3Dセキュア2.0とは?義務化に向けて知っておきたいこと

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近年、クレジットカードの不正利用が急増しており、オンライン決済のセキュリティ強化が求められています。

その解決策の一つとして導入が進められているのが「3Dセキュア2.0(EMV 3Dセキュア)」です。

既に導入済みの事業者が増えている中、セキュリティ強化のためにこれから3Dセキュア2.0の導入を考えている方もいることでしょう。しかし、3Dセキュアについて、以下のような疑問を抱えている人も少なくないはずです。

「3Dセキュア2.0って何?これまでの3Dセキュアとの違いは?」

「導入するには何が必要なの?」

「導入するリスクやデメリットはあるの?」

そこで本記事では、3Dセキュア2.0とは何か、なぜ義務化されるのか、導入のメリットや影響について詳しく解説します。3Dセキュア2.0の導入に向けて、本記事で基本的な知識を押さえておきましょう。

クレジットカード不正利用増加で3Dセキュア2.0が義務化

近年クレジットカードの不正利用が増加していることを受け、オンライン決済の安全性を高めるために3Dセキュア2.0の義務化が進められています。日本クレジット協会の「クレジットカード不正利用被害額の発生状況」によると、2023年の不正利用被害額は年間約500億円に達しており、過去最高を記録しました。特に、ECサイトにおけるなりすまし被害が深刻化しており、従来のパスワード認証では防ぎきれない状況となっています。

「3Dセキュア1.0」では固定パスワードを用いた認証が主流でしたが、これには盗難や流出のリスクがありました。そこで、「3Dセキュア2.0」にて、ワンタイムパスワードや生体認証など、多要素認証を導入することでセキュリティを大幅に強化。カード所有者の負担を減らしながらも、不正利用を防ぐ仕組みが整えられています。

この義務化は、2025年までに順次適用される見込みであり、EC事業者や決済代行会社にも早急な対応が求められています。海外では既に導入が進んでおり、日本国内でも主要カード会社が対応を発表。これにより、より安全でスムーズなオンライン決済が可能になると期待されています。

3Dセキュア2.0(EMV 3Dセキュア)とは?

3Dセキュア2.0(EMV 3Dセキュア)とは、クレジットカード決済の不正利用を防ぐための本人認証の仕組みです。

従来の3Dセキュア1.0では、ワンタイムパスワード(OTP)を利用した認証が一般的でしたが、2.0ではリスクベース認証を採用し、必要な場合のみ追加認証を行う仕組みに進化しています。これにより、ユーザーの利便性を損なうことなく、高いセキュリティを実現可能です。

そもそも3Dセキュアとは?

3Dセキュアとは、クレジットカード決済時に追加の認証を行うことで、不正利用を防ぐ仕組みです。「3D」は、カード会社・加盟店・発行銀行の3者(3Domains)を指し、各主体が連携してセキュリティを確保します。

従来のオンライン決済では、カード番号や有効期限の入力のみで決済が完了するため、盗難カード情報が悪用されるリスクがありました。その点、3Dセキュアでは購入者が本人であることを証明するため、追加の認証手段を設けています。

また、従来の3Dセキュア1.0では、決済時にパスワードやワンタイムパスワードを入力する方式が一般的でした。しかし、入力の手間やパスワードを忘れた場合の対応が課題となり、利便性の面で問題視されていました。この課題を解決するために導入されたのが、3Dセキュア2.0です。

セキュリティコードとは何が違う?

クレジットカードのセキュリティ強化において、セキュリティコードと3Dセキュアは異なる役割を持ちます。

セキュリティコードは、カード裏面(または表面)に記載された3桁または4桁の番号で、カードを物理的に所持していることを証明するために用いられます。これにより、カード情報が盗まれても、セキュリティコードを知らない限り不正利用されるリスクはありません。

一方、3Dセキュアは、オンライン決済時に追加の本人認証を行う仕組みで、セキュリティコードだけでは防げない不正利用を防ぐ役割を持ちます。特に、フィッシング詐欺や情報流出によるカード情報の不正使用を防げるのが特徴です。

3Dセキュア1.0と2.0の違いは?

まず、3Dセキュア1.0と2.0の主な違いを以下の表で確認してみましょう。

項目 3Dセキュア1.0 3Dセキュア2.0
認証方法 パスワード(固定) リスクベース認証 + ワンタイムパスワード(OTP)やバイオメトリクス
ユーザー利便性 都度パスワード入力が必要(煩雑) 利便性向上(認証不要のケース増加)
デバイス対応 PC中心 PC、スマホ、タブレットなどマルチデバイス対応
対応ブラウザ 古いブラウザ対応が必要 最新のブラウザとセキュリティ基準に対応
リスク評価 なし 取引情報を基にリスク評価を実施
フリクションレス認証 なし 低リスク取引は自動承認(ユーザー操作不要)
取引データの活用 限定的 取引データを詳細に活用(デバイス情報、購入履歴など)
なりすまし対策 弱い(パスワード盗難のリスク) 強化(バイオメトリクスやワンタイムパスワード利用)
導入の容易さ 比較的容易 システム対応が必要(メリットも多い)
EMV準拠 非準拠 EMV 3-Dセキュア準拠

