デザイン思考を活用した使われるアプリ戦略の進め方

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スマートフォンの普及を背景に、誰もが気軽に情報を発信できる時代になりました。

今、消費者の限られたアテンションを獲得し、ビジネスの発展を図ることは容易ではありません。

そうした中、ユーザーからの支持を獲得し続けるためには、スマートフォンアプリを基点とした「サービスデザイン」の発想が求められます。

本記事では、デザイン思考を活用したアプリ開発の基本をご紹介します。

使われるアプリ戦略①:「使われ方→伝え方→作り方」の順番で考える

プライベートやビジネスのあらゆるシーンでスマートフォンが活用されている今、長らくアプリを使い続けてもらうためには、そのアプリが「どんなシーンで」「どのように」使われるのか、予め具体化したうえで仕様に落とし込む必要があります。

ここで欠かせない観点が「顧客視点」です。

顧客はどのような悩みを解決し、どのような願望を叶えるためにそのアプリを使用するのか。使う前と使った後では、どのような状態の違いが生まれるのか。当事者の立場からそのアプリの「使われ方」を思考することが、顧客に使い続けてもらえるアプリの企画につながります。その上で、ユーザーに伝えたい情報をどのような手段・方法で顧客に伝えるのか(=「伝え方」)を検討します。

このように、アプリの開発段階に入る前には、「使われ方」と「伝え方」といったサービスデザインのプロセスが必要不可欠です。この2つが十分に検討されて初めて、それを実現するための開発手順・手法の議論に進むことができます。

ではこれらの点を踏まえると、ユーザーに選ばれ続けるサービスを提供するアプリと、そうでないアプリの違いはどのような点にあるのでしょうか?

使われるアプリ戦略②:顧客への「提供価値」から考える

ユーザーから支持され続けるサービスは、どれも共通して「顧客にどんな価値を提供するのか」が明確化されています。ここでいう「提供価値」が曖昧なサービスは、ユーザーから一向にダウンロードされないか、もしくは一度ダウンロードされても、数回利用された後にその存在を忘れ去られてしまうでしょう。

顧客への提供価値を明確化するためには、移ろいゆく顧客のニーズを捉えるだけではなく、顧客自身も気づいていないような、潜在的な願望や課題(=顧客インサイト)を見極める必要があります。

例えば、世界的に有名なタクシーの配車アプリサービス「Uber」は、タクシードライバーと乗客を直接結びつけ、少ない待ち時間で目的地まで移動することを可能としています。しかし、そこで提供されている価値は、「早い」「便利」ということだけでなく、「ドライバーの評判が見える」「到着までの所要時間や概算料金を予め把握でき、直接現金のやり取りを行わなくて済む」といった安心感でもあることを見逃してはなりません。

また、某ニュースアプリでは、ユニークな視点から編集されたコンテンツが高い評判を得る一方で、他の読者のコメントを可視化したり、イベントやコミュニティに会員を結びつけたりすることで新たな価値を提供し、高い支持を得ています。

このように、顧客への提供価値を考える上では、表層的なニーズだけでなく、深層にあるインサイトを捉えることが大切です。

使われるアプリ戦略③:「シンプル・便利に・使いやすく」

提供価値を明確化することができた次の段階では、ユーザーに便利さを提供するためのUI設計を行います。昨今、多くのユーザーは、高速化したネットワークやスムーズに動作する端末に慣れ親しんでいます。だからこそ、少しの待ち時間や複雑な操作ステップでも、手間や不便さ、ストレスを感じてしまいます。

そしてそういった手間やストレスは、アプリの作り手側からすると意外なほど気付きづらいものです。ユーザーから長らく支持を受け、愛され続けるためには、常にユーザーを主語にしたデザインをすることが必要不可欠といえます。

だからこそ、モックアップやプロトタイプをつくり、ユーザー目線からサービスを見直すプロセスが多くの企業に取り入れられているといえます。

使われるアプリ戦略④:優れたUIデザインは必須条件

テクノロジーが進化し、あらゆる技術がコモディティ化する今、優れた機能を提供するサービスは数えきれないほど存在します。膨大なコンテンツを低価格で閲覧することができたり、大容量のデータを短時間で送受信できたりするサービスの例を挙げれば、枚挙にいとまがありません。

しかし、それらの多くが数ヶ月から数年でユーザーからの支持を失い、サービス終了に追い込まれています。その多くの原因とされているものが、優れたUIデザインの欠如です。

これは皆さんが普段使用しているアプリを思い浮かべてみていただけると、イメージしやすいはずです。無料で優れた機能を持っているアプリでも「ボタンやメニューが見づらく、操作しづらいためイライラする」「探している機能が見つからず、ストレスを感じる」といった短所があると、次回から使用を避けてしまうのではないでしょうか。

継続して使い続けてもらうためには、「シンプル・便利・使いやすい」といった基本を押さえたUIデザインが欠かせません。機能が増えるほどにUIが複雑化するケースも珍しくないため、例えアップデートを重ねたとしても徹底したシンプルさを維持することが重要です。

顧客インサイトを満たすサービスデザインを

顧客視点から「提供価値」の定義と「UIデザイン」を行うことは、いわれてみると当たり前のことのように思えるかもしれません。しかし、多くの企業がこういった思想や哲学に触れながらも、その考え方を実践できずにいます。ここで成否を分けているのは、前述した顧客インサイトに対峙する姿勢ではないでしょうか。

顧客の潜在的な願望や課題を把握し、共感し、自社サービスの提供価値へと落とし込むことは、表層的なアプローチでは実現できません。ユーザーの願望や課題を自分ごととして捉えた上で、その解決に向けたサービスデザインに取り組む必要があるのです。

作り手の発想を脱却し、いかにユーザー目線に立つことができるか、という点が勝敗を決します。顧客インサイトを120%満たすことを目標に据えて、顧客視点に立ったサービスデザインに取り組んでいきましょう。