プロンプトエンジニアリングとは?効果的な設計ポイントと必要スキル

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AIによってビジネス課題を解決する事例が増えていて、今後はますますAIが多くの課題を解決するようになるでしょう。

そして、AIから正しい出力を得るのに必要なのがプロンプトです。

ではなぜプロンプトが重要なのか、またプロンプトを最適化するプロンプトエンジニアリングとはどのようなものなのか、解説していきます。

プロンプトエンジニアリングとは

プロンプトエンジニアリングとは、日本語や英語などの自然言語で、AIに対して命令をすることやその命令を最適化することです。

言語モデル、大規模言語モデル、LM、LLMといったわかりにくい用語で説明されていることもありますが、要するに「AIが思い通りに動くように最適な指示を出しましょう」というだけのことです。

プロンプトエンジニアリングはなぜ重要?

AIは今までには考えられなかったくらい高機能なツールです。しかし、AIを狙い通りに使うためには人間がAIにうまく指示を出す必要があります。AIにうまく指示を出すためにプロンプトエンジニアリングが重要ということです。

「プロンプト」「アウトプット」「レスポンス」「タスク」といった横文字を並べている情報が多いですが、単純に「良い命令文を入力すれば、狙い通りの出力がされる」ということです。AI先進国といえばアメリカなので、AIに関する情報も英語から発信されることが多いです。

そのためプロンプトについても横文字を並べたわかりにくい説明がされていることが多いですが、非常に単純な話になります。またプロンプトエンジニアリングも、単純に「AIに良い命令文を書くノウハウ」ということです。

プロンプトの要素と効果的な設計ポイント

プロンプト、つまりAIに対して良い命令文を書くためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。

プロンプトの要素

AIは人間と違ってニュアンスで捉えることが苦手です。言い換えれば、情報を整理して正確に指示を出す必要があるのです。そして、情報を整理するためにはプロンプトにどのような要素を含めれば良いのか知っておく必要があります。具体的には、以下の要素が特に重要です。

  1. 指示
  2. 背景
  3. 入力データ
  4. 出力形式/出力指示子

まず指示は、AIに何をしてほしいのかの大枠です。背景は、指示の派生情報のことです。「なぜ」「なんのために」といった情報を入力すると出力の精度が上がります。入力データは、AIに対する質問です。AIは指示・背景に基づいて、入力データに回答するということです。

出力形式/出力指示子は、出力の形式です。わかりやすい例としては、文章、表、箇条書き、口語、ですます調、などいろいろな指定が可能です。要素の大枠としては上記のようになります。

ただしそれぞれの要素を掘り下げて細分化していくことができるので、プロンプトにはいろいろなパターンがあります。

効果的なプロンプト設計のポイント

効果的なプロンプトを書くためには以下が重要です。

  1. 具体性・明確化
  2. 出力形式・範囲
  3. 背景・補足情報

まず1つ目の具体性・明確化は必須項目です。AIはニュアンスを汲み取るのが苦手なので、なるべく詳細に命令文を書くことが重要です。人間の場合は質問の意図を汲み取るので簡潔に答えるべき時には簡潔に、相手が細く情報を求めているようであれば補足情報を加える、といったさじ加減ができます。

しかしAIにそのような機能はないため、たとえば「質問の答えのみ簡潔に答えてください」「他にも補足情報があれば記載してください」「はいかいいえで答えてください」といった指示も重要になります。

次に出力形式・範囲は「ですます調」「150文字以内」といった指定です。必須ではありませんが、希望がある場合は記載した方が良い内容です。背景・補足情報は、より出力の精度を高めるために追記する内容になります。

例えば、「その出力がほしい理由」「どのような立場で回答してほしいか」「対象はどのような人か」といった指定です。これらの記載を行うことで、よりニーズに合った回答を得られる可能性があります。

プロンプトエンジニアが行う内容

プロンプトエンジニアとは、AIからの出力を狙い通りにするために、データ分析やテストを行うエンジニアのことです。単に入力を繰り返すだけでなく、ある程度は技術的な領域も担当します。ただし他のエンジニアに比べると、技術というよりは自然言語の入出力を繰り返しながら思考錯誤するような業務が多いでしょう。大枠では以下のようになります。

