世界の最先端スマートオフィス5選

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スマートオフィスは、快適性や利便性、安全性と省エネが実現した最新鋭のオフィスです。

建物中に張り巡らされたセンサーが、従業員一人一人の場所、室内の温度や湿度、照度等を計測し、そのデータをもとにオフィスの環境が自動制御される。
そんな一昔前では近未来の世界観だったものが、全世界で次から次へと現実になってきています。

国内でもオフィス内の身近な課題を解決するオフィス内IoTが注目され、導入が進みつつある中、抜本的な改革を進める企業も増えてきています。

そこで本記事では、世界中で最もスマートと言われている最先端のスマートオフィスをいくつかご紹介します。新しい働く環境づくりやオフィスを起点とした新たな価値創造などのご参考になさってください。

年平均成長率13.6%!拡大するスマートオフィス市場

スマートオフィス市場は拡大する傾向にあります。

Mordor IntelligenceFior Marketsのそれぞれの最新の調査によると、2019年から2024年までの5年間で、13.6%以上の年平均成長率が予想されています。地域別にみると、最大のスマーオフィス市場はヨーロッパです。また最もポテンシャルの高い市場は中国で、23.84%の割合で急成長しているとのことです。

スマート市場での競争は激化してきており、複数のプレイヤー企業がひしめき合っています。しかし市場のシェアでみると、わずかなメジャー・プレイヤー企業によって市場が寡占状態にあるのが現状です。スマートオフィス市場における代表的なメジャー・プレイヤー企業として、Johnson Controls、Cisco、United Technologies、Siemens、Schneider Electric等が挙げられます。

スマート照明や空調設備から、従業員やオフィスを監視するインテリジェントカメラシステムまで、IoTによって未来のオフィスは劇的に変化することが予想されます。

世界の最先端をいく5つのスマートオフィス

The Edge (アムステルダム/オランダ)-Deloitte

コンサルティングファームのDeloitteがメインテナントのスマートビルディングが、オランダ・アムステルダムにある「The Edge」です。

The Edgeは、サステナビリティの評価基準である「BREEAM」において、史上最高の98.4%のスコアをたたき出しました。環境問題への配慮として、The Edgeは再生可能エネルギーを活用するためソーラーパネルを稼働させています。また、雨水を回収しトイレの洗浄やガーデンの撒水に利用する等の試みも行われています。

一方で、従業員への配慮も十分に行われています。従業員のスケジュールはアプリで管理されます。従業員の乗った車がビルディング内に侵入すると、ビルディングが車侵入を検知し、駐車場内の空きのスペースまで車を誘導してくれます。

従業員は自分専用のデスクをもたず、ワークスペースもスケジュールに合わせて決められます。従業員ごとに照度や温度の好みをアプリが把握し、室内環境を微調整します。アプリは従業員の休憩時間も管理し、各従業員の好みに合わせたコーヒーの淹れ方までエスプレッソマシンが記憶しています。

Watson IoT Headquarters (ミュンヘン/ドイツ)-IBM

ドイツ・ミュンヘンにあるWatson IoT Headquartersは、IBMが開発したコグニティブコンピューティングシステム「Watson」やIoTに携わる最先端の本部です。

ビルディングの管理にもコグニティブコンピューティングが用いられ、テナントのニーズを満たすようビルディングやその環境を絶えず学習し改善します。システムは誰がどのスペースで座っているかまで把握し、各従業員の好みに合わせて周囲の照明や温度が調節されます。

Watson IoT Headquarter、専門家の会議やハッカソン、ブートキャンプが主催されるだけでなく、大学やコミュニティイベントのための場所も提供されています。

RBC Waterpark Place(トロント/カナダ)-Cisco

スマートシティやスマートビルディングづくりを支援するCiscoは、自社が入っているビルのスマート化にも力を入れています。

カナダ拠点のあるRBC Waterpark Place内では、天井に設置されたセンサーで温度や照度、従業員の占有率が計測されています。センサーから送信されたデータは各階に設置された多数のコントローラーを経由し、中央のエッジデバイスで処理され、最適な換気・室温調整を行います。

また、オフィスに入る際にアプリでチェックインすると、ワークスペースが従業員に割り振られます。そして温度や照度だけでなく、デスクの高さまで従業員の好みに応じて環境が自動で微調整されます。各階には多くのミーティングルームやレクリエーションルーム、ホワイトボードが設置され、従業員のブレーンストーミング、従業員間のコラボレーションを支援する環境になっています。

Intel SRR3(バンガロール/インド)-Intel

Intelが建設したR&Dに携わるスマートビルディングが、インド・バンガロールにあるSRR3です。SRR3は、「One Storey High Technology」と呼ばれるトップダウン型の建設技術で造られた最初のビルディングです。この建設技術によって、従来比で最大60%まで建設時間の削減が可能になります。SRR3は建築物の環境評価基準である「LEED」において、最高のプラチナム認証を受けました。

SRR3に設置された約9,000ものセンサーが、照度や室内温度、エネルギー消費量から従業員の占有率に至るまで、リアルタイムで監視します。センサーから送られてきたデータは機械学習によって処理されます。空調設備から換気システムまで自動的にコントロールされた快適な環境下で、従業員の労働生産性がアップします。

独自のサステナビリティへの取り組みも行われ、従業員がビルディング内を移動するとエネルギーが発生する特殊なタイルが床に敷き詰められています。この特殊なタイルに加えて太陽光ソーラーも発電に使用され、再生可能エネルギーはビルディング全体の電力需要の40%にも及びます。その結果、CO2の排出量を37%カットするのに成功したとのことです。

参考:Intel Creates Smart Building Using IOT: Case Study

240 Blackfriars(ロンドン/イギリス)-UBM

BtoBイベント事業を手掛けるUBMは、多忙な従業員のために電源のオンオフを可能な限り自動化したり、エネルギー節約に貢献するべく、イギリス・ロンドンの240 Blackfriarsへの移転時に大きな働き方の改革を行いました。こちらのビルもサステナビリティの評価基準である「LEED」にて、スコアが86のプラチナム認定を受けています。

UBM社各階のロビーにはタッチパネルが設置され、従業員はその日仕事をしたい場所を選択できます。会議室の外に設置されたタッチパネルでは空室状況の確認、予約やキャンセルが行なえ、適確な時間帯に適確な室温に自動調整されるようになっています。また、日の傾きに応じてブラインドも開閉されます。

デスクの予約システムは給電システムに統合され、省スペース・省エネ化に貢献しています。さらに、1つのデスクを1.8人でシェアできるよう空間の最適化がなされ、年間160万ポンド(約2億円)の追加収益を得られたとのことです。

まとめ

スマートオフィスは、環境保護の観点からエネルギー節約につながるだけでなく、労働生産性を高めるのにも役立ちます。

日本で働き方改革が叫ばれる昨今、エコフレンドリーで、なおかつ従業員にとってストレスフリーなオフィス環境が今後ますます求められていくでしょう。