OpenAIの最新モデル「o1」のサービス概要・料金・特徴まとめ

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2022年11月30日に公開され、ビジネスでの活用が急速に広まるChatGPTは、2024年9月12日に最新の大規模言語モデル「OpenAI o1」を発表しました。

OpenAI o1は従来の生成AIと比較して、とくに物理学や生物学、化学、数学分野においての能力が優れていると話題になっています。

人間の博士レベル以上の知能と例えられるように、知識だけでなく複雑な推論を実行できる点が大きな特徴です。

本記事では、従来のChatGPTモデルとOpenAI o1との違いや特徴、ビジネスでの活用事例などについて詳しく解説します。

近年、ビジネスの加速には生成AIの活用が欠かせない存在となっています。ぜひ最新のモデルも活用して、業務改善や業績向上につなげましょう。

最新モデルOpenAI o1(ChatGPT o1)とは?

ここではOpenAI o1の概要や特徴について詳しく紹介し、さらに料金体系や利用制限にも言及しています。

OpenAI o1は今までの生成AIとは異なり、便利を通り越して人間の能力を超えつつあると言っても過言ではありません。OpenAI o1がどのような特徴で、どのような能力か持つのか詳しく解説していきます。

OpenAI o1の概要|新しいモデル「推論トークン」を採用

従来の生成AIモデルは、テキストデータを単語や文字、サブワードといった小さな単位に分割して処理します。この処理単位を「トークン」と呼びます。しかし、従来モデルは複数の視点から思考することが苦手であり、回答の正確性に限界がありました。

一方で、OpenAI o1は応答を生成する前に、複数の角度から思考を巡らせる「推論トークン」を使用します。この仕組みにより、モデルは一度の思考プロセスに縛られることなく、繰り返し推論を重ねて最適な回答を導き出します。

推論トークンを採用したことで推論能力が高く、コーディング分野では、複雑なプログラムのバグ修正やコード生成の精度が向上し、数学分野では、難解な数式の解法や論理的な問題の回答能力が向上しました。

OpenAI o1はこれまでの生成AIを超える知的能力を発揮し、IQ120相当の知能指数を持つと言われています。

トークンとは?
自然言語処理で用いられる単位を表します。意味のある最小単位に分割したテキストであり、コンピュータが処理する際に理解しやすいものです。

OpenAI o1の特徴|数学や物理学に強い

OpenAI o1は数学や物理学、生物学、化学などの分野において、従来の生成AIよりも大幅に回答の精度を向上させています。

具体的な例を挙げると、以下のようなものです。

  • 国際数学オリンピック予選試験で83%のスコアを獲得
  • コーディングコンテスト「Codeforces」で上位11%に入った
  • 物理学や生物学、化学の問題のベンチマークで博士レベルの精度

じつは、数学オリンピックのGPT-4oでのスコアは13%でした。一方で、OpenAI o1の試験結果は83%と、その差は歴然。驚異的でさえあります。

OpenAI o1では、一つの質問に対し、最終的な回答を出す前に考えるプロセスを取り入れています。また、思考過程が段階的に可視化される点も従来の生成AIには無かった特徴です。

ただし、Web閲覧やファイルのアップロード機能、画像のアップロード機能などは実装されていません。

OpenAI o1の料金体系|無料版は利用不可

OpenAI o1は、残念ながら無料版では利用できません。したがって、OpenAI o1を利用したい場合には、ChatGPT PlusまたはChatGPT Teamの有料プランへの加入が必要です。

OpenAI o1には下記2種類のモデルがあります。

  1. o1-preview:高度な推論タスクに特化したモデル
  2. o1-mini:軽量かつ高速な低コストモデル

「o1-preview」と「o1-mini」の料金は以下のように設定されています。

1.o1-preview:
入力トークン料金: $15/1Mトークン
出力トークン料金: $60/1Mトークン
2.o1-mini:
入力トークン料金: $3/1Mトークン
出力トークン料金: $12/1Mトークン

必要に応じたプランの利用がおすすめです。

OpenAI o1はminiとpreviewでは利用制限が異なる

OpenAI o1には利用制限があります。ただし、「o1-preview」と「o1-mini」では利用制限が異なるため、注意が必要です。それぞれの利用制限は以下のように設定されています。

  • o1-preview:1週間に最大50メッセージまで
  • o1-mini:1日に50メッセージまで

利用制限はo1-miniよりもo1-previewの方が厳しく尚且つ料金も高額なため、まずは練習としてo1-miniを利用するのがおすすめです。さらに深く利用したい場合には、o1-previewを利用するのがよいでしょう。

また、低コストモデルのo1-miniは、将来的にChatGPTの無料ユーザーに提供される予定となっています。

OpenAI o1のと従来のChatGPTとの違い

OpenAI o1とChatGPT4oにおける問題解決方法の違いを簡単にまとめると以下の表のようになります。

特徴 OpenAI o1 ChatGPT4o
思考スタイル じっくり考える

バックトラッキングが可能

素早く幅広く対応
得意分野 複雑な理系問題 多様な話題の会話
物理学、生物学、化学の問題のベンチマーク 78 56.1
競争数学AIME(2024) o1-preview:56.7

o1-ioi:83.3(非公開モデル)

