すでに多くの人に認知されているAR技術。
現実の映像の上に仮想の映像や3Dモデルを表示することができるAR技術は、世の中に広く認知されるようになってからすでに10年近く経過しています。
そんなARの最新技術を、北九州市 小倉けいりんで開催される「第67回朝日新聞社杯競輪祭GⅠ」で体験することができます。
このブログでは、「競輪祭」で体験できる最新技術についてご紹介します。
■競輪祭 公式HP:https://keirinsai.jp
「競輪祭」で2つのAR技術を体験しよう!
「競輪祭」の会場では、テックファームが開発した専用アプリ「かねりんナビ」を使用し、2つのAR技術を体験することができます。
- スマホ1つで目的地へ到達!「ルートナビ」
- スマホのカメラでスタンプラリー!「おうちでかねりん」
「かねりんナビ」は、スマートフォンでご利用いただくことができます。
それでは、それぞれの機能の概要とデモ映像などをご紹介します。

[技術1]スマホのカメラ映像から現在位置を推定し、ARオブジェクトで目的地まで誘導
北九州メディアドームの悩み
「競輪祭」が行われる「北九州メディアドーム」は、非常に広大な建物になっています。「北九州メディアドーム」に到着すると、まず目に入ってくる大きな入り口を入り奥へ進むと、レースが行われる競争路、いわゆるバンクの内側にある広場(アリーナ)に入ることができます。入り口からアリーナまでの間には飲食店も並んでおり、迫力のあるレースを楽しむことができるようになっています。
そして「北九州メディアドーム」には1Fに加え、4Fにも広大な観戦エリアが用意されています。競争路の外側をぐるっと取り囲むように設置された観戦席からは、レースの様子を余すことなく楽しむことができるようになっています。
また、4Fにはイベントスペースもあり、競輪祭期間中、さまざまなイベントが開催されています。競輪ファンの方にも、競輪初心者の方にも、楽しんでいただくことができるイベントが多数予定されています。
実は小倉けいりんが行われる「北九州メディアドーム」には、来場者の皆さまにとって少し分かりづらい点があります。
それは、1Fのアリーナから4Fのイベントスペースまでの動線が複雑で、初めて訪れたお客様には少し見つけにくい構造になっていることです。館内MAPを見ると、その理由がわかります。館内から直接4Fへ移動する経路がなく、一度建物の外を経由する必要があります。
そのため、4Fで開催されるイベントに関心を持っていても、移動方法が分かりにくいことで足を運びづらくなるケースもあるようです。結果として、せっかくのイベントが十分に来場者へ届きにくいという課題につながっています。
複雑な館内の誘導を解決する「ロケーションAR」
そこでテックファームは、新しい体験を提供する「ロケーションAR」をご提案しました。スマートフォンに専用アプリをインストールすることで、目的地までARオブジェクトが順に表示され、画面の案内に沿って進むだけで、どなたでもスムーズに4Fイベントスペースへ移動できるようになります。
この技術、Google Mapをはじめとしてすでにいくつかサービス化されているものがあり、一見、何も新しくないように思えますが、実は技術的にはGoogle MapのARナビゲーションとはかなり異なるものになっています。
「競輪祭」で体験ができる「ルートナビ」は、以下の3点を実現しています。
- 衛星による位置測位の使用ができない「屋内」における位置測位を、スマホカメラの映像のみで推定
- 事前に用意された3D MAP上に設定された位置にピタッと合わせてARオブジェクトを表示
- ナビゲーションルート上のARオブジェクトを順番に結び、移動動線を連続オブジェクトとして表現

今回体験をすることができる「ルートナビ」は、これまでのルートナビゲーションと異なり、GPS / GNSSといった、衛星を使用した位置測位が使用できない場所において、現在位置を推定し、ユーザを目的地まで確実に誘導することができます。
さらに、画面上に表示される案内表示はすべてARオブジェクトであるため、利用ユーザ別に表示を変えることが可能です。例えば、使用しているスマホの設定言語に合わせて表示される言語を変更する、同じ位置で同じアプリを使用していても、目的地により表示内容を変更する、などです。
この技術を使用することで、さまざまな国や地域からのお客様に対し、利用ユーザに寄り添った表示を行うことが可能です。特に、広大な屋内施設で、多くの外国人訪日客の皆様を目的地まで誘導するには、さまざまな言語で、的確に案内をする必要があり、場合によっては目的地まで一緒に移動する必要があることも多々あります。そんな外国人訪日客の急増に加え、労働者不足に悩まされているさまざまな現場で活用していただくことができる技術です。
「ロケーションAR」の実現までの道のり
今回「北九州メディアドーム」で体験ができる「ロケーションAR」は、その実現までに多くの技術検証を重ねてきました。スマホのカメラ映像と事前に用意された3DMAPを比較し、現在位置を推定し、用意されたARオブジェクトを表示する、といった一連の処理には、多くの技術課題が立ちはだかっていました。その中でも特に解決に時間を要した技術課題をご紹介します。
広大な空間の3D MAP生成
「ロケーションAR」で使用されている技術はVPS( Vision Positioning System )と呼ばれるもので、カメラ映像と事前に撮影された3DMAPを比較し、一致する場所を探すことで現在位置を特定します。この方法で現在位置を推定する場合、一般的なオフィスや飲食店といったサイズの施設であれば、スマホカメラに映り込む風景は割と特徴的なことが多く、それは現在位置推定のやり易さ、に直結します。カメラ映像を突合する3DMAPのサイズもさほど大きくなく、あらゆる方角から3DMAPと比較をし、現在位置を特定することが可能です。
しかし、今回の会場である「北九州メディアドーム」は、そもそも施設のサイズが非常に広大で、かつ似たような景色の場所があるため、既存技術をそのまま使用しても、現在位置の推定に非常に時間がかかる上に、類似箇所を誤認してしまうことも多く、目的地まで誘導するどころか、ナビゲーション自体が迷子になってしまいます。
そこでテックファームでは、いくつかの広大な施設を対象に技術検証を繰り返し、一般的なVPSの技術検証で使用される施設の数倍以上あるサイズの施設の3DMAP化、そして現在位置推定の精度を高めることに成功しました。
今回、「北九州メディアドーム」でご体験いただくルートナビゲーションは、全長約500m。屋内・屋外を含めたルートで、皆様を目的地までご案内いたします。ぜひ最新技術をご体験ください。

