5Gとは?次世代通信システムを基礎から解説

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現在、身の回りのモノが次から次へととインターネットに繋がりつつあります。そしてほんの数年後の近い将来、あらゆるモノがネットワーク化されている状態になると言われています。

そんな中、「通信」の環境は生命線となると言っても過言ではありません。

そこで注目されているのが、実用化し始めている「5G」です。

本記事では、5Gを基礎から解説し、実現できる世界観をご紹介していきます。

5G(第5世代移動通信システム)とは何か

5Gは「5th Generation(第5世代移動通信システム)」のことで、現在移動通信の主軸を担っている4G(LTE)に代わる最新の通信技術です。

「超高速・大容量通信」「多数同時接続」「超低遅延」という特徴をもち、それ故、5Gは今後の実用化が期待されています。まずはこれらの特徴を詳しくみていきましょう。

最大20Gbpsの通信速度を実現する「超高速・大容量通信」

5Gと聞いて、「速度が速くなる」と連想する方は多いでしょう。

実際、特徴のまず1つ目は、最大で20Gbps(理論値)の通信速度を実現する「超高速で大容量な通信」です。

現在国内で移動通信システムに使われている4Gは、約100Mbps(=0.1Gbps)から1Gbps程度の通信速度です。それに比べ、5Gは最大で100倍もの通信速度差があります。

そのため、データ量の多い4Kや8Kと呼ばれる超高画質動画の通信にも、IoTによる膨大なデータ通信にも耐えることができ、現在より快適に通信を利用できると言われています。

100万個のノードを接続しても通信ができる「多数同時接続」

次に、1㎢あたり100万個のノードを接続しても問題なく通信ができる「同時多接続性」が特徴として挙げられます。

世界では現在、90億台程の携帯電話が使用されていると言われています。しかし4Gの仕様上、最大でも150億台程度の携帯電話接続が限界となる計算になります。携帯電話に加えてIoTで接続されるモノが増えてくると、接続端末数がパンクする恐れがあるのです。

5Gが普及すれば地球表面の陸地の面積約1.5億㎢において、単純計算で1,500兆台ものノードを収容できる計算になりますので、現状の接続台数パンクの心配もほぼなくなるでしょう。

0.001秒以下と限りなく少ない「超低遅延」

移動通信の遅延が1ミリ秒以下と限りなく少ない「低遅延」も、5Gの大きな特徴です。

通信の遅延が1ミリ秒以下になると、遠距離の通信でも目に見える遅延が出にくくなります。そのため、例えば現在は遅延しがちなLINEやSkypeなどのビデオ通話や、リアルタイム性が重要となるライブ中継でも、今後は遅延が出にくくなると予想されます。

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5Gを支えるテクノロジーとは

では、これらの特徴はどのような仕組みに支えられているのでしょうか。

5Gの優れた特徴を実現していくテクノロジーは大きく2つあります。「高周波数帯の使用」と「超多素子アンテナ」です。

20GHz以上の「高周波数帯域の使用」

5Gの超高速・大容量通信を実現するには、数百MHz以上の周波数帯域、つまり大量のデータを高速で運ぶに相応する”道路”が必要となります。しかし、数百MHz〜3GHzまでの周波数帯域は、FM放送や様々な無線、携帯電話などで既に利用されているのが現状です。

そこで、今まで使用されていなかった20GHz以上の高周波数帯域が5Gの検討対象となっています。

周波数帯域ごとの主な利用状況

引用:総務省 電波利用ホームページ

しかし単純に高周波数帯域を利用するだけでよいわけではありません。

高周波数帯域の電波にはネックとなる性質があります。それは、電波の直進性の問題です。周波数を上げることによって直進性が非常に強くなるので、障害物で電波が途切れてしまうのです。

周波数が高い程、1秒間あたりの波の数が多くなり、1波長が短くなる

この直進性の問題を回避するために様々な機関が研究・実証実験を進めており、昨年5月には、ドコモとファーウェイによる「無線アクセスバックホール統合伝送」の手法に成功したというニュースもありました。この手法は、5Gの中継基地局を配置することによって、障害物の陰になっているノードにも5Gの電波を届けてしまおうという方式です。

総通信帯域8GHzを誇る「超多素子アンテナ」

5Gでは、「超多素子アンテナ」と呼ばれるアンテナを使って通信することを念頭に研究が進められています。その超多素子アンテナ技術は「MIMO」(Multiple-Input and Multiple-Output、マイモ)と呼ばれ、送信側と受信側で複数のアンテナ素子を用いて効率よく通信を実施するのが特徴です。

MIMOはすでにLTEで使用されている仕組みですが、5Gに向けてさらに多重性を向上させる取り組みが行われています。

4Gのアンテナでは空間多重数2、周波数帯域は20MHzを乗算した40MHzしか総通信帯域がありませんでした。しかし5Gでは、空間多重数を8~16、周波数帯域を500~800MHzとし、総通信帯域は8GHzと大幅な通信容量向上を目指しています。例として、ドコモと三菱電機は共同で超多素子アンテナの開発を進めており、8cm四方に256素子を並べたアンテナを開発しました。

