
ビジネスでUXデザインを意識することが増え、注目を集めているのが「UXリサーチ」です。
UXリサーチを実施することで、エビデンスにもとづいて意思決定ができる点から、製品・サービスを開発する上で重要かつ欠かせないプロセスと認識されるようになってきています。
しかし、UXリサーチの必要性を感じているものの「時間が掛かりそう」「やり方がわからない」「予算が確保できない」という悩みを抱えていて、実施できない企業も多いかもしれません。
また、実際にビジネスでUXリサーチをどのように活用すればよいのか、理解している方は多くはありません。
今回は、UXリサーチとは何か、実施する目的や手法について、詳しく解説していきます。
<目次>
UXリサーチとは
・UXリサーチの概要
・UXリサーチの目的
UXリサーチの進め方
・スモールリサーチ
・探索型リサーチ
・検証型リサーチ
UXリサーチのポイント
・継続すること
・テストではないことを理解する
UXリサーチの事例
・位置情報検索サービススマホサイト(NTTドコモ)
・役立つ情報をお届けアプリ「my daiz(マイデイズ)」(NTTドコモ)
UXリサーチとは
まずは、UXリサーチを以下の項目に分けて、解説していきます。
- UXリサーチの概要
- UXリサーチの目的
順番にお伝えします。
UXリサーチの概要
UXリサーチをかんたんに説明すると「ユーザー体験に関わる調査」を指します。
ユーザー体験とは、人がある製品やサービスを認知してから、購入したり、利用したりなど、製品・サービスと人のやりとりを意味する言葉です。英語では「User Experience」と言われ、「UX」と略称されます。
人と製品やサービスとの関係性を高めるために、ユーザー体験を設計して組み立てることを「UXデザイン」と言います。UXリサーチは、UXデザインのプロセスの一部であり、ユーザーのニーズを把握したり、問題を見つけ出したりするための調査を担っています。
UXリサーチの目的
UXリサーチを実施する大きな目的はユーザーの現状把握と「ユーザーニーズ」を知ることです。
ユーザーニーズとは、人が生活する上で感じている「理想」と「現状」の差をなくすための「欲求」や「願望」を意味します。理想の状態に近づけるために「どんな悩みを抱えているのか?」「何が必要なのか?」を想像すると、わかりやすいかもしれません。
主にユーザーニーズは、以下の2つに大別されます。
・顕在ニーズ
顕在ニーズとは、ユーザーが意識していて自身が把握しているニーズです。他人に説明できるニーズを指します。
調査方法としては、アンケートやインタビューが向いています。例えば「どのようなことに困っていますか?」と悩みを聞くことで、ニーズを説明してもらうことが可能です。
・潜在ニーズ
一方、潜在ニーズとは、ユーザー自身も気づいていない隠れたニーズのことです。無意識に感じているニーズを引き出さなければいけないため、把握するのが難しい言われています。
調査方法としては、インタビューやユーザーテストがあげられます。ユーザーが気づいていないニーズを探るには、インタビューで問いかけて質問するのが効果的です。「どうして、このような行動をしているのですか?」と問いかけることで、何気なくしている動作からニーズを探るきっかけがつかめます。
また、ユーザーインタビューで聞き出したニーズをヒントに、仮説を立てて「ユーザーテスト」を実施することも有効です。
UXリサーチの進め方
では次に、ユーザーニーズをつかむためのUXリサーチの方法について解説します。
UXリサーチは大きく分けて3つの種類があります。
- スモールリサーチ
- 探索型リサーチ
- 検証型リサーチ
抱えている課題や、状況に合わせて実施するとよいでしょう。
それでは、1つずつ説明してきます。
スモールリサーチ
UXリサーチを始めるのは、ハードルが高いものです。まずは、身近な人へのリサーチから始めて、UXリサーチへのハードルを下げましょう。時間、予算、上司や同僚からの理解を気にせずに、気軽にリサーチできます。
例えば、
- 1人に30分ヒアリング
- 家族や友人にサービスを使ってもらって感想を聞く
- 試作品を別の部署で使用してもらい、フィードバックを聞く
上記のように、すぐに始められる、身近な人への調査も立派な「UXリサーチ」と言えます。時間や予算を掛けずに、取り組みたいときに有効です。
探索型リサーチ
身近な人へのリサーチを実施したら、さらに課題をみつけるために「探索型リサーチ」に取り組みましょう。
探索型リサーチは、ユーザーへのリサーチにもとづき仮説を立てて、ニーズを深掘りするアプローチ方法です。顕在ニーズや潜在ニーズを把握するために行います。
具体的なリサーチ方法としては、以下の3つがあげられます。
- 自由記述式のアンケート
- ユーザーインタビュー
- ユーザビリティテスト
「自由記述式のアンケート」では、立てた仮設を記載した質問を投げかけ、文章で回答してもらうものです。実際にユーザーはどう思っているのか、自由記述してもらうことで、選択式にはない視点での結果も得られます。