[技術2]カメラ映像のみで位置を厳格指定しARオブジェクトを表示
スマホカメラでスタンプラリー、ゴール地点でARキャラクターがお出迎え
「かねりんナビ」には、ルートナビゲーションの他に、「北九州メディアドーム」4Fで、スマホスタンプラリー「おうちでかねりん」を楽しむことができます。
「おうちでかねりん」は、場内のいろいろな場所に隠れている、小倉けいりんのマスコットキャラクター「かねりん」のイラストの中から、アプリに表示されている特定のポーズの「かねりん」を見つけて、スマホカメラで集めます。全てのポーズの「かねりん」を集めて指定のゴール地点に向かうと、スマホカメラの中に、3Dで動く「かねりん」が出現します。
この「3Dかねりん」は、スタンプラリークリア後、競輪祭で配られる、とある配布物の上にいつでも出現させることができます。「北九州メディアドーム」の中だけでなく、ご自宅に戻ってからも楽しむことができます。

画像認識とVPSの両方を利用したスタンプラリー
このスタンプラリー、実はさまざまな技術を活用しています。1つは画像認識。特定の画像をスマホカメラに写すと、それを検出することができます。今回はこの画像認識技術を、会場内の「かねりん」を集める部分、そして、ご自宅で「かねりん」を出現させる部分に使用しています。
会場内で「かねりん」を集める画像認識は、認識予定の画像とカメラに写した画像が一定割合以上一致した場合に反応するようになっています。完全一致にしてしまうと周辺環境の光の具合によって反応しなかったり、一部が隠れていることで反応をしなかったりしてしまうため、一定以上の割合で一致した場合に判定させることが重要です。
今回「おうちでかねりん」では、「かねりん」を数ポーズ集めていただくことになりますが、この、一定以上の割合で一致した場合に認識する、という仕組みにより、別の問題が生じることになりました。その問題とは・・・「かねりんのポーズが違っても認識しちゃう問題」です。この「かねりん」というキャラクター、元々いくつかのポーズが用意されているんですが、そのポーズごとの”差”が、画像認識の仕組みで見ると微々たる差、と判定されるらしく、別のポーズのかねりんを誤認識するケースが発生し、さまざま工夫をする必要がありました。実際にどのような工夫で乗り越えたのか、は会場でのお楽しみ、です。ぜひ会場で確かめてみてくださいね。
一方、スタンプラリーを終えた後のゴール地点で出現する「3Dかねりん」は、ルートナビゲーションと同じく、VPSを使用しています。ゴール地点で出現するかねりんは、どのスマホからも同じ位置に、同じ大きさで出現するようになっています。これは、画像認識により「3Dかねりん」出現位置を厳密に特定しており、設定された位置にピタッと「3Dかねりん」を出現させています。
一度出現した「3Dかねりん」は、角度を変えても位置がずれず、同じ場所に表示され続けます。VPSによる現在位置推定の正確さをぜひご体験ください。
VPSによるARオブジェクト表示の活用例
VPSによる現在位置推定技術は、さまざまな場面で応用が可能です。例えば、特定の看板をARオブジェクトで他言語に書き換える、特定の位置に他言語対応をしたAR看板を出現させる、といった具合です。
表示されるオブジェクトはARなので、表示内容をパーソナライズすることも、他言語対応することも、全く問題ありません。それに加え、現在位置推定の精度が高ければ、画面内に表示されるARオブジェクトの表示位置も正確に出現させることが可能です。この2つの特徴を活かし、駅や空港の看板をARオブジェクトでピタッと書き換える、特定の機械の操作注意看板をARで他言語で表示する、商業施設内でパーソナライズされた広告映像を再生する、特定の位置で特定の音声を再生する、など、AR×VPSだからこそ実現可能な表現がいくつもあります。
ARは登場から時間が経過し、一般的な技術になっているからこそ、その出現位置や表示位置精度、表示オブジェクトの進化をイメージしていただきやすいものです。
皆さんの周りにあるさまざまな課題も、AR技術の活用で解決できるかもしれません。
そんな、最新のAR技術を体験できる 小倉けいりん「第67回朝日新聞社杯競輪祭GⅠ」。
ぜひ一度お越しください。会場でお待ちしております。













