「ChatGPT Enterprise」が2023年8月に発表されました。「ChatGPT」の新たなサービスとして注目を集め、海外では早くも導入を進めた企業もあります。
この記事ではChatGPT Enterpriseについての説明と、導入企業の声、そもそもChatGPTとはどういうものなのか解説していきます。業務効率化に役立つ情報となりますので、ぜひご参考ください。
そもそもChatGPTとは
ChatGPTとは、アメリカのOpenAI社によって開発され、2022年11月にリリースされました。ユーザーが投げかける質問や依頼である「プロンプト」を入力すると、わずか数秒で回答してくれる対話形式のサービスです。その仕組みはインターネット上にある膨大なテキストデータを学習し、まるで人間と話をするように回答を生成する仕組みとチャット機能をかけあわせたものです。膨大な学習量の中から解析するため、幅広いジャンルで回答が可能です。
どんな機能があるのか
プロンプトの内容は会話や疑問、他にも、「CSVで会社名、姓名、住所、メールアドレスのランダムデータを作って」などの依頼も可能です。プロンプトから生成される回答はさまざまで、記事の要約、添削、メール文章の作成、プログラミングと多岐にわたります。現在は無料版のChatGPTと有料版のChatGPT Plusとプランが2つあります。以下では、それぞれの機能について解説していきます。
無料版ChatGPT
ChatGPTのエントリープランとして用意されている無料版のChatGPTには、GPT-3.5が搭載されています。そもそもGPTとは、Generative Pre-trained Transformerの略称で、OpenAIが開発した大規模言語モデル、つまり大規模なテキストデータから学習し、テキスト生成、質問応答、文章要約、機械翻訳などの自然言語処理タスクを実行できるものです。
無料版では、一般的に知られているChatGPTの機能、テキスト生成、質問応答、文章要約、機械翻訳などが使えます。ただし、回答スピードや回答精度が有償版と比較すると低いです。
ChatGPT Plus
ChatGPT Plusというプランは月額20ドルで、GPT-4が搭載されています。このプランでは、優先的なアクセス権が付与されていて回答スピードがGPT-3.5の2倍とも言われています。また、パラメータ数が大幅に増えていて、回答の精度が高く、信頼性が高いのも特徴です。パラメータとは変数という意味で、ChatGPTでは回答までのパラメータ数が増えることにより毎回異なる内容を受け渡しているため、回答の精度が高いものとなります。
GPT-4では主にWebブラウジング機能、Advanced data analysis(旧:code interpreter)、プラグイン(拡張機能)の3つの機能が追加されています。
・Webブラウジング機能
1つ目のWebブラウジング機能とはWEB上にある最新の情報を収集し、回答してくれる機能です。GPT-3.5では2021年までのデータとなっているため、最新の出来事や技術は基本的に回答できませんでしたが、最新の話題にも対応が可能となります。
・Advanced data analysis(旧:code interpreter)
2つ目は「Advanced data analysis」というもので、テキスト以外にも画像やエクセルファイルの解析もできる機能です。例えばエクセルにあるデータを分析することができ、グラフ作成を行ってもらうことができます。
関連記事 ChatGPTの新機能「Advanced data analysis」の活用方法とは?
・プラグイン
3つ目はプラグイン(拡張機能)です。より多様なやり取りを行えます。現状のプラグインは100種類以上あり、GPT-4ではより高度な学習をさせることができます。複数プラグインを利用する場合は注意が必要で同時に3つのプラグイン機能の接続となります。プロンプトにはどのプラグインを使用して回答するか指示が必要です。
ChatGPT Enterpriseとは
2023年8月にChatGPT Enterpriseが発表されました。ChatGPTの全ての機能が利用でき、企業向けにアップデートされた最新バージョンとなります。よりデータの安全性が確保されていて、企業利用可能なレベルを満たしています。
特徴と料金
ChatGPT Enterpriseの特徴としては、5点挙げられます。無制限の高速GPT-4へのアクセス、エンタープライズ向けのセキュリティとプライバシー対応、より長いコンテキストウィンドウ、高度なデータ分析機能、カスタマイズオプションです。
利用料金はニーズや企業の規模などで変動するため、OpenAIへの問い合わせが必要となります。
ChatGPT EnterpriseはChatGPT Plusとどう違うのか
企業向けのChatGPT EnterpriseはChatGPT Plusよりも様々な点で優れていると言われています。では、どのような点が異なり、優れているか説明していきます。
・スピード
ChatGPT Enterpriseでは、GPT-4を2倍のスピードで利用でき、3万2000トークンというChatGPT Plusの4倍の文章を入力・理解することが可能です。
