないものの今後の伸び率が見込める分野として、自動車分野と医療分野が注目されています。

IoTを支える新しい通信技術

「情報通信白書 平成29年版」図表3-3-2-1
各通信方式の位置付け

現在の無線通信技術の主流はLTEやWi-Fiですが、ワイヤレスでモノとインターネットを繋げることが多いIoTには、新しい無線通信技術が求められています。IoTならではの消費電力や電波特性などの条件があるからです。

そのため、各国の機関や企業がIoTに最適な新しい通信方式を開発し、実用化が進み始めています。その中で現在注目されているのが5GとLow Power Wide Area(以下、LPWA)です。

では、この5GとLPWAの特徴や研究開発、商用化の状況を整理していきましょう。

 

5G

5Gは携帯電話事業者が中心となって開発と実証試験を進めている無線通信技術です。5Gの推進団体が世界各国で設立され、早期実現に向けて取り組みが始まっています。
特徴としては、「超高速」に加えて「多数接続」と「超低遅延」が挙げられるため、IoT化を支える無線通信技術の一つと位置付けられています。日本では2017年度から実証試験プロジェクトが6つ始まっています(以下表参照)。まだ商用化には至っていないものの、2020年頃には商用化が始まり、2025年頃には全モバイル回線の約3割を占めるまでに達すると予測されています。

「情報通信白書 平成29年版」図表3-3-2-5 5G総合実証試験(2017年度)

LPWA

一方、LPWAはその名の通り「低消費電力」と「広域性」という特徴があります。

通信容量は数kbps~数百kbpsと小さいものの、数年~数十年といった長期間の利用を実現します。広域性も数km~数十kmと優れています。それゆえに、IoTに最適な通信技術として開発と実用化が進んでいます。

LPWAには多くの方式が存在しますが、LoRaWAN方式(欧州中心)とSigfox方式(欧米中心)が実用化で先行し、市場を牽引しているのが現状です。LPWAに対応した機器の台数は伸び率が非常に高く、2016年には3千万台に満たなかったものが、2021年には4億台にせまると予測されています。今後、LPWAはIoT化に対応する新しい通信インフラとして普及していくでしょう。市場分野別に見ると、企業による導入が進むことから、当面は物流・資産管理やスマートメータといった産業用途を中心に成長していき、その後に、インフラ・環境監視やセキュリテイ・スマートビルといった社会インフラに展開されていくと想定されます。

階層別で見る従来のICT市場と成長するIoT市場

このように成長を続けるIoT市場をさらに詳しく見るため、従来のICT市場と階層別に比較して見ていきます。

階層は上位から以下のように定義します。

(1)サービス・アプリケーション:取得したデータやそのデータを活用して提供されるサービス
(2)プラットフォーム:データの蓄積や処理をする基本基盤
(3)ネットワーク:データを伝送する伝送路
(4)キーデバイス:センサーなどの中核の機能を担うモジュール
(5)端末:主に利用者がデータ入出力に使う装置

各階層に該当するサービス・機器は以下の図のように並べることができ、従来のICT市場(以下図で青)でもIoT市場(以下図で赤)でも同じ各階層に必要要素があることがわかります。

「情報通信白書 平成29年版」図表3-3-3-1 市場区分の枠組

また、それぞれの市場の成長率を見ると以下の図のような分布になります。コネクテッドカーなどのIoT関連に加え、クラウド、ネットワークが上昇傾向にあることがわかります。それに比べ、従来のICT市場の階層(4)キーデバイスの半導体、階層(5)端末に含まれる家電・OA機器、情報端末は市場規模は大きいものの、既に普及しているため、成長率は低迷しています。

「情報通信白書29年版」図表3-3-3-2 世界の市場規模と成長性

IoTを含めた広義でICT産業を捉えると、市場規模はまだ小さいものの、付加価値は今後サービス・アプリケーション、プラットフォームといった上位の階層にシフトしていくものと考えられます。

日本のIoT競争力は高い

普及を続け、新たな価値を創出する様々なサービス・アプリケーションへの展開が期待されるIoT市場ですが、最後に、現時点の世界における日本のシェアや競争力について総括します。

2008年以来、総務省は「ICT国際競争力指標」を設定して公表してきました。しかしIoT市場の急激な進展を踏まえて、新たに「IoT国際競争力指標」を設定しました。そしてこの指標に沿って、国別シェア、主要10か国のランキング付けを行っています。

「情報通信白書 平成29年版」図表3-3-4-3 国・地域別企業 ランキング表

上記ランキングを見てわかるように、スマートフォンなどの情報端末やクラウドが含まれるICT市場スコアでは日本は6位ですが、IoT市場スコアは3位、全体でも3位となっています。IoT市場の調査項目は、スマートシテイ、ヘルスケア、スマート工場、及びコネクテッドカーの4つの分野です。日本の市場シェアは、スマートシテイとヘルスケアではそれぞれ約25%、スマート工場では約33%と、いずれも世界全体でインパクトのある数値を示しています。(数字は2015年時点)

まとめ

スマートフォンに留まらず、「モノ」がインターネットに繋がるようになったここ数年で、IoT 関連デバイス数が急増し、新しい通信技術が世の中に生まれています。そして、この現象はまだ当分止まることはないでしょう。様々なシーンでIoT関連投資やサービス投入がなされていき、IoT化は徐々に進んでいきます。同時に、企業側の改革が必要とされることは明白です。課題は山積みですが、IoTが経済成長にインパクトを与える日は意外と遠くはないのかもしれません。