多くの企業がPoC(概念実証)を終え、生成AIを実際の業務フローへと本格導入し始めた2025年。AIは「試すもの」から「実務を動かすパートナー」へとフェーズを変え、自律的にタスクをこなすAIエージェントの活用が一般的になりました。
こうした「AIの社会実装」が加速した1年を経て、迎える2026年。テクノロジーの波は、デジタルとフィジカルの完全な融合へと向かっています。
本記事では、米ガートナー社が発表した「2026年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」を軸に、テックファーム顧問がプロの視点で「今、注目すべき技術」を厳選。
2026年のビジネスシーンを塗り替える最重要トピックを詳しく解説します。
<目次>
2026年技術トレンド5選
・AIネイティブ開発プラットフォーム
・AIスーパーコンピューティング・プラットフォーム
・ドメイン特化言語モデル
・先制的サイバーセキュリティ
・デジタル属性
2026年技術顧問が注目する技術3選
・家庭用2足歩行ロボット
・Wi-Fi 8
・コーディングAI オーケストレーション
技術顧問注目の2026年トレンド5選
ITコンサルティングファーム企業のガートナージャパンが発表した戦略的テクノロジートップ・トレンドを発表しました。
リリースされているeBookより、当社の技術顧問が特に注目する技術ベスト5をピックアップしました。小林のコメントをそれぞれ紹介していきます。
AIネイティブ開発プラットフォーム
生成 AI を活用した開発により、少人数で動きの速いチームでも、スピーディかつ柔軟に、エンタープライズレベルのアプリケーションを構築できるようにします。
ガートナー社の予測は「2030年までにソフトウェア開発チームの80%はAIにより縮小する」とあります。
AIが人間よりも短時間で多くのソースコードを読み、書くことに異論を唱える人はいないでしょう。
現在すでに多くの技術者はAIによる支援機構を利用していて、ガートナー社の別の調査でも2025年10月にはその割合は80%にのぼることがわかっています。
それでもAIを開発者としてチームに参加させるのはまだまだ難しいと考える技術者が多数派と言って良いでしょう。AIの書くコードはチームの暗黙の合意をスルーし、雑なコードを大量に書き連ねます。そのまま人間がレビューするのはコードを書くよりも何倍もの手間がかかり、修正させる手間を重ねるうちに「これは本当に効率が上がっているのか?」という疑問に直面することになります。
だからこそ、我々はソフトウェアの生産方式を本質的に更新する必要があるようです。チームが少人数化するのは、その最大のメリットを切り取った一面とも言えるでしょう。大規模プロジェクトの人間どうしの情報共有は本当に大変ですが、その面ではAIが圧倒的に優勢です。
AIスーパーコンピューティング・プラットフォーム
高度なモデル学習やアナリティクスを可能にする一方で、コスト管理とガバナンスを慎重に設計することが求められます。
ガートナー社の予測は「2028年までに40%の組織がハイブリッド型アーキテクチャーを導入する」とあります。
AIへの注目と期待度がピークに達していたこの数年、AIを使うために必要なGPUリソースは不足し、クラウドは資源の取り合いになりました。AIに最適化したNVIDIA社の最新GPUボードは、ボード1枚で高級スーパーカー並の価格で売られていますが、本格的なモデル開発に取り組むには、これを少なくとも数千台単位で導入する必要があるのですから、都心に自社ビルを建てるよりも費用がかかります。
こうした状況は新技術によるハードウェアの多様化、新たなソフトウェアアーキテクチャーの発明、用途別の専門モデルの広がりによって緩和され、我々の業務の随所に入り込んでくるようになるはずです。
ドメイン特化言語モデル
金融・製造・医療・人事など、業界固有のユースケースに対して、汎用モデルより高い精度とコンプライアンスを提供します。
ガートナー社の予測は「2028年までに組織が利用する生成AIの半分は領域特化型になる」とあります。
