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教室と地域をドローンでつなぐ――越廼小学校の特別授業と、遠隔飛行を支えた技術検証

1 日前
読了時間: 11分

2026年9月4日、テックファームは福井県・福井市越廼小学校と連携し、ドローンプログラミングと遠隔飛行を組み合わせた特別授業を実施しました。参加したのは、小学3年生4名と5年生5名の計9名です。


児童が自分で考えたプログラムを実機で動かすことのできるプログラミング授業と、山中の「ポイントゼロ」へドローンを遠隔飛行させ、地域の景色を教室に届ける体験。二つの取り組みを通じて、プログラムと現実の空間、そして教室と離れた場所をつなぎました。


なかでも準備に時間を要したのが、ドローンポートから直線距離で約1.7km先への遠隔飛行です。山に遮られる通信をどう維持し、映像を学校まで届けるのか。本記事では、当日の様子とともに、体験を実現するための教材設計や現地検証をご紹介します。


教室で児童がノートPCを見ながら授業を受け、教師がスクリーンの図を指して説明している。壁に日本語ポスターが見える。
音楽室でドローンプログラミングを学ぶ児童たち


ドローン技術を、学びと表現の機会へ


今回特別授業で使用した教材は、プログラミングでドローンの動きや光を制御し、学習の成果をドローンショーとして発表する教育プログラムです。テックファームが屋内ドローンと制御用アプリケーションの特性を検証する中で、教育への応用可能性を見いだしたことから企画が始まりました。


テックファームは機材の提供と企画全体の設計を担い、教材やカリキュラムは教育分野の専門パートナーと連携して開発しています。ドローンの技術的な理解に、学習内容を段階的に組み立てる専門性を組み合わせ、学校で実施できるプログラムとして準備を進めてきました。


今回の特別授業では、開発中の教材を対象学年と授業時間に合わせて再編集しました。プログラム自体は中学生以上の学習も想定しており、小学生向けに限定したものではありません。今回は、扱う機能や説明の順序を絞り、学校や福井県の皆さんにも学習を支えていただくことで、小学生が取り組める形に調整しています。


特徴は、成果を「ショー」として共有できることです。動きや色の組み合わせを実機で表現すれば、プログラミングを学んでいない保護者や先生も、その演出を楽しめます。自分の工夫を見てもらい、驚きや称賛を受け取る機会を、次の制作や学習への意欲につなげることを目指しています。



約2時間の学習を、実機で動かすゴールから設計


ドローンの動きを考えるには、空間の位置をX・Y・Zの座標で捉える必要があります。今回参加した小学3年生にとっては、まだなじみの薄い考え方です。その基礎から学び、約2時間の学習枠でグループ制作まで進めるため、教材の構成を見直しました。


授業で扱う命令は、離陸、指定位置への移動、その場での停止、着陸、発光色の指定を中心に絞りました。動かすための機能を網羅するよりも、児童が自分で演出を考えられる状態まで進むことを重視しています。実際の授業では、停止を指示するHoverコマンドまで学んだ後、速度を変更するSpeedコマンドは扱わず、色の指定とプログラムの複製へ進みました。


さらに、現地で確認した体育館のフライトエリアを教材制作チームに共有し、ワークシートへ反映しました。紙の上で考える動きと、実際に飛ばせる範囲をそろえるためです。機材、教材、会場を別々に準備するのではなく、最後に実機を動かす場面から逆算して調整を重ねました。


空間の位置を座標で捉える教材
空間の位置を座標で捉える教材
「フライト設計をしよう!」の教材スライド。上から見た図と前から見た図の座標グラフに、赤い四角形とx・y・z軸が表示されている。
フライト設計用のワークシート


画面上の数値が、体育館のドローンの動きに変わる


当日は音楽室で基礎を学び、グループごとにドローンの動きと光り方を考えました。制作の時間は約15分。直前に学んだ命令や複製機能を組み合わせ、ダンスプログラムを作成しました。


先生方や福井県の職員の皆さんも児童のそばで学習をサポートし、一つずつ工程を確認しながら進めました。児童の理解や会場の状況に合わせて、説明と制作の時間配分を調整することも、当日の運営で必要になった工夫です。


シミュレーターで動きを確かめた後は、体育館で実機フライトへ。画面上で入力していた位置や色が、目の前のドローンの移動や発光として現れます。自分たちのプログラムが現実の空間でどう動くかを確かめられることが、この教材の面白さです。


屋内飛行についても、事前に体育館で機材の設置とテストフライトを実施しました。その際には、想定どおりに動作しない原因を確認し、機体の配置を修正しています。シミュレーターでの確認に加え、実際の会場で機材を動かすことで、設置条件まで含めた検証ができました。