上記のなかでも、大きな違いとして挙げられるのが、認証方式の進化とユーザーの利便性向上です。

3Dセキュア1.0では、決済時に毎回パスワードやワンタイムパスワードの入力が求められた一方、3Dセキュア2.0では、リスクベース認証を採用し、通常は追加認証なしで決済可能になりました。

また、3Dセキュア1.0ではパスワード入力の手間があり、決済完了までに時間がかかるのが課題だったものの、3Dセキュア2.0では、必要な場合のみ追加認証を行うため、スムーズな決済が可能になっています。

そのほかにも、3Dセキュア1.0はPC向けの認証が中心だったのに対し、3Dセキュア2.0ではスマートフォンやアプリ決済にも対応しており、多様な決済環境で利用できるようになったのも大きな違いです。

3Dセキュア2.0は、セキュリティと利便性を両立した認証方式として、今後のオンライン決済の標準となるでしょう。

3Dセキュア2.0のメリット

3Dセキュア2.0の主なメリットは、以下の4つです。

  • より強固なセキュリティ
  • かご落ちリスクの軽減
  • 顧客の安心感向上
  • チャージバックの減少

それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

より強固なセキュリティ

3Dセキュア2.0では、従来のパスワード認証に加え、生体認証やワンタイムパスワード(OTP)を利用できます。これにより、なりすましによる不正決済のリスクを大幅に低減可能です。

また、「リスクベース認証」が導入されており、取引のリスクレベルを自動的に判断し、高リスクと判断された場合のみ追加認証を求めます。そのため、不正利用の抑止力が高まると同時に、通常の取引ではスムーズな決済が可能です。

かご落ちリスクの軽減

従来の3Dセキュア1.0では、ユーザーがパスワードを忘れてしまうケースも多く発生していました。その結果、決済が完了せずに終わってしまう「かご落ち」が発生する問題があったのです。

その点、3Dセキュア2.0では、ワンタイムパスワード(OTP)や生体認証を活用できるため、パスワードを覚える必要がありません。また、リスクベース認証の導入により、低リスクの取引では、追加認証なしで決済が完了します。

このように、認証プロセスの最適化により、スムーズな購入体験が提供され、かご落ちのリスクを大幅に軽減しているのです。

顧客の安心感向上

3Dセキュアによってオンライン決済のセキュリティが強化されることで、個人情報漏洩や不正利用のリスクが低減され、ユーザーが安心して買い物を楽しめるのもメリットです。また、3Dセキュア2.0の導入により決済プロセスが透明化され、本人認証が確実に行われるため、顧客は自身のクレジットカード情報が安全に管理されていることを実感できます。これにより、ECサイトの信頼性が向上し、リピーターの獲得にもつながるでしょう。

チャージバックの減少

3Dセキュア2.0の導入は、クレジットカードの不正利用を防ぎ、加盟店側の損失リスクを軽減できるのもメリットです。特に、不正利用による「チャージバック」の発生を抑えられる点は、事業者にとって大きな利点といえます。

チャージバックとは、クレジットカード会社が利用者の申し立てに基づいて請求を取り消す仕組みです。そのため、不正利用が発生すると、加盟店側が売上を失うだけでなく、追加の手数料が発生するケースもあります。

3Dセキュア2.0を導入すれば、本人認証を強化し、不正取引を未然に防ぐことが可能です。その結果、チャージバックの発生頻度が減少し、事業者の収益安定化にもつながります。

3Dセキュア2.0の義務化はすべてのEC事業者が対象

3Dセキュア2.0は、2025年の3月末までにすべてのECサイトで導入することが義務付けられています。

特に、カード決済を主な決済手段としているECサイトや、海外取引を頻繁に行う事業者は、早急に対応を進める必要があります。導入が遅れると、決済が正常に処理されず、売上減少につながる可能性もあるため、迅速に対応しなければなりません。

なお、迅速な対応が必要な事業者としては、以下のような優先順位がつけられています。

  1. 「不正利用顕在化店」ではないが、不正が発生しているEC加盟店
  2. 「高リスク商材取扱加盟店」
  3. 上記以外の加盟店

具体的には、以下の業種では、特に迅速な対応が必要です。

  • 高額商品を扱うECサイト(例:ブランド品、家電)
  • 海外取引が多い事業者(例:越境ECサイト)
  • サブスクリプション型サービス(例:動画配信、クラウドサービス)
  • デジタルコンテンツ販売事業者(例:電子書籍、オンラインゲーム)

3Dセキュア2.0を導入しないとどうなる?