・データ分析機能の無制限利用
データ分析ができるAdvanced data analysisが無制限で利用でき、金融市場データやマーケティングデータの分析、データサイエンティストなどが使うETLスクリプトのデバッグなど高度なデータ分析・解析ができるようになります。
・カスタマイズ機能
共同作業を行い、チャットテンプレートを共有し利用できる機能です。業界やビジネスに特化した拡張カスタマイズ用に、追加費用なしでいくつかのAPIクレジットも利用できます。
・大規模企業の導入を見据えた機能
大規模企業の導入を見据えた機能として、SSO、ドメイン検証、社内の使用状況の管理、分析ができるダッシュボード画面に加え、管理者向けの管理コンソールが提供されており
一括メンバー管理が可能です。
ChatGPT Enterpriseのセキュリティ
情報漏洩などセキュリティ面での懸念があったChatGPTですが、ChatGPT Enterpriseでは安全面とプライバシーを最優先に考慮した設計が最大の魅力となっています。ユーザーが入力したプロンプトやデータはAIモデルのトレーニングには使用されない点と、送信したデータや、保存の際には暗号化される仕組みになっています。これは米国公認会計士協会(AICPA)が開発した、高水準のセキュリティを維持するための国際的な基準である、SOC 2に準拠しています。
ChatGPT Enterpriseの導入企業の声
ChatGPT Enterprise の初期ユーザー として、Block、Canva、Carlyle、The Estée Lauder Companies、PwC、Zapier などの業界リーダーの声がOpenAIのサイトでいくつか紹介されています。
Zapier
多数のアプリケーションと連携し、タスク作業を自動化できるツールベンダーのZapierでは、セキュリティやプライバシー対応を評価しています。
Zapier 全従業員の半数は現在、業務に AI を活用しています。ChatGPT Enterprise では、セキュリティとプライバシーの管理が強化されているため、機密データを扱うことができます。
‐マイク・ヌープ氏、共同創設者兼Zapier AI責任者
参考:OpenAI
PwC
コンサル企業として有名なPwCでは、いち早くChatGPT Enterpriseを導入しています。
ChatGPT Enterprise により、当社は AI のパイオニアであり続けると同時に、責任ある方法で AI に関連する生産性と新たな成長の機会から当社の従業員とクライアントが恩恵を受けることを支援できます。
-Kevin Ellis 氏、PwC UK 会長兼シニア パートナー
参考:OpenAI
Klarna
スウェーデンのフィンテック企業Klarnaは、ChatGPTをパーソナルショッピングアシスタントとして活用するサービスを2023年3月に提供開始していますが、ChatGPT Enterprise導入で次なるレベルへの挑戦を掲げています。
Klarna では、従業員の能力を強化し、世界中の 1 億 5,000 万人のアクティブ ユーザーに最大限のサービスを提供できるようにする革新的なソリューションを常に模索しています。ChatGPT Enterprise の統合により、私たちは従業員のエンパワーメントを新たなレベルに引き上げ、チームのパフォーマンスと顧客エクスペリエンスの両方を向上させることを目指しています。
-セバスチャン・シェミアトコウスキー氏、Klarna CEO
参考:OpenAIブログ
Asana
サンフランシスコにあるプロジェクト・タスク管理ツールベンダーのAsanaは生産性と業務効率の向上に役立てたと評価しています。
ChatGPT Enterprise により、調査時間が 1 日あたり平均 1 時間短縮され、チームのメンバーの生産性が向上しました。これは、仮説の検証と社内システムの改善を加速する強力なツールです。
-Jorge Zuniga 氏、Asana データ システムおよび統合部門責任者
参考:OpenAIブログ
Canva
画像生成サービスのCanvaは多様な活用例、セキュリティとプライバシー面を高く評価しています。
バグのトラブルシューティングを行うエンジニアから、自由形式データをクラスタリングするデータ アナリスト、扱いにくいスプレッドシートの数式を作成する財務アナリストまで、ChatGPT Enterpriseの使用例は数多くあります。私たちが必要とする信頼性の高いセキュリティとデータ プライバシー制御を備えた、生産性の真の実現手段となっています。
-Danny Wu氏、Canva 製品責任者
参考:OpenAIブログ
まとめ
ChatGPT Enterpriseがリリースされたことにより、多くの企業が注目を集めています。導入事例で紹介させていただいた企業は海外でしたが、今後国内でも導入企業が増えていくことが予想されます。
機能の追加予定も発表されており、小規模向けの「ChatGPT Business」の提供を予定しています。ChatGPTは今後様々なビジネスシーンで活躍が期待できるので、最新情報は要チェックです。今後もテックファームはChatGPTを始め、最新の情報提供をし続けていきます。