体育館で、椅子に座る生徒たちの前に先生が立ち、床に並んだドローンが光る。
体育館で、作成したプログラムを実機で確かめる


もう一つの体験は、山中の「ポイントゼロ」への遠隔飛行


遠隔飛行の目的地は、北緯36度・東経136度が交差する「ポイントゼロ」です。地域の有志によって整備されてきた場所ですが、現地へ向かう道が細く、児童が直接訪れるには移動や安全確保の課題があります。そこで、ドローンのカメラを通して地域の景色を教室へ届けることにしました。


使用したのは、越前水仙の里公園の水仙ドーム屋上に設置されたDJI Dock 3と、DJI Matrice 4TDです。Dock 3は、機体の離着陸や充電を支えるドローンポート。クラウド型の運行管理システム「DJI FlightHub 2」を通じて、学校側から遠隔で飛行を管理し、機体の映像を確認する構成です。


学校は操作・視聴の拠点であり、機体の離陸地点は公園にあります。水仙ドームからポイントゼロまでは、地図上の直線距離で約1.7kmです。この値は福井市の公開する施設座標と、北緯36度・東経136度の交点から算出したもので、実際の飛行経路の長さとは異なります。その間には山があり、Dock 3から目的地を直接見通せませんでした。この地形が、ルート設計で最も大きな課題となりました。

水仙ドーム屋上に設置されたDJI Dock 3
水仙ドーム屋上に設置されたDJI Dock 3
水仙ドームからポイントゼロまでの直線距離
水仙ドームからポイントゼロまでの直線距離

地図上の距離だけでは判断できない、山間部の通信


今回の構成では、機体とDock 3の間の無線通信が飛行を支える重要な要素です。通信品質は距離だけで決まるものではなく、地形による遮蔽などの影響を受けます。開けた場所で通信できる距離でも、山の向こう側へ進めば同じ条件ではありません。


高度を上げれば制御通信状況を改善できる可能性はありますが、今回の飛行は航空法で許可を得ている高度条件の中でルートを設計する必要があります。地形に沿って飛行するときは、離陸地点からの高さと、その地点の地表からの高さも区別して考えなければなりません。通信が届くことと、計画上の飛行条件を満たすことを、同時に確認する必要がありました。


東京で地図を確認した段階では、目的地まで到達できるとは判断できませんでした。そこで特別授業の約1週間前に現地へ入り、実際に機体を飛ばしながら複数の候補ルートを検証しました。



約3時間の実機検証で、北側を経由するルートへ


最初に試したのは、山と山の間の谷を進むルートです。ところが、目的地の手前で通信が途絶し、採用には至りませんでした。次に南側の山を登り、稜線に沿って進むルートを検証しましたが、こちらも山頂の先で通信を維持できませんでした。


検証当日は快晴でした。無線通信を行う上で最高の気象条件でしたが、それでも二つの候補ルートでは通信を維持できず、経路そのものを見直す必要がありました。


そこで着目したのが、北側の山を経由するルートです。目的地に近い山頂付近まで、Dock 3との通信を維持しながら上がれる可能性がありました。そこから地表との高度差を確認しつつ、ポイントゼロへ向かう経路を検証しました。


結果として、このルートで目的地へ到達できることを確認しました。ただし、通信強度に十分な余裕があったわけではありません。ここで得られたのは、検証時の条件下で到達できる経路と、その通信上の制約です。どのような条件でも安定して飛べることを保証するものではなく、当日の気象や通信状態も踏まえて運用する必要があります。


ルートの検討から設定までに要した時間は約3時間。地図から候補を考え、実機で通信状態を確認し、その結果から経路を組み直す。機体の特性と制御通信への理解を、現場での判断につなげる検証となりました。

水仙ドームからポイントゼロまでの採用ルート
水仙ドームからポイントゼロまでの採用ルート


学校側の回線も含めて、遠隔飛行を検証する


機体から映像を送れても、学校で受け取り、操作できなければ授業の体験は成立しません。今回使用した音楽室には、持ち込む機材で自由に利用できるインターネット環境がなく、学校側の通信手段も準備しました。


事前調査ではドコモとauの回線を比較し、この場所でより速度を確保できたau回線のホームルーターを採用しました。特定の回線が常に適しているということではなく、実際に利用する場所で確認した結果に基づく選定です。


授業の2日前には音楽室へ機材を設置し、回線速度を確認したうえで、学校からの遠隔操作によるテストフライトを行いました。この日は風が強く、ポイントゼロへの飛行は行わず、学校付近を撮影できる飛行計画の範囲内で確認しています。


