BOPIS(ボピス)とは?コロナ禍で普及が進む店舗受取サービス

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近年、日本でも導入が増えているBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)、店頭受取サービスに注目が集まっています。

コロナ禍を背景に、店頭での滞在時間をなるべく短くしたいという消費者心理からも、非常に好評なようです。

本記事では、BOPISについて解説した上で、海外と日本の事例についてもご紹介していきます。海外では多く普及している中、日本での普及が進まない理由についても解説いたします。

ECとリアルの中間に当たるBOPISは、今後のマーケティング戦略において非常に重要な顧客接点となると予想されますので、ぜひご参考ください。

BOPISとは?

ボピス(BOPIS)とは「Buy Online, Pickup In Store」の略称です。顧客が小売店のサイトから事前オーダーした商品を、店舗で受け取る購入システムであり、欧米の小売業で急速に普及しています。

①ボピスの誕生

ボピスは、ネットで購入した商品を店舗で受け取るという、ECと実店舗のハイブリッドな購入方式です。アメリカの大手小売チェーンのウォルマートが導入したクリック&コレクトというサービスから派生しました。
クリック&コレクトは、ネットで購入した商品を自宅以外の場所で受け取るサービスで、宅配料が不要です。ウォルマートが、EC最大手のアマゾンへの対抗策として始めたとされています。

②コロナ禍による普及の加速

ボピスを利用すれば、店舗での対人接触や買い物の時間を減らすことが可能です。
そのため、コロナ禍で感染リスクの減少を望む顧客ニーズに応えて、欧米の小売業界で一気に普及が進みました。日本でもコロナ禍を契機としてボピスを導入する企業が増えつつあります。
それ以外でも、顧客と小売店の双方にメリットがあるため、コロナ後もボピスは普及していくと見られています。

顧客側のメリット

ボピスを利用すれば、顧客は商品を購入するために店舗内を探し回ることや、レジに並ぶ必要がありません。在庫切れを心配せずに確実に商品を購入できますが、それ以外にも次のようなメリットがあります。

①宅配の送料が不要

ボピスを利用すれば、商品は顧客が店舗に出向いて受け取るため、宅配の送料は不要です。
ただし、商品の検索や事前オーダー、商品レビューの閲覧などはECと同様に行えます。

②宅配のタイムラグの解消

ECで購入した商品の宅配を利用すれば、手元に届くまでタイムラグが生じます。さらに、自宅で配達を待ったり、不在時に再配達を手配する必要もあります。
ボピスを利用すれば商品を購入した後、都合の良い時間に店舗で受け取れるため、宅配によるタイムラグやロスを解消することが可能です。帰宅中の電車でオーダーし、帰りにピックアップするということも可能です。

③店舗滞在時間の短縮

BOPISを利用すれば、商品の選択や決済はネット上で行なうことができるため、店舗に出向くのは商品を受け取る時だけになります。
コロナ禍での感染リスクを減らすため、対人接触や店舗での滞在時間の短縮を望む消費者のニーズに応えることができます。また、広い店内を探し回るという手間も省けたり、在庫の確認もネット上で可能です。

店舗側のメリット

ボピスの導入は顧客の利便性向上だけでなく、次のように店舗の売上増加や配送コストの削減というメリットもあります。

①「ついで買い・衝動買い」の誘発

アメリカでの調査によれば、ボピスを利用して店舗で商品を受け取った顧客の85%が別の商品を購入しています。
顧客が店舗を訪問することで、ついで買いや衝動買いを誘発するため、売上の増加が見込めます。

②店舗の省人化

ボピスを利用する顧客はネット上で決済を済ませているため、レジに並ぶ必要がありません。
そのため、店舗側は接客の省人化によるコストの削減や、小売業の慢性的な人手不足を緩和することができます。

③配送網の効率化

ボピスは商品の宅配を行わないため、配送網の効率化や物流の工数を減らすことが可能であり、コストの削減が図れます。
顧客側にも宅配料が不要というメリットがあります。

④顧客IDを活用したマーケティング

顧客がボピスを利用するためには、ネットでの決済と会員化が必要になります。顧客IDの情報を収集して解析すれば、顧客の購買行動や売れ筋の商品の予測などが可能です。

これに基づいたセールやキャンペーンを実施すれば、効率的なマーケティングを行うことができます。

BOPIS事例の紹介

海外事例

①ウォルマート

ボピスを生みだしたウォルマートは、ECでオーダーした商品を駐車場で受け取るか、店舗で受け取るかを選べるサービスを提供しています。
ボピスの利用客が増加したため、商品受け取り専用ロッカーの設置を進めて店舗の省人化を図っています。