「ユーザーインタビュー」では、時系列にそって、ユーザーと製品やサービスとの出会いや、利用している理由など「When」や「Why」の部分にフォーカスして聞いてみるとよいでしょう。ユーザーへの理解を深めたいときに役立ちます。
「ユーザビリティテスト」は、ユーザーがどのように製品を使っているのか「How」の部分に注目してみましょう。ユーザー目線で見ることで、思わぬ課題が発見できます。ほかにも、課題の優先順位をつけたいときに、ユーザビリティテストを活用するとよいでしょう。
検証型リサーチ
課題をすでに把握していて、解決するための仮説があるときに有効なのが「検証型リサーチ」です。
探索型リサーチをもとに立てた仮説が、ユーザーニーズにマッチしているのか、検証するためにも行われます。数字で裏付けできるように、定量調査がおこなわれます。
具体的なリサーチ方法としては、以下の2つがあります。
- コンセプトテスト
- ユーザビリティテスト
「コンセプトテスト」は、課題の解決策が具体的にきまっていない場合に、有効です。解決策として考えているアイディアをイラストや文字でかんたんに視覚化して、ユーザーが理解できるのか、またどのような反応があるのかテストします。
「ユーザビリティテスト」は、解決策をもとに試作品があるときに実施するとよいでしょう。ユーザーに使ってもらうことで、具体的な改善点が見つけられます。
UXリサーチのポイント
UXリサーチを実施する際に、気をつけなければいけないポイントがあります。
気をつけるべきポイントは、以下の2つです。
- UXリサーチを継続すること
- テストではないと理解すること
UXリサーチのポイントを、それぞれ解説します。
継続すること
UXリサーチは、一度だけでなく、継続してリサーチしていくことが大切です。時代や生活の変化によって、ユーザーのニーズも日々変わっていきます。
古いデータを使い続けていると、ユーザーニーズを正確に把握できません。継続的にUXリサーチを実施して、データーをアップデートしていくことを意識しておきましょう。
UXリサーチはテストではないことを理解する
UXリサーチで、気をつけたいのが「テストではない」と理解しておくことです。
ユーザーインタビューやユーザビリティテストを実施すると、どうしてもユーザーの反応が気になってしまいますが、ユーザーの反応で一喜一憂する必要はありません。ユーザーの反応が良かった点は、さらに伸ばすべきポイントと捉え、反応が悪かった点は、改善策を考えるきっかけが得られます。
UXリサーチは、「どのようにしたら喜ばれるか?」「使いやすくなるか?」を深堀するための場として考えましょう。
UXリサーチの事例
これまで、UXリサーチの概要や取り組み方をお伝えしてきましたが、実際にUXリサーチが導入された事例をみていきましょう。
テックファームが提供する、UX改善サービス「UI/UX まるっと診断」は、ハードルが高いUXリサーチをプロ目線で診断して、改善方法を提案できるサービスです。実際の利用者に、ユーザビリティテストを実施するので、課題の発見もスムーズです。
今回はテックファームの提供する「UI/UX まるっと診断」を利用した、NTTドコモ様の事例を2つご紹介します。どのようにUXリサーチを導入すべきか悩んだときにお役立てください。
位置情報検索サービススマホサイト(NTTドコモ)
NTTドコモ様が提供する、位置情報検索サービス「イマドコサーチ」について、新機能の使い勝手や、改善点をみつけるためのUXリサーチをおこないました。
親が子どもの居場所を把握するために利用するサービスのため、親側と子ども側に対して、ユーザビリティテストを実施。ユーザビリティテストでは、サイトのどの部分でつまずいているのかなど、サイトの課題を発見できました。
NTTドコモ様からは「気軽に試しやすい金額で、品質の高いレポートを提案いただけた」とのお声をいただき、短期間で課題を見つけ、改善方法を知るきっかけにつながっています。

UI/UX診断レポート抜粋
役立つ情報をお届けアプリ「my daiz(マイデイズ)」(NTTドコモ)
NTTドコモ様が提供する、ニュースや天気などお役立ち情報アプリ「my daiz(マイデイズ)」のリニューアルについて、UIやユーザーの認知度を知るために、UXリサーチを実施しました。
ユーザビリティテストでは、下記の点をリサーチしています。
- 離脱ポイントや操作の達成率、使い勝手の良さ
- 利用率の低いユーザーからの、アプリへの評価など
- これまでの結果を踏まえた分析と、改善アイディアの検討

UI/UX診断レポート抜粋
自社リサーチでは見つけにくい問題を、客観的な立場で発見することが可能です。また、ユーザビリティテストにもとづき、改善アイディアを提案しています。
まとめ
UXリサーチの需要は高まっているものの、ハードルが高く、導入するのが難しいと、躊躇してしまう企業が多いかもしれません。しかし、UXリサーチは、プロダクト構築に必要なエビデンスを得たいときに有効な手段の1つです。
新規プロダクトを作りたい場合も、既存のプロダクトを改善したい場合も、ぜひUXリサーチの導入を検討してみてください。