3DCGソフト「Blender」とフォトグラメトリを使って3Dモデルを動かしてみた!

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オンラインショッピングやバーチャル空間活用が増えている昨今、3D技術がより身近なシーンで活用されるようになってきました。

3DCGを作成するための無料ソフトもいくつか世に出ており、専門家でなくても3DCGが作成しやすい環境になってきています。

そこで今回は3Dモデリング・アニメーションの知識が全くないエンジニアが、一から技術を学びつつ、最終的にはナチュラルに歩行する人の3Dモデルを作ることに挑戦してみました。本記事ではその一連をご紹介します。

今後、3D技術はAI接客や3Dカタログなど、5G通信の普及を背景に様々な場面で活用されると予想されます。ぜひこのブログをきっかけに、3D技術について興味を持っていただければ幸いです。

Blender(ブレンダー)とは?

Blender(ブレンダー)は無料のオープンソース総合3DCGソフトです。3DのCG、つまり3次元のコンピューターグラフィクスを作るためのソフトウェアで、日本語にも対応しています。リアルに近い人間の3Dモデルから、トイ・ストーリーのようなアニメーション3Dも無料で作ることができる優れたソフトです。その将来性の高さから、マイクロソフトやフェイスブックなど大手企業が、Blenderへの寄付を表明しています。

ちなみにこのような3Dが制作可能です。

Blenderを使ってみた

今回の実施したことは、①フォトグラメトリを使って3Dモデルを作る ②Blenderを使ってアニメーションを付ける ③ユニティーを使って3Dモデルを描写するという3ステップです。では実際に行った作業を見ていきましょう。

3Dモデルを作る

まずは3Dモデルを作るのですが、その過程で今回は「フォトグラメトリ」という技術を使いました。

フォトグラメトリは、その手軽さが注目されている3Dモデルの作成技術です。仕組みとしては、被写体を囲うように複数のカメラを設置して被写体を撮影し、撮影された画像をAIで合成することで、簡単に3Dモデルが作れてしまうというすぐれものです。

以前こちらのソフトについてブログにしておりますのでぜひ詳しくはこちらをご覧ください。
「Magic Leap」を使ったMR開発レポート 〜焼きそばパンをMR化するまで〜

今回は当社社員にモデルとなってもらいデータ化をしました。

Blenderでアニメーションを付ける

次にBlenderに取り込みアニメーションを付けていきます。

アニメーションを付けるには、先程作った3Dモデルにボーン(骨格)を設定する必要があります。以下のように人と同じようにボーンを設定することで、それに合わせてモデルが動くようになります。

いきなり上手に動くとは思っていなかったので、Blenderを使って早速ボーンを入れ、アニメーションを付けることを目標としました。

とりあえず行ったこと:

  • 手や足は、甲の部分は動かなくて良いと思い、2本ずつ。
  • 胴体部分は、何本入れれば良いのかわからず、適当に2本。
  • あとはそれぞれのボーンをつなげたり頭に入れて、合計13本。

この状態でボーンを動かすと、その周りの面も一緒に動くことが分かったので、コマのポーズを作ってアニーメーション作りに挑戦。

実際にできた3Dモデルがこちらです。少し動きがぎこちないですね、、、。

動きをチューニングしていく

さて、ここからいかに自然に歩いているようにアニメーションを作るかのチューニングです。

実際に行ったのは次の内容です。

①ボーンの数を増やす
②ウェイトを適当な値/範囲にする
③アニメーションのコマ数を細かくする

適当に入れていたボーンですが、調べてみるとさらに細かく設定できることが判明。リアルに歩くアニメーションにしたかったので、足と足の甲は別に動くようにし、頭や胴体も細かく動きを付けられるようにボーンの数を増やしました。

最終的にボーンの数は24本と、最初に作ったものの約2倍に。

モデルの表面は、どのボーンに合わせて動くか、どの程度ボーンに追従するかを設定できることも分かりました。最初に作ったモデルはその設定がうまくいっていなかったので、今回微調整。

さらにモデルご本人から「脇締めて骨盤も動かして!」とのご指摘をいただきましたので、その部分も微調整しました。

そして出来上がったのがこちらです!!

いかがでしょうか?当初にできあがったものよりもかなり自然になったのではないかと思います。このようにして、ナチュラルに歩行する3Dモデルが完成したのでした。

今回使用した3DモデルソフトであるBlenderは、前述の通り、オープンソースです。高機能なソフトが無料で使えるとあって、3Dモデル作成のハードルは大きく下がりました。今後様々なサービスに活用されると予想されます。

ビジネス用途における3D活用について

さて、これまでフォトグラメトリとBlenderを使って3Dモデルを作るという技術的な話をしてきましたが、これらの技術はいったいどのような用途においてニーズがあるのでしょうか。いくつかご紹介していきたいと思います。

インフォメーションカウンター

最近見かけるようになりましたが、アニメーションがチャットボットと連携して自動的に館内案内などをしてくれる仕組みがあります。その応用として、今回のような3Dモデルと、遠隔地にいるスタッフが連携することで、現地にスタッフを配置することなくインフォメーションカウンターを作ることが可能です。

接客数の少ないカウンター同士であれば、一人のスタッフが掛け持ちで担当したり、複数のスタッフで上手く回すこともできます。

店舗でのサイネージ接客

上記のインフォメーションカウンターのシーンに似ていますが、例えばアパレルショップでの対人接客に抵抗があると感じる人も中にはいます。3Dモデルのような間接的な接客であれば、気軽に質問ができたりするというニーズもあるでしょう。

ECでのオンライン接客

最近チャットボットでのオンライン接客は当たり前になりましたが、将来的には3Dモデルのように、より人間に近い形での接客が可能となるかも知れません。最も質の高い顧客体験は実際の店舗にあることが多いですが、3Dモデルのような技術を使うことによって、それに近い状況を再現することができ、購買率の向上などに寄与できます。

バーチャルショッピングセンターや展示会

フェイスブックが積極的に開発している新技術として「メタバース(巨大仮想現実空間)」があります。そういった世界の中でも、今回のフォトグラメトリとブレンダーによる3Dモデル技術は活用できるでしょう。実際に、小さな規模の展示会では実際に説明員を3Dモデル化した上で仮想現実空間に配置し、その中を自由に歩くことができるというサービスが実現しています。