3DGS制作がより簡単に———XGRIDS「PortalCam」を実際に使用して感じた、“空間を持ち帰る”という新しい体験
- 7月27日
- 読了時間: 9分

近年、XR・映像・デジタルツイン業界で急速に注目を集めている3D Gaussian Splatting(3DGS)です。
従来のフォトグラメトリや点群ベースの3D化とは異なり、“その場の空気感まで保存する”
ようなリアリティを持つ技術として、急速に実用化が進んでいます。
その中でも今回使用したPortalCam公式サイトのXGRIDS社「PortalCam」は、
単なる3Dスキャナーとは少し違う存在でした。
今回はセキド様(セキド公式 XGRIDS PortalCamページ)からお借りし実際に体験しました。
実際みて感じたのは、「3Dモデルを作る」というより、 “空間そのものを記録する”という感覚です。
本記事では、そもそもPortalCamとはどんな機材なのかを整理したうえで、実際に使って感じたメリット・デメリットを、技術者目線で正直にレビューしていきます。
PortalCamとは
PortalCamは、XGRIDS社が開発したLiDARと4台の高性能カメラを搭載したポータブル3Dスキャナです。LiDAR SLAMとVisual SLAMを組み合わせた独自のマルチSLAMアルゴリズムにより、複雑な構造や広い空間でも安定して3Dモデルを生成できるのが特長で、生成した3Dモデルは同社の3DGS処理ソフト「Lixel CyberColor(LCC)」で仕上げていく仕組みになっています。
本体重量は900g未満と非常に軽量で、手持ちのまま屋内外を問わず自由にスキャンできるのも特徴です。撮影方法もいたってシンプルで、対象となる空間の中を歩き回るだけ。従来のフォトグラメトリのように綿密な撮影計画を立てなくても、比較的安定した品質の3Dモデル(3DGS)が得られます。
用途としては不動産、映像制作、VFX、ゲーム、文化財保存、VR/ARなど幅広い分野での活用が期待されており、「空間をまるごとデジタルに残す」ための業務用機材という位置づけです。 Tokyo-np
XGRIDS「PortalCam」“空間を持ち帰る”時代
3Dスキャン業界では今、「点群」や「メッシュ」から、“空間そのものを保存する”という方向へ大きく流れが変わっています。
その中心技術が、3D Gaussian Splatting(3DGS)です。
セキド様からXGRIDS社の「PortalCam」のメリット・デメリットについてお話を伺いました。実際に業務レベルで触れて感じたのは、「これは単なる3Dスキャナーではない」ということです。
導入コストについて
PortalCamは、主に2つのプランがあります。
一般的な360度カメラより高価ですが、“業務用3DGS制作機”として考えると、かなり戦略的な価格設定だと感じます。
現在、国内で公開されている価格では次のとおりです。
Basic 1年版パッケージ
現在は年間約82.5万円(税込)となっています。
内容は以下のとおりです。
PortalCam本体
バッテリー×2
充電器
三脚
ケース
LixelCyberColor Basic 1年ライセンス
Premium 永久版
Premium永久版は約231万円(税込)となっています。
こちらは、
空間認識 Revit連携 (空間構造を認識し分類データを生成)
ドローン (DJI製ドローン画像とデータを融合し上からもデータ再現)
Map Fusion (2つのプロジェクトを1つのデータにする機能)
などがBASICにプラスした形で利用可能で、 BIMや大規模デジタルツイン用途向けです。また頻繁につかうのであればこちらの方がコストパフォーマンスは高いです。
実際に触って感じた「価格以上の価値」
正直、最初は「80万円超えか…」という印象はありました。ですが実際に使うと、従来のフォトグラメトリ工程を考えれば、かなりコスト構造が変わります。
実際に生成したものをいくつか画像で紹介
条件としては通路の真ん中を歩いて行き帰りを2巡した形です。
撮影時間はたった6分と短い!