2025年現在でも、生成AIの言語モデル競争は熾烈です。生成AIのトップ企業は数ヶ月ごとに新モデルを出してベンチマークの新記録を競っています。言語モデルひとつをリリースするためにかかる費用は数百億円とも言われ、だからこそ我々は汎用言語モデルを多くの用途に利用しています。
AIの利用が広がりを見せる中、もっと100分の1、1000分の1サイズのモデルが特定領域で力を発揮すれば、より小回りの利くビジネスが広がり、多くの企業が言語モデルを作るようになります。こうした専門型モデルを組み合わせて自社の競争力を高める創意工夫の幅も大きく広がり、市場の活性化が期待されています。
先制的サイバーセキュリティ
防御の重心を「攻撃を受けてから対処する」から「攻撃が成立する前に抑え込む」へ移し、AI を活用して脅威を事前にブロックします。
ガートナー社の予測は「2030年までにセキュリティー支出の半分は予防型になる」でした。
世界ではこの数年、ランサムウェアを軸としたサイバー攻撃が激増しています。日本でも2025年は大手企業が事実上の事業停止に近い状態まで追い込まれ、サイバー攻撃の与える影響を肌で感じた1年になりました。
セキュリティーの世界では、ウィルスに代表されるような医療用語のアナロジーが使われますが、予防型もまさにこの考えに沿ったものです。いざ感染し、発症してから大騒ぎをするのではなく、日常的に手洗い・うがい・マスクを徹底し、感染時の隔離や治療の訓練を重ねます。実際の医療とは異なり、疑似攻撃による訓練も非常に有効です。防火防災対策などと同様に、サイバー攻撃は日常的にあるものと、考えて常に備える姿勢が企業とすべての関係者に必要になります。
デジタル属性
ソフトウェア、データ、AI が生成したコンテンツの由来や完全性に関する属性情報を管理し、信頼とコンプライアンスの土台を提供します。
ガートナー社の予測は「2029年までにデジタル来歴への投資を怠ると数十億ドルの制裁リスク」。
AIの偽コンテンツがSNSを賑わせています。2025年現在、すでに我々は写真や動画が本物なのか偽物なのか、明確に判別することは困難な時代を生きています。
人類が生み出すデジタル情報は爆発的に増えています。写真や動画だけではありません。利用するシステムのソースコードも何百というオープンソースや他社製品に依存し、複数の多国籍ソフトウェアチームが開発する状況が当たり前です。
ソフトウェアの部品表としてのSBOMや、あらゆるデータなどの来歴証明は、これから安心できる製品を世に出すためには避けて通れない道になります。
テックファームエンジニア注目の2026年技術トレンド
続いて、テックファームエンジニアが注目する2026年のトレンド第1位をご紹介します。
フィジカルAI
ロボット、ドローン、スマート機器などを通じて知能を現実世界に持ち込み、倉庫・工場・フィールドサービスなどの現場オペレーションに直接的なインパクトをもたらします。
テックファームエンジニアが注目する技術の1つ目は、「フィジカルAI」です。
ガートナーは、2028年までに80%の倉庫が、ロボティクスや自動化を使用するとしています。
すでに活用が進んでいる企業もいますが、AI基盤モデルとの融合により、自ら解釈し最適解を導き出すフェーズへ突入しています。
人手不足に悩む製造・建設・物流の現場で、AIとロボットそれぞれのテクノロジーの融合で相互進化がより強まると言えるのではないでしょうか。
2026年技術顧問が注目する技術3選
続いてテックファーム技術顧問が選ぶ、2026年注目技術を解説していきます。ガートナーがピックアップしているものではなく、個人的に注目している技術を紹介します。
家庭用2足歩行ロボット
2025年10月28日、ノルウェーの1X Technologies社が家庭用2足歩行ロボットNEOの市販予約を開始しました。
実際の納品は米国で2026年以降、それ以外の地域は2027年以降とされています。買い切り価格は2万ドル、サブスクリプション形態の場合は月額499ドルです。
掃除機をかけたり、洗濯機を操作したり、洗濯物をたたむ様子がYouTube動画などで公開されています。サイズ感も動きも、まるで人間のようです。