②ノードストローム

アメリカの大手百貨店のノードストロームは、ボピスの利用者のために店舗内の試着室を増設しました。衣類などは、ネットで購入しても身体にフィットするかどうかは、試着しないとわかりません。
ボピスの利用者は、ネットで購入した衣類を店舗内で試着できます。そのため、自宅に持ち帰った後のサイズ違いによる返品の減少が見込めます。

③スターバックス

コーヒーチェーンのスターバックスは、2017年からモバイルオーダーや決済を行っています。
待ち時間が短縮されたり、オーダーのカスタマイズがわかりやすくなったことから、ボピスを利用した売上が10%を超えるようになっています。日本でもモバイルオーダーが導入されており、出勤前に駅前店舗でピックアップしたり、長い行列に並ばずに購入できるなど、利用者が増えています。

④リトルシーザーズ

アメリカのピザチェーンのリトルシーザーズは、オンラインで事前オーダーを受けた、焼き立てのピザを受け取れる特性のロッカーを全ての店舗に設置しました。
物販店以外のファストフード店でのボピスの導入事例として注目されており、顧客の待ち時間を減らす効果が見込まれています。

日本の事例

①イオンリテール

スーパーマーケットのイオンは、顧客がネットショップで事前オーダーした商品を店舗で受け取るボピスのサービスを約400の店舗で行っています。
店舗受け取りであれば、ECで購入した商品の送料が不要になることをアピールしており、既存の店舗リソースを活用した戦略だといえるでしょう。

②ヨドバシカメラ

家電量販店のヨドバシカメラは、商品の店舗在庫の有無をリアルタイムで公開しています。店舗に在庫がある場合は、ネットで注文してから約30分で店舗受け取りが可能です。
さらに、一部の店舗では商品の店舗受け取りが24時間可能な窓口を設けて顧客の利便性向上を図っています。

③ニトリ

家具販売店のニトリは、ネットショップで購入した商品の店舗受け取りサービスとしてボピスを導入しています。
店舗に在庫があれば翌日に受け取れますが、一部の店舗では14時までにネットで購入すれば当日に商品を受け取ることも可能です。

④ケンタッキー・フライドチキン

日本ケンタッキー・フライドチキンは、2020年10月に一部の店舗でボピスを試験導入しました。
店側はネットで事前にオーダーを受けた商品を、店内の専用ロッカーに保管します。顧客は、ロッカーに注文番号を入力して商品を取り出すという本格的なボピスのシステ厶を採用しています。

日本で普及していない背景

ボピスを円滑に運用するためには倉庫内の商品、棚番・棚段のマスターと、随時更新が可能な在庫管理システムを導入する必要があります。
さらに、ネットでオーダーを受けた商品の取り置きや、在庫を管理するシステムも必要です。
こうしたシステムの導入には、基幹システムとの連携が必要になることがあります。その場合は、今後のDX対応を見据えた既存システムの刷新など、大規模なシステム開発と投資を検討する必要もあります。
日本では、ボピスを円滑に運用できる効率的な在庫管理システムを導入している小売企業は数少ないのが現状です。また、多くの企業は老朽化したシステムの維持管理に追われており、在庫管理システムの刷新やDXへの対応が遅れています。

こうしたことが、日本でボピスの普及が進まない背景になっています。

まとめ

小売業において、ECと実店舗は対抗し合うものではなく、互いの価値を高め合うことができます。ボピスは、そのモデルになると期待されているのです。ボピスの円滑な運用には、DXの推進など大規模なシステム開発が必要ですが、日本企業の多くはそれに対応できていないのが現状です。

しかし、政府がデジタル庁の設置を決定するなど、コロナ禍を契機としてDXの推進は国策になっています。今後は小売業を含むあらゆる産業でDXへの取り組みが進行していくでしょう。
こうしたトレンドに乗り遅れて、新しいビジネスモデルに対応できなければ、市場での競争に敗れてしまいます。そうした事態を避けるには、ボピスの導入や、それに必要なシステム投資について経営陣の果断な意思決定が求められています。