2枚目の画像でガラス面や反射物に対して壊れがない状態かつ一番3DGSの壊れやすい光の動きがあるプロジェクターに投影された壁周りのキレイさは異常ですね。このあたり撮影工夫が必要なものが無しでいけるのは強みです。テクスチャ解像度も高く、360カメラではここまで出すのは大変ですね。
一番の見どころは物体の形状がLiDARのおかげでシャープな所です。普通の撮影ではエッジが立たないように見えるのですが、ここが差別化している点ですね。
短い時間という制約がある場所でとくに活用に適していると感じます。Sony様のCrystal LEDにも活用しやすそうですね。
従来の3D制作では必要だったもの
例えば高品質3D制作では通常、以下が必要でした。
一眼カメラ
高性能PC
生成ツール
手動修正
スキャン知識
さらに、これらは撮影失敗リスクも高いものでした。
PortalCamは「歩くだけ」で成立する
PortalCamは、LiDARと4カメラを組み合わせた専用設計です。歩きながら撮影するだけで、かなり高品質な3DGSが生成できます。
特に感じたのは、“撮影の心理的負荷”が異常に低いということです。
従来のフォトグラメトリは、以下のものとの戦いでした。
撮り漏れ
ブレ
オーバーラップ不足
しかしPortalCamは、「とりあえず歩けば成立しやすい」。
この感覚が大きいです。
安価な360度カメラでも3DGSは作れるのでは?
現在、Insta360などの360度カメラでも3DGS生成は可能です。低コストで始められるため、検証用途では非常に優秀です。ただし、PortalCamとはかなり方向性が違います。
360度カメラ生成のメリット
360度カメラ生成には以下4つのメリットがあります。
圧倒的に安価
数万円〜十数万円で始められる。初期検証には非常に向いています。
軽量・持ち運びしやすい
小型で現場負担が少ない。
撮影スピードが速い
ワンショットで広範囲撮影可能。
SNS・簡易VR用途に強い
簡易空間共有には十分なケースも多い。
360度カメラ生成のデメリット
メリットもある一方で、実際に比較すると、いくつか以下のような大きな違いがあります。
空間精度が不安定
360度映像だけでは、 位置推定が不安定になりやすい。
特に、以下の対象物ではでは崩れやすい印象があります。
長い通路
特徴点が少ない場所
暗所
PortalCamはLiDAR統合のため、ここがかなり安定しています。
floaters(浮遊ノイズ)が増えやすい
360度ベースは、特に以下は不要なノイズが発生しやすいです。
人
ガラス
反射
上記周辺で破綻が出やすいです。
“空間密度”が違う
PortalCamは空間そのものを高密度に取得している感覚があります。360度カメラ生成は、見た目は綺麗でも、近づくと情報量不足を感じるケースがあります。
業務利用時の安定性
ここが最も大きい差かもしれません。360度カメラ運用は、どうしても「うまくいく時と崩れる時がある」印象があります。
PortalCamは、専用設計なだけあり、再現性が高い。これは業務では非常に重要です。
360度カメラとPortalCamどちらを選ぶべきか
これは用途次第です。次のセクションで詳しく説明していきます。
360度カメラ向き
小規模検証
個人制作
SNS用途
簡易VR
低予算案件
PortalCam向き
業務利用
XRコンテンツ
VFX
不動産
デジタルツイン
文化財
高品質空間保存
XGRIDS「PortalCam」の弱点・課題点
ただし良い点ばかりではありません。
PortalCamは、現時点の3DGS機材としてはかなり完成度が高く、「3DGSを業務レベルへ押し上げた機材」という印象があります。
特に、以下の点では非常に優秀です。
撮影速度
ワークフロー簡略化
LiDAR統合による安定性
XRとの親和性
ただし、実務導入を考えるなら、「PortalCamだから万能」ではない点も理解しておく必要があります。
「ソフトウェア依存」がかなり強い
PortalCamは、ハード単体ではなく、XGRIDS独自システム前提です。
LCC Studio
Lixel CyberColor
XGRIDS Viewer
つまり、「機材を買えば終わり」ではなく、「ソフトウェア契約込み」の世界です。
実務視点で何が問題になるか
これは企業利用ではかなり重要です。
例えば、
将来的な価格改定
ライセンス変更
クラウド依存
エクスポート制限
などのリスクがありサブスクに縛られてしまうという問題です。