プロンプトの設計・開発

プロンプトの設計・開発は、AIに対する入力を考え、実際に試したり情報をまとめたりするということです。たとえばAIのコードを分析するようなことではなく、実際に入力しながら思考錯誤するイメージになります。

AIモデルの分析

AIモデルの分析は、コードの分析なども行う場合があります。ただし自社の製品などを扱っているプロンプトエンジニアでないと、そもそもコードの中身を見れないこともあります。そういった場合は、ロジックを推測しながら自然言語での入力を繰り返すことになります。

プロンプトの最適化・改善

上記の作業を踏まえて、最適なプロンプトを模索していきます。また最適なプロンプトをフォーマット化、マニュアル化し、社内の他の担当者も利用できるようにすることも業務に含まれる場合が多いでしょう。

プロンプトエンジニアに必要なスキル

プロンプトエンジニアには複数のスキルが求められます。

AIの知識

プロンプトエンジニアは自然言語での入出力を繰り返すということでしたが、やみくもに入力しているだけでは良いプロンプトを作れません。そのため、そもそもAIがどのような仕組みで出力を行っているのかを知っている必要があります。入力から出力までの過程には必ずロジックが存在するので、そのロジックを把握するということです。

自社製品ならコードを分析できますが、コードが明らかになっていないAIもあります。このようなAIを分析する場合は、AIロジックの基礎に当てはめて推測しながら入力を行います。

自然言語処理(NLP)の知識

自然言語処理とは、日本語や英語でどのようにAIに指示を出せば効率的かということです。人間同士のやり取りでは、感覚的に自然言語を扱っていることが多いでしょう。しかしAIは自然言語を細分化し、機械的に処理しています。

専門的には形態素解析といって自然言語を分解するアルゴリズム(AIは形態素解析を行って自然言語を処理します)があるのですが、平たく言えば文法です。日本語でも英語でも学校で習ったような文法がベースになっているので、文法に正確に入力文を作成することが重要になります。

ドメイン知識とビジネス理解力

プロンプトエンジニアリングは最終的にビジネス課題を解決するために存在します。どのような問題を解決するためにAIを使っているのか、どのような出力が得られれば良いのか、といったことをあらかじめ明確にする必要があります。

AIを使ってビジネス課題を解決するためには、ビジネスへの理解とドメイン知識が必須です。ドメイン知識とは、対象ビジネスの特定領域の知識のことです。要するに、AIだけでなくそもそも解決すべき課題について理解を掘り下げることが重要ということになります。

プログラミングスキル

プロンプトを作成するだけならプログラミングは不要なのですが、AIのロジックを理解することや、派生するAI開発などにはプログラミングスキルが必須です。AI開発ではPythonが使用されるケースが大半なので、Pythonのスキルが必要になります。

言語化・文章スキル

自然言語処理と類似しますが、自然言語処理で細分化したパーツで文章を組み立てるスキルが必要です。言い換えれば、自然言語を分解できるだけでもNG、感覚的に文章を書けるだけでもNGということです。AIが正確に処理できる正しい自然言語で文章を構成するスキルが必須になります。

英語力

AIの多くは英語がベースになっています。他の自然言語が入力された場合、英語に変換してから処理されていると言われることも多いです。(複数のAI開発者がこのような趣旨の発言をしていますが、詳細は非公開になっています。)

英語以外の自然言語で入力すると変換の処理が入るのでその分精度が落ちてしまいます。精度を落とさないためには、英語で入力するのがベストです。

創造力

最適なプロンプトの生成は機械的に行われる部分も多く、また効率を考えると機械的に行うべき部分が多いと言えるでしょう。しかし、発想を転換することで突然良いプロンプトが生まれることもあります。それはAI開発者でも気づかなかったアイデアの可能性もあるでしょう。そのため、柔軟な創造力も必要です。

まとめ

AIを課題解決のために適切に使うためには、プロンプトエンジニアリングが必須です。やみくもに入力するだけでなく、論理的に最適な入力を組み立てていく必要があるということです。今後はさらにいろいろな課題がAIによって解決されるようになるでしょう。

見方を変えれば、いろいろなプロンプトが必要になるということです。AIのロジックを考慮した、また柔軟な発想で作られたプロンプトが増えていくはずです。これらをすべて自身で考えるのは難しいので、人が考えたプロンプトに多く触れて、真似しつつオリジナルを作っていくのがおすすめです。