3Dセキュア2.0を導入しない場合、EC事業者には複数のリスクが発生します。

まず、顧客からの信頼低下が懸念されます。クレジットカード決済で不正利用が発生すると、顧客の不安が高まり、結果として離脱率が上昇する可能性があるでしょう。特に、セキュリティ意識の高いユーザー層は、安全な決済環境を提供するサイトを選ぶ傾向にあります。

また、法的・規制面でのペナルティも考えられます。例えば、カード会社や決済代行業者の基準を満たさない場合、決済手数料の引き上げや取引制限が課される可能性があるのです。

さらに、詐欺被害が発生した場合にEC事業者が責任を負うケースもあるため、結果的に多大な損害を被ることになりかねません。

3Dセキュア2.0の導入方法

3Dセキュア2.0を導入するには、以下の2つのステップが必要です。

  1. 加盟店システムの対応
  2. カード会社との連携

それぞれの手順について、詳しく見ていきましょう。

1. 加盟店システムの対応

まず、EC事業者は決済システムを3Dセキュア2.0に対応させる必要があります。具体的には、決済代行会社が提供する3Dセキュア2.0対応のAPIを導入し、クレジットカード決済時に本人認証が行われるように設定しましょう。

2. カード会社との連携

3Dセキュア2.0の導入には、カード発行会社(イシュア)との連携が不可欠です。

加盟店は、カード会社と契約し、取引データを適切に送信する仕組みを構築しなければなりません。特に、リスクベース認証(RBA)を活用することで、低リスクの取引では追加認証なしでスムーズな決済を可能にできます。また、既存のシステムとの統合やテスト運用を行い、実装後のトラブルを防ぐことが重要です。

3Dセキュア2.0導入時の注意点

3Dセキュア2.0を導入する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 移行には時間がかかるため、早めに準備を開始すること
  • 顧客への事前周知を徹底し、スムーズな移行を図ること
  • 決済の安定性を確保するため、入念なシミュレーションと事前テストを行うこと

それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。

移行に時間がかかるため早めに着手する

3Dセキュア2.0の導入には、システムの改修やテスト運用など多くの工程が必要です。そのため、移行には時間がかかることを想定し、早めの着手が必要です。特に、ECサイトでは決済プロセスの変更が売上や顧客満足度に影響を与えるため、段階的な移行が推奨されます。まずはテスト環境での運用を行い、問題が発生しないか確認しながら本番環境へ移行するとよいでしょう。

また、決済代行会社やカード会社と連携し、必要な要件を満たすかどうかを事前にチェックしておくことが望ましいです。これにより、導入後のトラブルを最小限に抑えることができます。

さらに、社内の開発チームやカスタマーサポート部門とも十分に連携し、新しい認証フローに関する知識を共有することが重要です。システムの導入が完了した後も、定期的な見直しやアップデートを行い、セキュリティの強化を行ってください。

事前に顧客への周知をする

3Dセキュア2.0の導入により、顧客の決済体験が変わるため、事前の周知が不可欠です。特に、追加認証が求められるケースでは、適切な案内を行わないと離脱率が増加する可能性があります。

効果的な周知方法として、以下の施策を検討しましょう。

  • ECサイト上での告知バナーの設置
  • メールマガジンを活用した詳細な説明
  • FAQページの更新とカスタマーサポートの強化
  • SNSやアプリ内通知を活用したリマインドメッセージの送信

また、認証手続きがスムーズに行えるよう、認証画面のUIを最適化することも重要です。ユーザーが混乱しないよう、簡潔でわかりやすいガイドを提供することで、離脱を防ぐことにもつながります。

さらに、既存顧客と新規顧客の両方に向けた説明コンテンツを用意することも検討してください。特に、過去に取引履歴がある顧客に対しては、個別の通知を送ることでよって理解を得るとよいでしょう。

入念なシミュレーションと事前テストを行う

3Dセキュア2.0の導入後にシステムトラブルが発生すると、決済が正常に行えず、売上損失につながる可能性があります。そのため、導入前には入念なシミュレーションとテストを実施してください。

主なテスト項目としては、以下のような事柄が挙げられます。

  • 各種ブラウザやデバイスでの動作確認
  • 異なるカードブランドでの認証テスト
  • リスクベース認証の適用範囲の検証
  • ピーク時の負荷テストとレスポンス速度の検証

特に、最近ではスマートフォン利用者が増えているため、モバイル環境での動作確認は必須です。また、決済代行会社と連携し、エラー発生時の対策を事前に検討しておくことも忘れてはいけません。

まとめ

オンライン決済の安全性を高めるため、多くの企業が3Dセキュア2.0の導入を進めています。3Dセキュア2.0は、不正利用を防止しながら、スムーズなユーザー体験を提供する認証システムです。しかし、導入にはシステムへの適応やカスタマイズが必要となるため、専門的な知識が求められます。

テックファームは、これまで多くのECシステムやそれに伴う決済システム開発を手掛けてきた実績をもとに、3Dセキュア2.0の導入をスムーズに進めるためのサポートが可能です。貴社のビジネスに最適な認証フローの設計から、システムの構築・運用までワンストップで対応し、ユーザーエクスペリエンスを損なわないままセキュリティを強化することができます。ぜひお気軽にご相談くださいませ。

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