工場内の作業員の動きを可視化するIoT活用法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

作業員の動きの可視化は、これまでの工場運営における最大の課題といっても過言ではありません。

しかし昨今ではIoT技術の隆盛により、リーズナブルで利用しやすいIoTサービスが複数リリースされています。

そしてIoTサービスを利用して作業員の行動最適化に成功している企業があるのも事実です。

本記事では、工場内で働く作業員の動きの可視化にフォーカスし、その具体的な方法を4つの目的に応じてご紹介していきます。

そもそもIoTとはいったい何なのか

そもそもIoTとは何かという点からみていきましょう。

IoTはInternet of Things(もののインターネット)の略称で、さまざまな物がネットワークに接続され、より利便性の高い世界が形成される、という意味をもちます。

たとえば、GPSを搭載したスマホが家に近づくと、家の照明が点灯し、エアコンの電気がONに。このような仕組みは、よくあるIoTの一例です。

IoTシステムはどのような仕組みで動くのか

続いて、いったいどのような仕組みでIoTのシステムは機能しているのか、お伝えします。

現在、世の中ではさまざまなIoT技術を利用したサービスが提供されはじめています。しかしながら、どのサービスも根本的には、ほぼ同様の仕組みです。

IoTシステムを構成するには、端末となるセンサーが必要です。昨今は、画像センサーや温度センサー、距離センサーなど、様々なデータを収集できるセンサーが発売されています。センサーから収集されたデータは、インターネット上にあるシステムのサーバへアップロードされます。

このとき、センサーがスマホなどの通信可能な端末に取り付けられていれば、自力でインターネットに接続し、データをアップロード可能です。しかしながら、自力でインターネットに接続できないセンサーが多くあるのも事実。その場合は、「ゲートウェイ」と呼ばれる機器を介することによって、インターネットに接続し、データをアップロードします。

IoTシステムを導入すると何ができるのか

ここまでIoTの基本的な仕組みをみてきましたが、いったいIoTシステムを導入すると何ができるのでしょうか。

IoTでできることは、一般的に下記3点に集約されます。

  • 物から人へのデータ可視化
  • 人が命令を出し、物を制御
  • 物が命令を出し、物を制御

上から順番に内容をみていきましょう。

物から人へのデータ可視化

デバイスに搭載されたセンサーからデータを送信することで、様々な状況が見てとれるようになります。

たとえば、工場での生産数データ。理論値では1時間あたり1,000個の基盤を生産できるはずが、960個しか生産できない状況があったとします。そこで、生産ラインの複数個所に光電センサーを設置。光電センサーへの反射光入光/非入光によって、設置個所を通過する基盤数をカウント可能にしました。カウントデータを集めて検証したところ、基盤部品取り付けの工程がボトルネックと判明しました。

このようにIoTの技術をうまく活用すれば、見えにくい改善点も発見できる可能性が高まります。

人が命令を出し、物を制御

この仕組みはIoTという言葉が出てくる前から存在していました。わかりやすいのは、エアコンの操作です。部屋の温度を28度に調整するよう命令しておけば、エアコンが赤外線センサーで命令を受け取り、室温を自動調整してくれます。

物が命令を出し、物を制御

現在、物から物への制御については「Machine to Machine(M2M)」ということばで表現されることが多くなっています。

例えば、自動運転ロボットの衝突防止機能。お互いの位置情報センサーが、それぞれの位置を感知し、衝突の恐れが出た場合には、衝突を回避するような経路をとらせる。このような内容もM2Mの一つであるといえます。

作業員の動きを可視化する4つのIoT活用法

さて、結局のところ、作業員の動きを可視化するには、どのようにIoTを導入していけばよいのでしょうか。

「作業員の動き」と一口にいっても、その「動き」は実に多くの種類があります。そこで今回は、例として4つの切り口からのデータ収集についてお伝えします。この4つの切り口で採取したデータを組み合わせれば、課題が見えてくることもあるでしょう。

人や物の移動を把握する

工場内にBeacon端末を取り付け、スマホなどの受信端末を保持した人やものが通過する時に検知させます。すると、物や人が、いつどのように動いているかをデータとして記録できます。

このデータから、例えばフォークリフトや搬送車の運行パターン最適化や、倉庫内作業員数の最適化などを記録に基づいて検討できます。

また、新人の作業員には新人とわかるようなデータのタグつけをしましょう。倉庫内のどこで何をしている時に作業の無駄が発生しているのか、把握できるようになります。このことから、初心者でも効率よく作業できる工場へと改善していけます。

作業員への負荷状況を把握する

属人的な作業は、長時間にわたって一人で対応する場合がしばしばあるもの。そこで、目の動きから視線を検出する視線センサーを取り付けた作業用メガネや、手首に巻き付けられる心拍センサーなどを使用させます。すると、人の視線の状態や心拍数から、作業への集中度合や疲労状態などを計測可能になります。他にも心拍数の異常な上昇や、異常な低下がみられた場合にはアラームを発報させられます。

また、手首や足首などにバンド型のモーションセンサーを装着して、手首や足首などのひねり状況を計測することにより、手足や腰などに負担のかかる作業をしていないか把握可能です。無理な作業をしているとみられた場合は、本人に対してフィードバックでき、ケガや事故などを未然に防げます。

日々の品質管理を確実にさせる

工場にとって、毎日の機械点検や検査、その他の品質管理は生命線です。しかしながら、点検・検査・管理の質は人によって変化してしまうもの。品質管理を効率的に行うためにもIoT技術の導入は最適です。

たとえば、作業対象にBeacon端末を取り付け、作業担当者にはタブレットを持たせることにより、品質管理作業対象を工場マップなどで明確化できます。かつ、作業対象に接近した時に、その作業対象に関わる検査項目を表示させ、確実に検査をさせられます。

検査結果はその場でデータに反映し、管理部門にすぐフィードバックできるようになります。

危険な状況の発生を記録する

危険な場所に近づけさせないための方法や、危険が発生した時の対処・記録は、どの工場でも頭を悩ませることです。

この内容も実は、IoTシステムの導入で解決できる可能性があります。

作業員にスマホなどの受信装置を持たせておき、危険地帯にはBeacon端末を設置します。すると、スマホが危険地帯に近づくとアラームなどで危険を知らせるように設定できますので、危険地帯への侵入は回避可能です。

また、傾きを検知する傾きセンサーを体に取り付けておけば、倒れた時などに長時間傾きが修正されないことによって通報が管理部門へ届き、迅速に警備員を駆け付けさせられます。

危険発生時には、取り急ぎスマホの緊急通報ボタンを押すように教育しておけば、スマホを持っている作業員付近のカメラが作動して状況を記録する、という仕組みも実現可能です。

まとめ

IoTシステムは研究開発がすすみ、現在は以前とくらべてリーズナブルな価格で各社からIoTサービスがリリースされています。

データの可視化により改善に成功している工場はいくつも出てきていますので、この機会にぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか。