万能ではない!AI(人工知能)がまだ苦手なこと

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現在様々な分野での活用が期待されているAI。

予測をしたり自ら学習したりすることから、「AI=万能」なイメージを持ちがちです。しかし、AIは必ずしも万能ではなく、まだまだ開発途上で苦手とすることが多いのが現状です。

ただ、AIが苦手とすることを避け、いくつかの条件をクリアすれば成果を出しやすい状況を生み出せるのも事実。

本記事では、AIが苦手な5つのことをご紹介し、成果が出しやすい条件を紐解いていきます。

AIの苦手なこと、成果が出しにくい条件

まずは、現在のAIが一般的に苦手とすることや成果が出しにくい条件について順番にみていきます。

学習させていないことの判断・実行

何かに対してYES/NOを決めたり、複数から選択するときに、「判断」をする必要があります。判断の結果、初めて行動が取れるものです。

AIに行動してもらうには、その行動をするという判断、そしてその判断の過程となる「ロジック」を学習させる必要があります。裏を返すと、学習していないロジックについては、判断もできなければ実行に移すこともできないのです。

例えば、監視カメラに物が写っているか否かを判断するためのロジックを学習させたとします。これでAIは物の存在有無を判断することはできるものの、その物体が箱なのか、人なのか、もしくはその他のものであるのかといった判断はできません。物体の種類を判断させるには、そのためのロジックを改めてAIに学習させる必要があるのです。

言葉の意味・意図を理解した解釈

AIは言葉の意味を理解して解釈することは、まだ得意ではありません。決まった単語や構文に対して学習させた返しをすることはできても、その意味を理解した上で返しをしているわけではないのです。意味を理解していないので、ニュアンスで意味を捉えることもできず、学習していない単語や構文に反応できません。

また、言葉を発した人の感情や意図を汲み取ることもまだ難しいと言われています。例えば、「もういいよ」という言葉だけでも、発言者が好意的に話しているのか、憤慨しているのか、諦めているのかで意味が大きく意味が変わってきます。

この一連の言語処理を「自然言語処理」と呼びますが、現状のAIでは対応が難しい分野の一つです。

合理的ではない作業や倫理観の伴う作業

AIは学習したロジックに基づき、最も効率的もしくは最良と考えられる選択肢で判断していきます。事前に学習していなければ、そこに考慮や遠回りは一切介入してきません。

例えば、仕事が早い人と遅い人がいるとします。当然、仕事が早い人に仕事を割り当てる方が、早く終えることができます。しかしあまりにも割り当てを偏らせると、負荷が集中してパフォーマンスの低下を招いたり、成長に繋がらないもの。

人間が仕事を割り当てるならば、作業者の負担を考えたり、過去経験を考慮した判断ができるでしょう。しかしながらAIは学習させない限り、どんなに疲弊していても仕事が早い人へ仕事を割り当て続けてしまいます。

教師データが多くない問題の取り扱い

AIにインプットする判断のためのデータを「教師データ」と呼びます。この教師データを学習してAIは初めて物事に対する判断ができるようになるのですが、このデータが少ないと判断の正確性も鈍ってしまいます。

教師データの必要数は、学習させる内容によって変わってきます。例えば、手書きの数字を識別するためのデータセットとしてよく知られている「MNIST(エムニスト)」は、6万枚の手書き数字画像データと1万枚の検証画像データが格納されています。つまり、0〜9のたった10種類の数字を判別するだけでも、正確に判別させるには、数万のデータが必要であるという一例を示しています。

また、単純に多いだけの教師データは有効ではなく、目的に沿ったデータが必要です。極端な話、車の有無を判断させたいのに、バイクの写真ばかりが写された画像データを使っても話にならないということです。同じような状況のデータばかりでも有効ではなく、様々な場所、状況での画像データを収集することも大切です。

創造的な作業

今までになかったものは、AIでは対応できません。AIの動作は、あくまで教師データに基づくものです。データとデータをランダムに組み合わせたものなどを複数個提示することはできても、教師データにない斬新な情報は提示できません。

例えば、最近では絵を描くAIや音楽を作るAIが登場していますが、AIが作る絵や音楽などの創作物も教師データを組み合わせて作ったもので、教師データにない斬新なものは作れません。自動的に既存のデータから創作物を作るのは凄まじいことですが、結局は過去のデータのつなぎ合わせに過ぎません。

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AIが得意なこととは

では、AIが得意なことはどのようなことでしょうか。主な4つの事項を具体的にみていきましょう。

単純な学習や行動

単一の事項を判断していくような行動はAIの得意分野です。例えば、単語を次々に認識して言語の翻訳をかけていくことはAIの得意とする領域です。文脈を完全に考慮しきることはまだ困難ですが、ある程度の文脈を考慮して単語に意味を割り当てていくことはできます。

有名な検索エンジンであるGoogleも翻訳サービスを提供しています。試しに英語の長文を日本語に翻訳してみましょう。文脈上の不整合は存在するものの、専門用語などの特殊な単語を使った文章や極端に長い文章でなければ、ある程度の修正を施すだけで問題なく読める翻訳文章となるでしょう。

データを記憶すること

AIの機能はコンピュータの上に構築されています。そのため、ハードディスクなどの記憶装置の分だけ教師データを記憶していけます。記憶装置は容量が足りなくなれば増強できますので、途方もない容量のデータを記憶することが可能です。大手のAIサービスは、AI専用の巨大なストレージシステムを構築することにより、膨大な容量が必要なAIへ対応しています。

作業を速くこなすこと

AIを運用しているシステムは、大量の演算を高速に処理できるようハードウェアが組まれています。特に画像を処理する場合は、「GPU」と呼ばれるプロセッサで処理することが一般的です。GPUは画像処理に特化したプロセッサのため、回路をシンプルにして数千のコア内蔵を可能にし、高速な演算を実現しているのです。通常のCPUでは汎用的な処理に対応しなければならず、回路を複雑にする必要があるため、1プロセッサあたり数十程度のコア内蔵が関の山です。

一例ですが、Googleが提供するフリーのAI検証環境「Google Colaboratory」においてMNISTに格納された6万点の手書き数字データを読み込ませる作業は、2分程度で終了します。

複数データの共通点を探索すること

複数のデータの共通点を探索し、判断していくことも得意です。特に画像認識においてこの特徴は効果を発揮します。教師データとして複数の画像を読み込ませる際に、画像の共通点を認識することで学習し、似た特徴を持った画像データを探し出せるようになります。

しかしながら、その教師データの読み込みには何の画像がどこに写っているのかというラベル付けが現状必要です。しかも同じような画像ではなく、1枚1枚状況の異なる画像を用意する必要があります。場合によっては数千枚~数万枚単位の画像を学習させなければならず、AIを実際に使えるように育てるまでには相応の労力が必要です。

まとめ

AIで対応可能な事項かどうかを判断する基準として、「人間が0.1秒で判断できること」と言われています。更に具体的に言えば、「データを数値化できるかどうか」がAIでの処理に向くかどうかのポイントです。

データを明確に数値化することで、AIでも状況判断が可能となります。例えば画像認識については、AIは画像そのものを見ているのではなく、画像のピクセルごとの色を認識し、その共通点が多いか少ないかを数値化することで画像を認識しています。

AIに取り組ませたい課題が見つかった場合は、まずその課題で使用するデータを何らかの方法で数値化できないか検討してみましょう。