DX推進する組織の新設と業務提携の最新動向【2021年1月〜8月】

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新たなデジタル時代を生き残るために、様々な企業がDXの推進に力を注いでいます。

デジタル技術を活用し、業務や働き方、組織のあり方、商品・サービスやビジネスモデルを変革させ、競争力を高めようとしているのです。

本記事では、2021年に入ってから企業が行っているDX推進活動の具体例をいくつかピックアップしてご紹介していきます。DXを進める上でのご参考に活用ください。

<目次>

DX推進の動きと傾向

DXを推進する組織新設の動き7選
サミット、「DX推進グループ」新設
ユナイテッドアローズ、DX推進センターを設立
DX不動産推進協会設立
塩野義製薬、DX推進本部の新設
日本郵政、DX推進の新会社「JPデジタル」設立
ジェイテクト、「DX推進室」新設
ISID、スマートシティや自治体DXを推進する「スマートソサエティセンター」を新設

DX推進に向けた業務提携の動き5選
資生堂、アクセンチュアと合弁会社 「資生堂インタラクティブビューティー株式会社」を設立
日本通運とNEC、DXによる価値共創に向けた業務提携契約を締結
千葉銀行、チェンジと提携でDX推進
読売新聞社、読売巨人軍とドコモがオフィシャルDX推進パートナー契約を締結
日本IBMとJTB、DX推進で共同出資の企業設立

まとめ

 

DX解説書

DX推進の動きと傾向

昨今よく聞く「DX」は、ご存知の通り、デジタルトランスフォーメーションの略です。

今では様々な領域でDXと騒がれていますが、発端は2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が発表した論文、「ITと豊かな暮らし(Information Technology and the Good Life)」だと言われています。この論文の中では、人間の生活の様々な面においてデジタル技術が影響または引き起こす変化のことを、デジタルトランスフォーメンションと解釈しています。

その後、日本でDXがよりビジネス的文脈として定義され浸透し始めたのは、IDC Japanが2017年末に発表したレポートが皮切りとなっており、2018年に発表された経産省の「DXレポート」ではDXの早急な推進が求められていることを述べています。

しかし、現状としては日本でのDXへの取り組みはまだ不十分とされています。DX推進の障壁として、既存のシステムの老朽化、ブラックボックス化などが挙げられます。さらに、「DX=レガシーシステム刷新」、または競争優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要、といった本質とずれた解釈がされていることも挙げられるでしょう。

このような現状の中でも、コロナウイルスの影響もあり、DXの必要性を実感する局面が増え、様々な領域においてDX推進の動きが日に日に目立つようになりました。特に、DX組織の新設、DXに向けたベンダーとユーザー企業の業務提携(パートナーシップ)、DX人材確保の動きが目立ってきています。

関連記事 不足する「DX人材」に必要なスキルや確保の仕方

DXを推進する組織新設の動き7選

具体的に直近ではどのような動きがあるのでしょうか。

ここでは、DXを推進するための動きとして、2021年に入ってからの組織新設の動きをピックアップし、それぞれの内容を紹介していきます。

サミット、「DX推進グループ」新設

サミット株式会社では、4月より新たにDX推進グループを設けています。このタイミングで、経営企画グループを新設したり、経理部や情報システム部内のいくつかの組織を廃止したりし、取り組むべき業務・課題を明確にして業務を効率よく進めることを目指しています。

参考:機構改革について

ユナイテッドアローズ、DX推進センターを設立

株式会社ユナイテッドアローズでは、4月にDX推進センターを新たに設立し、デジタル技術を駆使した新たな顧客価値の提供やOMO時代に向けたビジネスモデルの確立を進めています。DX推進センターの傘下には、ネット通販店舗の運営からCRM戦略立案・実行、ソーシャルメディア運営を行うデジタルマーケティング部門、情報システム部門、自社ネット通販サイトの開発を行う自社EC開発室があり、この新部門は業務改革機能も持っています。

顧客の理解を深め、オンライン・オフラインの各種チャネルを通じて、場所や時間の制約を超えたシームレスな接客サービスを提供しようとしています。さらに各部門と連携し、サプライチェーンや人事活動、接客活動などに様々な局面でデジタル技術を導入することで社内フローを最適化し、生産性の向上を図っています。

参考:株式会社ユナイテッドアローズ DX化を推進 DX推進センターを設立し、デジタル技術を駆使した新たな顧客価値の提供、ビジネスモデルの確立を目指す

DX不動産推進協会設立

株式会社Casa、株式会社Robot Home、プロパティエージェント株式会社、株式会社GA technologies、株式会社AMBITION、株式会社ZUU、株式会社シーラホールディングス、株式会社Residence kitは共同で昨年12月に一般社団法人DX不動産推進協会を設立し、今年4月に設立総会が行われました。

DX不動産推進協会は、IoTやAIなどの先進技術を利活用し、不動産業界でもDXを推進していくことで、未来の不動産の品質や売買のあり方を変えることで、国⺠生活の住生活環境・利便性向上に寄与することを目的としています。最優先課題として「不動産取引の全面電子化」を掲げており、民間の立場から積極的な政策提⾔を行っていくとのことです。

参考:DX不動産推進協会設立のお知らせ

塩野義製薬、DX推進本部の新設

塩野義製薬株式会社は、2021年7月1日にDX推進本部を新設しました。この部門では、デジタル技術を用いたヘルスケアソリューションの創出や、そのためのデータ活用やIT/セキュリティ基盤の構築を行うなどの役割を担います。

