金融機関におけるアプリの位置付けと使われるアプリ開発のポイント

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様々な金融機関が複数のスマートフォンアプリを提供する昨今。

ユーザーはより便利で使いやすい体験を求めており、企業側には創意工夫が求められ続けます。

しかし、提供サービスが多いからこそ、1つのアプリを多機能化すると体験価値は低下し、逆に過度に分散させると相乗効果は失われます。

こうした状況を踏まえ、本記事ではアプリの最適な位置付けと開発のポイントをご紹介します。

増えるアプリ保有金融機関

かつてのお金まわりのスマートフォンアプリと言えば、一部の金融機関が先行して提供している位置付けでした。しかし、スマートフォンが急速に普及し、世代を超えて様々な人々がアプリを利用するにようになったことで、この状況は一変しています。

総務省が公開している「平成30年通信利用動向調査」によると、2014年時点では40%台だったスマートフォン保有率が、2018年には64%超に達しています。世の中の過半数がスマートフォンを保有するようになったことで、アプリの位置づけが大きく変わったことは間違いないでしょう。

国内金融機関でどんどん増えるアプリ化

金融機関によるアプリ提供数調査」(富士通総研調べ)によると、日本国内の銀行によるアプリ提供数は、2015年から2017年で86個から202個まで伸びており、ほんの数年で2倍以上のアプリが誕生していることがわかります。また、地域金融機関だけに絞って見ても、2015年時点で47個しか存在しなかったアプリが、2017年には139個にまで伸びており、スマートフォンアプリの提供は一部の金融機関だけのものではなくなりつつあることが読み取れます。

これらの動きに加えて、既存の金融機関以外の企業の動きも活発です。改正銀行法の影響もあり、他業界から金融業界へ新規参入を図るケースも見受けられます。Fintechなどの新たなトレンドも競争激化に拍車をかけており、今や金融業界は激変期を迎えているといっても過言ではありません。

同じユーザーに複数アプリを提供する場合の注意点

前述の状況を踏まえ、積極的なアプリ提供を始めている金融機関も少なくありません。そうした場合に起こりがちなことが、同じユーザーに対して目的の異なる複数のアプリを提供するケースです。

例えば銀行のアプリでも、残高照会用アプリと送金用アプリが分かれている場合など、様々な展開が見られるはずです。この方針では、ターゲットごとに最適なアプリ設計が可能である一方、顧客の操作フローが分断したり、情報が分散したりするなどして顧客体験の品質が低下する恐れもあります。そのため、アプリを別個で開発する場合には、慎重な判断が求められます。

金融機関におけるアプリの位置付け

顧客が金融サービスを利用する上で、最良の体験を届けるためには、開発側の視点だけでアプリの位置づけを決定することは望ましくありません。次の観点を踏まえて、自社の顧客にとって最適なアプリ戦略を設計しましょう。

ATM・金融窓口・WEBを補完しあうチャネルとして存在

そもそも論として、顧客への価値提供をアプリ単体で考えるのではなく、「金融サービス全体の価値を高める上で、どのように活用すべきか」といった視点が必要です。例えば、店舗窓口やWebといった既存チャネルではリーチできていない人々をターゲットに据えてアプリを提供することが挙げられます。または、既にリーチできているもの、顧客にストレスを与えていたりクレームが発生しがちだったりするサービスについては、アプリを併用することも検討すべきでしょう。

このように考えると、アプリは顧客体験の価値を向上させたり、従業員の業務効率化を加速させたりするツールの一つであることに気付くはずです。既存チャネルとの関係性や連携方法を含めた広い視点を持つことが、アプリの位置づけを考える上では欠かせないといえます。

コミュニケーションチャネルとしての使いわけを

アプリの位置づけが見えてきた次の段階では、そこで顧客とどのようなコミュニケーションを取るのかを検討する必要があります。アプリは一定のITリテラシーを持ったユーザー層が短時間で手間なく情報取得を行う上で最適です。近年普及が進むチャットボットなどの活用も、これらの層にとって望ましいコミュニケーション手法といえるでしょう。

一方で、ITリテラシーがあまり高くない層に対しては、コールセンターや店舗窓口を介したコミュニケーションも検討する必要があります。だからこそ、アプリ上での行動データを踏まえたコミュニケーション手法の使い分けが求められてきます。

コールセンターとの連携も重要

アプリによって企業と顧客とのコミュニケーションがデジタル化され、FAQやチャットを搭載しても、ユーザーが探している情報にたどり着けなければ意味がありません。例えば、定期口座への入出金の方法がわからなかったり、クレジットカードの支払いを分割にする手順がわからなかったり、といった具合です。こうした状況で操作が行き詰ると、ユーザーは大きな不満を抱えることになります。

こうした状況が起こり得るからこそ、最後の砦としてコールセンターが重要な役割を果たします。アプリ単体では解決し得ない問題を、コールセンターと連携して解決することで、顧客満足度の低下を食い止めることができます。

では、アプリと他のチャネルとの連携を考慮し、よりユーザーに使ってもらえるアプリを開発するためには、どのようなアプローチが必要なのでしょうか。

使われる金融アプリを開発するために

アプリの位置づけを確認した次の段階で検討すべきは、開発パートナーと環境づくりです。今回は、最も重要な2つのポイントをご紹介します。

業界作法×サービス設計能力を備えたパートナーを選ぶ

1つ目は、金融業界特有の知識や実績を備えており、サービス設計を強みとしたパートナーを選ぶことです。業界の規制や規範を把握しているパートナーであれば、高いセキュリティ要件といった前提を踏まえて最適な技術選定が可能になるでしょう。もちろん、実績や信頼に基づいた開発に重きを置くことは言うまでもありません。また、ユーザーに長らく使ってもらうためにも、サービス設計は最重要な視点となります。

フィードバックがUI・UXに反映される体制づくり

2つ目は、素早く改善を繰り返すための体制づくりです。正解のない領域だからこそ、初めから厳密に使用を決定するのではなく、分析・設計からテストまでの流れを細かく、素早く繰り返す「アジャイル型の開発」が求められます。だからこそ、このような開発体制を組めるかどうかが、正否を分けるポイントになります。

今回ご紹介したように、変化の過渡期を迎えた金融業界では、アプリ単体で戦略を立てるのではなく、顧客にアプローチする一連の流れの中で最適なポイントにアプリを位置付ける必要があります。こうした状況だからこそ、「作りかた」だけでなく「使われかた」「続けかた」までを考慮した開発パートナーが求められる時代です。

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