最大25kgまでの荷物を持ち運ぶこともでき、少し早足の時速5kmで歩け、走ることもできるそうです。
2万ドルといえば、新車のマイカー1台分程度です。マイカーよりもマイロボットが先、そんな時代が近づいているのかもしれません。「ちょっと買い物してきて」そんな依頼で外をてくてくと歩いてきたロボットに、コンビニは商品を売ってくれるでしょうか。社会の受け入れ体制も真剣に考える必要があります。
Wi-Fi 8
派手な新技術とは違いますが、Wi-Fi 7の普及が進む中、2028年の正式仕様を目指してWi-Fi 8の標準化が進められています。ドラフト製品は2027年頃から市場に出回り始める可能性があります。超高速無線通信を目指してきたWi-Fi 7までの歴史から一変し、Wi-Fi 8は最重要課題として超高信頼性を掲げています。
従来と使い勝手を変えない中で、MAPC(マルチAPコーディネーション)により空間多重技術を拡充し、多くの利用者と多くのアクセスポイント(AP)があることを前提に電波の利用効率を大幅に高めて、多数同時利用での安定性が大きく向上することが期待されています。
コーディングAI オーケストレーション
AI言語モデルを活用したソフトウェア開発は、2022年頃のコーディング支援から、2025年はエージェント型に主流がシフトしてきました。
2026年以降は、さらにソフトウェア開発全体をカバーするようなオーケストレーションがパッケージングされるようになって行くでしょう。
ソフトウェア開発は、ビジネス要件や基本設計から、開発プロセス、品質保証や運用まで、さまざまな工程と関係者の間の複雑な作用によって実行されます。
人間を中心として長年作り上げてきたこれらのしくみは、プロジェクトを管理するためのツール群やテクニック、開発者の教育に至るまでが開発会社のノウハウとも言えるものですが、AIをこれに組み込むことは簡単ではありません。
しかし今後、AIが担うプロセスが増えるとともに、プロセス全体の再利用性や横展開が容易になり、マルチエージェントによるチーム体制全体をパッケージングするケースが増えて行くでしょう。人間とAIの協働体制は急速な進化を見せて行くことが予想されます。
2026年テックファームエンジニアが注目する技術
さいごに、テックファームエンジニアが注目する技術について紹介します。
MCPサーバー
MCPとは、Model Context Protocolの頭文字を取った略語で、生成AI(主に大規模言語モデル)が外部ツールやデータソースと容易に連携できるようにするための技術規格を表します。
私たちがPCを扱う中で、様々なファイルやアプリケーション、外部システムの橋渡しとなってくれるMCPサーバーは、複数のアプリをまたぐ作業をAIがユーザーの代わりに完結させることができます。
関連記事 MCP(Model Context Protocol )とは?初心者向けに仕組みをやさしく解説
スマートロボットのコモディティ化
スマートロボットは主にAIが搭載され自律移動が可能となるロボットを指します。
スマートロボットが家電のように安価で普及しやすくなることで、私たちの生活の一部となり手助けをしてくれます。例えば、掃除機をかけるだけでなく、洗濯が終わった後に畳んでくれるなどの家事をこなすロボットが普及するかもしれません。
オンデバイスAI
オンデバイスAIとは、スマートフォンやPC、タブレットなどの端末上でAIが処理を行う技術です。これは通信が不要でオフラインで高速処理が行われます。さらに、データ流出の心配がなくなり、プライバシーが保護されることが特徴です。
いつでもどこでも使えるAIに個人情報を学習させることで自分専用にカスタマイズも可能となります。
まとめ
テックファーム技術顧問とエンジニアが注目する技術とその注目の背景を解説していきましたがいかがでしたでしょうか。
私たちの生活にAIが当たり前になりつつありますが、いざビジネスでどのような活用できるかは引き続き着目する必要があります。
これらの技術から、自社にとってどのような活用が可能かを着目し、検討してみるのはいかがでしょうか。