参考:組織の改編と人事異動について

日本郵政、DX推進の新会社「JPデジタル」設立

新しい価値の提供を目指す「デジタル郵便局」の実現をリードする組織として、日本郵政は2021年7月1日に株式会社JPデジタルを設立しています。

JPデジタルは、日本郵政グループ各社及びグループ外企業に対するDX推進の支援や、グループ各社から依頼されたデジタル関連サービス・ ソリューションの開発・試験・運用、デジタルテクノロジーを活用した新規サービスの企画・構築・提供・運用、デジタル人材育成を事業としています。

参考:株式会社JPデジタルの設立について~デジタル郵便局の実現に向けて~

ジェイテクト、「DX推進室」新設

株式会社ジェイテクトは、2021年8月1日にDX推進室を社長直轄の全社横断組織として新たに設置しました。DXによって社内の仕組みを統一しながら人が介在しなくてもよい業務の自働化やIT化を進めることで、2030年までに人が付加価値を創出する業務のみに注力できる環境を整備することを目的にしています。

参考:「カーボンニュートラル戦略室」および「DX推進室」の新設について

ISID、スマートシティや自治体DXを推進する「スマートソサエティセンター」を新設

株式会社電通国際情報サービスは、8月1日、全社横断部門であるX Innovation本部内に「スマートソサエティセンター」を新設しました。

このセンターは、スマートシティや自治体DX、脱炭素化などの社会課題対応型ビジネスの推進を目的とし、持続可能なまちづくりに向けてコンサルティングからITソリューション導入支援まで、全社横断で推進していくとされています。

参考:ISID、「スマートソサエティセンター」を新設~スマートシティや自治体DX、脱炭素化などの社会課題対応型ビジネスを推進~

DX推進に向けた業務提携の動き5選

次にDXを推進していくための業務提携事例を5つピックアップしていきます。それぞれの目的や背景などを見ていきましょう。

資生堂、アクセンチュアと合弁会社 「資生堂インタラクティブビューティー株式会社」を設立

資生堂インタラクティブビューティー株式会社は、資生堂とアクセンチュアの合弁会社でとして2021年7月に設立されました。資生堂およびグループ会社にデジタルマーケティング業務とデジタル・IT関連業務を提供しています。

資生堂インタラクティブビューティーはDXを加速させ、日本の事業モデルを革新していくことを目的としています。この新設会社の中にはDX本部とIT本部が存在し、DX本部ではリアルとデジタルを融合したオムニエクスペリエンスを通じて、ビューティーの世界に新しい価値を生み出していくことを目指しています。

参考:資生堂、アクセンチュアと合弁会社 「資生堂インタラクティブビューティー株式会社」を7月に設立

日本通運とNEC、DXによる価値共創に向けた業務提携契約を締結

日本通運とNECは、2021年6月17日にDXによる価値共創に向けた業務提携契約を締結しました。短期的な取り組みとして、IoTを活用した倉庫オペレーションの効率化・省力化・無人化、中長期的な取り組みとして、デジタル技術を活用した両社の新たな事業の発掘と創造を実施するとのことです。

参考:日本通運とNEC、DXによる価値共創に向けた業務提携契約を締結

千葉銀行、チェンジと提携でDX推進

千葉銀行はITやAIを使ったサービスを展開する株式会社チェンジと8月より業務提携し、DXを推進しています。地元の特産品やサービスの販路拡大や新型コロナウイルス禍に対応した支援などの実施を検討していくとされています。また、DX人材の育成も掲げており、行員の研修実施や出向受け入れ、人事交流などを通じて行員のスキルアップを目指しています。

参考:株式会社チェンジとのDX推進における業務提携について

読売新聞社、読売巨人軍とドコモがオフィシャルDX推進パートナー契約を締結

読売新聞東京本社、読売巨人軍とNTTドコモは、今年3月に2023年シーズンまでの3シーズンにおけるオフィシャルDX推進パートナー契約を締結しています。

このパートナー契約では、ファンエンゲージメントの強化や安心、安全かつ快適な観戦環境の確立などを目的としています。2021年シーズンでは、観戦体験向上のためのコンテンツ制作やジャイアンツオンラインストアへの「d払い®」導入など、テクノロジーを活用することでファンの満足度を高めることを掲げています。

参考:(お知らせ)読売新聞社、読売巨人軍とドコモがオフィシャルDX推進パートナー契約を締結 -「OFFICIAL DX PARTNER」を新設し、テクノロジーを活用したファンサービスの充実を推進-

日本IBMとJTB、DX推進で共同出資の企業設立

日本IBMとJTBは4月に、観光業のデジタル化を推進する「I&Jデジタルイノベーション」を共同出資で設立しました。新会社はJTBグループ向けのシステム開発や運用などを手がけます。前身のJTBの完全子会社「JTB情報システム」が培ってきたJTBグループ向けシステム構築の経験に、日本IBMの最新技術の知見を加え、JTBグループのDX推進を掲げています。

参考:日本IBMとJTB、DX推進で共同出資の企業設立

まとめ

今回ピックアップしたDX推進の企業の動きはごく一部です。DXの取り組みがまだ始まったばかりの段階のケースがまだまだ多いですが、新型コロナウイルスが後押しする形で急激にDXが推進されています。今、いかにデジタル技術を用いて新たな価値を提供し、新たなビジネスチャンスを手にすることができるかが、企業の存続にかかっていると言っても過言ではありません。今後はDXの取り組みの成功事例も増えていくことが期待できます。最新情報を捉えつつ、改めて今後のDXの進め方を検討してみる良いタイミングとも言えるでしょう。