MIMOはビームフォーミング技術と呼ばれる方式で、電波の送信を尖ったビームで送信していますが、この送信を従来の水平方向のみの送信ではなく、垂直方向にも送信できるように研究を進めています。垂直方向の送信を実現する技術の一つに「Massive-MIMO」があり、ソフトバンクを中心に開発が進行中です。

5Gの実用化はいつ?実用化で実現できることとは

5Gの特徴や5Gを支えるテクノロジーについてはお伝えしてきましたが、ここでは5Gの実用化時期と、5Gによって実現できることについてお伝えしていきます。

5Gの実用化時期とそのコンセプトとは

5Gの実用化予定は2020年で、複数の分野での利活用が検討されています。現在ITU(International Telecommunication Union、国際電気通信連合)で5Gにおける評価基準や技術性能の要件が取りまとめられていて、2019年いっぱいは5G無線インターフェースの提案を受領予定です。そして、2019年終わりから2020年にかけて5Gの国際的な標準仕様を決めていくことになっています。

5Gでは、冒頭の特徴でご紹介した通り、通信を3つのコンセプトで考えています。

  • 「eMBB」(enhanced Mobile Broadband)・・・ブロードバンド、つまり高速大容量
  • 「mMTC」(massive Machine Type Communications)・・・大量端末接続
  • 「URLLC」(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)・・・超高信頼・低遅延

eMBBは、従来の4Gの発展形で、大容量で高速な通信をさせるというもの。mMTCは特にIoT/M2Mの分野で重要視され、大量のセンサーから定期的に送るデータなどの小容量通信に用いられるもの。URLLCは、自動運転や金融サービスの電子化など、リアルタイム性や通信の継続性が強く要求される分野に向けたものという考え方です。

特にmMTCについては、現在IoTやM2Mの分野ではLPWAが既に普及しているので、住み分けをどうするのかが注目されました。しかしLPWAの仕組み上、機器接続数の上限はもう決められています。例えばLoRaWANでは、1台のLoRaWANゲートウェイあたり100台程のデバイスが接続できるとされています。しかし、100台という数字はIoTの今後の普及を考えると不十分です。IoTが普及していく過程で順次5Gに移行していくものと考えられています。

5Gでは、各国が自国主導の通信方式を実現しようとしのぎを削っていて、日本でもドコモ・KDDI・ソフトバンクの3社が主導で5G通信方式の実現に向けて動いています。

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5Gで実現できることとは

総務省の「5G利活用分野の考え方」によると、5Gで実現可能な事項として、以下12の利活用分野が設定されています。

  • 農林水産業
  • 交通、移動、物流
  • スマートシティ(エネルギー等)
  • 建設・土木
  • エンタメ、ゲーム、観光、(教育・文化)
  • 医療、健康、介護
  • ショッピング、金融、決済
  • スポーツ、フィットネス
  • 工場、製造、オフィス
  • 政府、自治体
  • 安心・安全(防災、防犯、インフラ管理、見守り等)
  • スマートホーム(ファッション、日用品等)

ここではその一例についてお伝えします。

農業分野

農業では、農作物の生育状態や、気候、市場の状況など、IoT技術を駆使した情報の統合を図ります。ドローンや無人の農機具を導入し、農作業の人手不足を解消。センサー類も現在は多種多様なものが出ているので、気象センサーや土壌センサーで環境状態を把握することもできますし、被害センサーで病害虫や鳥・不審者などの侵入を検知してアラームを発することもできます。

さらには、毎年の生育状況を生育センサーで検知してデータベースとして残しておけば、毎年農業生産性の向上にも期待大です。

インターネットから市場の情報を収集し、需要のある地域での広報宣伝を促進することにより、農作物に高い価値をつけることも可能となります。

林業と水産業も合わせた農林水産業分野における経済効果は、4268.2.億円といわれています。

交通移動分野

5Gが普及すれば、新幹線などで高速移動していても大容量のデータ通信ができるので、例えば飛行機に乗りながら会議に参加することもできます。また、車外や社内に配置したセンサーの活用による「自動運転」の普及にも期待大。街中の交通情報がIoTのセンサーによって共有されるため、渋滞に陥ることなく交通が可能になります。

物流分野も合わせた交通移動・物流分野における経済効果は、21兆円にのぼると試算されています。

まとめ

5Gがこれから実用化され普及していくことで、2020年代にはあらゆるシーンで身の回りのものがネットワークに繋がっている社会になりえます。通信事業者やIT企業のみならず他業界の企業・団体も、一歩先の将来を見据えたニーズを探り、5Gの普及を踏まえた事業計画の立案などが必要になってくるでしょう。

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