顧客体験(CX)とは?注目の背景と向上させる取り組み

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近年、「顧客体験」という言葉をよく聞くようになりました。

顧客が触れる情報が増え、企業と顧客の接点も増え、どの接点も感情を動かす起点となりえる今、あらゆる接点において良い体験を提供することが重要視されているのです。

では、ここで言う「体験」とは具体的になにを指すのか、そして顧客体験はどのように良くしていくのか、本記事で詳しくご紹介していきます。

顧客体験(CX)とは

顧客体験とは、顧客が製品・サービスを購入する前から、購入するとき、利用しているとき、利用した後に経験する一連の体験のことを言います。

つまり、製品・サービス自体が顧客に与える価値・体験だけでなく、製品・サービスを提供する企業とのあらゆる接点を評価する考え方です。

顧客との接点は、例えば以下のようなシーンがあげられます。

  • 製品・サービスの情報や口コミを調べる
  • サイトのフォームを入力する
  • 商品を見に店舗に行く、商品を探す
  • 商品を購入するためにレジに並んで会計する
  • 製品・サービスを利用する
  • アフターサービスを受ける
  • 次回利用の案内を受け取る

このように、製品自体と直接は関連していなかったり提供企業発信ではなくても、様々なシーンが顧客接点として捉えられ、顧客体験の対象になるのです。そして、良い顧客体験を提供することによって、LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)を引き上げたり、顧客のロイヤリティを向上させることができます。

なぜ今、顧客体験なのか

ではなぜこのタイミングで、顧客体験がここまで重要視されるようになってきたのでしょうか。ここで3つの背景を見ていきます。

スマホやSNSの普及による顧客接点数の増加

ここ2~3年で顧客体験が重要とされてきた背景の1つに、企業と顧客との接点が増加したことがあげられます。

多くの人が当たり前のようにスマホを利用するようになり、SNSやチャットでコミュニケーションを取ったり、情報収集はWebサイトやSNSを通して行うことが普通になりました。また、情報発信は企業だけでなく、個人でも容易にできるようになりました。今や企業のWebサイトを見なくても、企業の商品やサービスを知ることができる程、SNSで個人が発信する情報が影響力を持っています。

こうしてわかるように、企業が発信する情報へのアクセスが簡単になっただけでなく、企業が発信していなくてもその企業に関する情報がWeb上で見つけることができるようになったのです。

データ取得・活用技術の発展

もう一つの要因として、マーケティングに携るIT技術の進展があげられます。

技術が進展したことにより、チャネルを横断した顧客購買情報や購買のきっかけとなった広告の分析、顧客の位置情報など、様々な顧客に関する情報を詳細に取得することが可能となりました。

顧客ごとの細かい情報を取得できるようになったことで、常にコンシェルジュが接客しているかのように、あらゆる体験において顧客一人一人にあわせた対応が実現可能になってきているのです。

「コト消費」や「トキ消費」へのシフト

コト消費の浸透、そしてトキ消費へのシフトも、顧客体験が重要性を増す要素となっています。

約20年程前から増えてきたこの「コト消費」は、体験を対象とする消費活動です。

商品やサービスの機能そのものよりも、それによって得られる体験に価値を感じ対価を払うことが、今ではすっかり浸透しました。高級車を保有することよりも、自由に移動できることに価値を見出す人が多くなったのです。訪日インバウンドの傾向も爆買いから観光へとシフトし、体験が重要視されるようになっていますね。

さらには、最近少しずつ聞くようになった「トキ消費」へのシフトもあります。

特定のその”時”、その場所でしか味わうことのできない体験を求める傾向が増えてきています。例えば、ハロウィンの渋谷スクランブル交差点、Ultraのようなフェス、街で観戦するサッカーW杯、チームラボの体験型ミュージアムなどが当てはまります。限定された”時”にする体験だからこそ価値があるという、新たな思考が生まれてきているとされているのです。

顧客体験を向上させる4つのポイント

顧客体験を向上させる際のポイントは、以下に示す4点があります。

現状の顧客体験を把握する

顧客体験を向上させるためには、まず現状の顧客体験を把握することが重要です。顧客体験は、以下の3つのフェーズに分けることができます。

  • 情報収集フェーズ(購入前にWebサイトやSNS、雑誌・チラシ、口コミなど)
  • 購入フェーズ(店舗来店、接客、カート入れ、会計・決済など)
  • 利用フェーズ(商品の利用、故障時の対応、次回利用の案内など)

それぞれのフェーズについて企業と顧客との接点をもれなく洗い出し、時系列に並べましょう。その際に、顧客の立場に立って項目をピックアップすることが重要です。また前後関係が明確になることで、課題も発見しやすくなります。

加えて顧客体験の現状を、数値で把握することも重要です。指標の例として、ネットプロモーターズスコア(NPS)があげられます。NPSが高いほど、顧客体験の満足度が高いことを示します。

課題を明確にする

顧客体験を把握した後にすべきことは、それぞれの接点において課題を明確にすることです。以下のポイントを考慮しながら課題を見つけるとよいでしょう。

  • その接点において、顧客の「声なき声」に目を配れているか
  • その接点の顧客それぞれの事情に沿った課題であるか
  • その接点では顧客の期待を上回る価値を与えているか

顧客の要望や不満を解決するための活動は顧客満足度の向上にすぎず、顧客体験の向上には繋がるとは限りません。製品やサービスに対して顧客が価値を感じ、知人に勧めるレベルにまで顧客体験を高めてもらえるよう、課題を設定することが重要です。

この観点では、購入やサービスの利用をキャンセルした人の情報も参考となります。利用をキャンセルした人は何らかの不満が理由となりますから、その人の顧客体験を分析することにより、課題を見つけ出すことが可能です。

指標を設定する

顧客体験の向上を評価するためには指標を設定し、数値による評価を行うことが求められます。

指標の設定には、「現状の顧客体験を把握する」でも述べたNPSを利用することが、適切な方法の1つです。またそれ以外にも、必要度や感動指標などがあるので、適切な指標を選んだ上で目標を設定することが重要です。

全社で取り組む

顧客体験は、その製品やサービスに関するすべてが対象となります。このため、どこかのフェーズで顧客の期待を裏切るようなことがあると、顧客体験の評価は大きく下がることになります。

例えば家電製品そのものは使いやすくても、配送が遅かったり、良い口コミが目立たなかったり、問い合わせ窓口の対応が悪い場合は、もうそのメーカーの製品は購入しなくなるかもしれません。

このように顧客体験の向上活動は、一部の部署で行っても効果が上がりにくい特徴があります。従って、全社で取り組むことが必須です。特に部署をまたがる対応が必要なケースにおいて顧客体験が低下する場合が多いため、重点的な対策が必要となります。

まとめ

顧客は商品・サービスそのものだけではなく、それに関わる一連の体験を評価するようになりました。

顧客関係マネジメント(CRM)や顧客満足(CS)といった観点では、すでに何かしらの取り組みをしている企業が多いです。しかし顧客体験(CX)となると、少し異なる取り組みが必要になることはイメージできましたでしょうか。

良い顧客体験は、商品・サービスが提供できる価値を越えた新しい形の価値を顧客に感じてもらうことを実現させます。そうすることで、中長期的な企業のファンとなっていくのです。

全社一丸となって顧客目線で課題や問題を取り上げて顧客体験の向上に取り組むことが、これからの企業の成長には必要不可欠だと言えるでしょう。