このように、目的地までの経路検証と、学校で操作・視聴する環境の検証を、それぞれの条件に合わせて実施しました。機体とDock 3の無線通信、Dock 3とクラウドの接続、学校側のインターネット回線は、確認すべき箇所が異なります。どこか一つの通信状態だけで判断せず、操作から映像の視聴までを一連のシステムとして確認することが重要です。


ドローンから届く映像を教室で視聴する
ドローンから届く映像を教室で視聴する

ポイントゼロの景色と、教室が映るサプライズ


当日は遠隔飛行に先立ち、教頭先生からポイントゼロについて説明していただきました。テックファームからも、どのように飛行ルートを決めたのかを児童に紹介しました。これから見る映像の背景に、地域の取り組みと技術的な準備があることを伝える時間となりました。


その後、ドローンポートから遠隔飛行を開始。事前に検証したルートでポイントゼロへ到達し、周辺の景色を教室へ届けました。当日は雲が多く、空は灰色でしたが、画面を見守る児童たちは上空からの景色を喜んでいました。


当日のポイントゼロ周辺の空撮画像
当日のポイントゼロ周辺の空撮画像
事前検証時の晴天の空撮画像(事前検証時に撮影)
事前検証時の晴天の空撮画像(事前検証時に撮影)

帰還時には、事前のテストで見つけたサプライズを用意しました。ドローンポート付近まで戻ったところで手動操作へ切り替え、望遠カメラで越廼小学校の音楽室の窓を捉えます。教頭先生が大きくタオルを振ると、その動きを教室の画面でも確認できました。


遠くの景色を見ていた画面に、自分たちがいる教室が映る。人の姿を細かく見分けられる画質ではありませんでしたが、ドローンと教室がつながっていることが伝わり、大いに盛り上がりました。遠隔操作や映像伝送という技術を、児童が実感できる体験に変えられた場面です。



ドローンから見た教室
ドローンから見た教室
音楽室の窓辺でドローンに手を振る児童たち
音楽室の窓辺でドローンに手を振る児童たち


現場で使える仕組みにするために


今回の特別授業では、プログラミングによる表現と、遠隔飛行による地域の視聴という二つの活用を実践しました。その過程で、教材の内容を会場に合わせること、地形と通信を実機で確かめること、操作する学校側まで含めて環境を整えることの重要性が明確になりました。


テックファームでは、ドローン制御アプリケーションの開発、遠隔制御による課題解決、自動飛行を活用するシステム開発、機材販売・導入支援などに取り組んでいます。今回の教育への応用も、機体や制御ソフトウェアへの理解を基に、利用目的に合う仕組みを作る取り組みの一つです。


教育分野では、専門パートナーの教材・カリキュラム設計と連携しながら、テックファームは学習用アプリケーションの開発や実機フライトの運営など、技術を生かす役割を担っていく予定です。今後は、既存アプリケーションでは対応しきれない細かな指導や学習支援を考慮した、専用アプリケーションの開発も予定しています。


今回実施した屋内ドローンを使用したプログラミング学習講座は、2025年に引き続き、2026年も埼玉県内の私立小学校での導入が決まっています。学校現場で実際に講座を実施し、プログラミング教育としての完成度を高めていきます。


機材を選び、ソフトウェアと通信を組み合わせ、現場で検証する。今回得られた知見を次の実践に生かしながら、テックファームはパートナーとともに、ドローンを活用できる場面を広げていきます。


特別授業を終えて、学校前で記念撮影
特別授業を終えて、学校前で記念撮影


テックファームについて


テックファームはソフトウェア開発や過去のドローン飛行の実績を踏まえて、ドローン飛行における飛行運用(業務委託対応)や関係ソフトウェア開発などを行っております。


また、世界最小クラスの狭小空間で活躍するLiberaware社の「IBIS2」の販売も行っております。


少しでも興味持っていただける方の連絡をお待ちしております。


空のドローン飛行実績例について


  • 獣害対策 (遠隔制御含む)

  • 土砂災害監視 (遠隔制御含む)

  • 豪雨災害監視 (遠隔制御含む)

  • のり面監視 (遠隔制御含む)

  • アクティビティ活用 (遠隔制御含む)

  • 牧場活用 (遠隔制御含む)

  • 農場活用

  • TV番組向け空撮


以下のページにて実績内容を公開しております。



狭小空間で活躍するLiberaware社の「IBIS2」について

弊社は、Liberaware社のゴールドパートナーです。

以下のページにて商品紹介を行っております。

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