“簡単すぎる”ことによる限界
PortalCamは、非常に使いやすいです。ただ、逆に言うと、一眼カメラのような「細かい制御が少ない」という側面があります。
出力調整自由度が少ない
パラメータ制御が弱い
専門家ほど気になるポイント
例えば以下の場合、PortalCamは現状かなりブラックボックス寄りです。
独自最適化したい
バッチ処理したい
独自Pipelineに組み込みたい
品質チューニングしたい
稼働時間
バッテリーの関係で最大30分程度です。そのため、サポートしたい場所を踏まえると行き帰りで15分程度の距離となります。
さらに詳細に撮影となると撮影範囲が狭くなり何度もバッテリー交換が頻繁に必要になります。また撮影時間が長いと生成時間もそれだけ長くはなるのは他の方法と変わらずという点です。
一眼フォトグラメトリに“完全勝利”ではない
PortalCamは非常に便利ですが、「最高品質の静止物スキャン」では、まだハイエンドフォトグラメトリに勝てないです。
実際、以下においては、一眼+高品質レンズ+手動撮影の方が強いです。
細かい文字
微細ディテール
超高解像感
特に弱いケース
以下については、従来フォトグラメトリやスタジオ撮影によるの方が向いてます。PortalCamは、「広い空間を高速にリアル再現する」方向に強いです。
小物
高周波ディテール
テクスチャ重視案件
商品スキャン
人物
明暗差・屋外耐性はまだ課題
PortalCamは、露出制御面でまだ制限があります。
晴天時のノイズ
ゴースト
フレア
白飛び
なぜ起きるのか
3DGSは、通常の写真以上に“入力映像品質”へ影響を受けます。
PortalCamは機動力重視のため、以下のような制約があります。
一眼ほど大型センサーではない
レンズ性能も限界がある
完全マニュアル撮影ではない
ベスト条件は、曇天・均一照明・室内です。
一方、苦手条件は、直射日光・強い逆光・高コントラスト環境という傾向があります。
GPU要求は意外と重い
これは意外と見落とされます。
PortalCamは撮影自体は簡単ですが、処理はかなりGPU依存です。大規模空間では、RTX 5090クラスでも数時間かかる可能性はあります。
「簡単=軽い」ではない
ここは重要です。PortalCamは、初心者でも扱いやすいですが、“裏側ではかなり重いPC側の3D処理”をしています。
つまり、業務利用では以下の環境整備が必要です。
GPU
ストレージ
VRAM
VR/Web公開ワークフローがまだ統一されていない
これも現状の3DGS全体の課題です。PortalCam独自Viewerでは綺麗でも、他社ツールへ持っていくと、問題が出るケースがあります。
専門家視点での結論
PortalCamは、間違いなく現時点トップクラスの “3DGS実用機”です。ただし、「従来3DCGを完全に置き換える」ものではありません。
現状は以下のような棲み分けです。
強い領域
XR
ロケーション保存
バーチャルツアー
デジタルツイン
空間アーカイブ
苦手領域
精密測量
商品撮影
超高精細静止物
高度編集前提ゲーム開発
そして最大のポイントは、「PortalCamを買う」 ではなく、「XGRIDSシステムへ入る」という意識が必要なこと。
ここを理解した上で導入すれば、 PortalCamはかなり強力な武器になると感じました。
総評
PortalCamは、「3Dモデル制作機材」というより、「現実空間を手軽に保存する装置」に近い存在でした。
特に3DGSは、従来の3DCG制作とは思想そのものが違います。
“綺麗なモデルを作る”ではなく、“その場を残す”という方向。
360度カメラでも3DGSは始められます。
ただ、PortalCamを触ると、「業務用途で3DGSを安定運用するなら、専用機の価値はかなり大きい」と強く感じました。
XRやリアルタイム3D制作に関わる人ほど、この差を実感すると思います。
まとめ
テックファームでは、人物や小物のスタジオ撮影から、ドローンによる広域空撮、一眼レフを用いた高精細スキャンまで、3DGSにおける一気通貫のノウハウを蓄積しております。
今回紹介したPortalcamも、ご要望に合わせ対応可能です。
また既に多種多様な業界の企業様よりご相談をいただき、すでに多くの企業様が当社の技術を通じて新たな価値を創出されています。
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