13.4
処理時間 長め 短め
知識の使い方 深く掘り下げる 広く活用する
回答の特徴 段階的で論理的 柔軟で文脈に応じた

すべてにおいてOpenAI o1が優位というわけではなく、一般的な言語タスクではChatGPT-4oの方が優位となっています。

OpenAI o1とChatGPT4oの主な相違点は以下の4項目です。

  • 思考プロセスの改善
  • 高度な推論能力
  • 応答速度の向上
  • 画像認識機能の搭載

それぞれ詳しく解説しましょう。

思考プロセスの改善

OpenAI o1は、ChatGPT4oとは思考プロセスが大きく異なります。思考プロセスが改善され、より難解な問題を解決できるようになりました。また、思考過程が可視化されることで、ユーザーにとって理解しやすくなっています。

具体的な改善点は、徹底的な推論や自問自答を繰り返す点です。推論や自問自答によって、従来の生成AIよりも高精度な回答を生成できるようになりました。

自問自答を繰り返すことで、自らの間違いを認識可能です。また、間違いを認識した際には、「メタ認知能力」によって異なる戦略を試します。

メタとは「高次の」「超越的な」を意味する接頭語です。つまり、メタ認知能力は、AI自身の思考や回答を客観的にとらえ、高次の判断をする能力を指します。

OpenAI o1のプロセスは上記のように、時間をかけて思考するように設計されていますが、より高精度な回答を得られることも確かです。

ただし、文章作成はChatGPT4oモデルの方が得意なため、必要に応じた使い分けが必要でしょう。

高度な推論能力

前述したとおり、OpenAI o1では「推論トークン」という新しい手法を採用しています。推論トークンにより、従来の生成AIよりも思慮深いだけでなく、複数のアプローチ方法の検討が可能になりました。

複雑な問題を多角的に分析することで、より高精度の回答が得られます。推論トークンによる具体的なプロセスは以下のとおりです。

  1. 質問を理解する
  2. 複数の角度から思考する
  3. 上記の思考過程を「推論トークン」として記録する
  4. 最終的な回答を出力する
  5. 回答後に推論トークンを破棄する

OpenAI o1では、間違えた場合は前の状態に戻る「バックトラッキング」の繰り返しも可能です。推論トークンによって深い思考にたどり着き、正しい答えを導き出します。

応答速度の向上

OpenAI o1はChatGPT4oと比較すると、応答速度が遅い点は否めません。また、OpenAI o1として考えると、「OpenAI o1-mini」よりも「OpenAI o1-preview」は回答が非常に遅いと指摘されていました。

ユーザーからの要望に応えるべく、正式リリース版のOpenAI o1の応答速度はOpenAI o1-previewの応答速度の約3倍になっています。

以前は簡単な質問にも長考する印象がありました。しかし、正式版ではOpenAI o1では簡単な質問には短く考え、難しい質問には長く考える調整を自動で行うように進化しています。

画像認識機能の搭載

従来のChatGPT4oは画像が扱えず、図で表されるような問いには上手く答えられませんでした。一方、OpenAI o1では画像のアップロード機能が追加されたことで、生成AIの可能性が広がっています。

OpenAI o1は文字と画像の両方を使ったマルチモーダル(Multimodal)回答生成です。マルチモーダルとは、テキストや画像、動画、音声、数値など複数のデータを一度に処理できるAI技術のことを表します。

OpenAI o1に画像認識機能が搭載されたことで、図から面積を算出したり、建築や工学系の設計図なども生成AI上で扱えるようになりました。

OpenAI o1のビジネス活用事例

ここまで、OpenAI o1の概要や従来の生成AIとの違いについて紹介してきました。しかし、実際にどのような場面でOpenAI o1を活用すればよいのかイメージが掴めないかもしれません。

そこで、OpenAI o1をビジネスに活用できる以下のようなシーンを考えてみましょう。

  • マーケティング自動化
  • データ分析による顧客対応
  • 複雑な論理パズルを解決

それぞれ詳しく紹介します。

OpenAI o1を活用してマーケティング自動化を実現

OpenAI o1は優れた自然言語処理機能を有しているため、Web上の顧客データを抽出したり、解析したりできます。

したがって、OpenAI o1を活用すれば、膨大な量の消費者データを活用したターゲティングや広告クリエイティブの生成支援が可能です。

具体的な手法としては以下の手順になります。

  1. Web上にある顧客の声を抽出する
  2. 製品やブランドに対する反応を把握する
  3. 顧客のニーズに合わせたパーソナライズド広告を自動生成する
  4. 広告キャンペーンのA/Bテストを繰り返す

Web上のデータとしては、SNSの投稿やオンラインレビューが有効です。上記の手法は、実際にある消費財メーカーで取り入れられています。OpenAI o1の推論トークンによる深い思考と複雑な推論が、大きな成果を得るカギとなった事例です。

また、リアルタイムで顧客の反応を把握できるため、機会損失の少ない手法といえるでしょう。

OpenAI o1のデータ分析による顧客対応の強化

OpenAI o1は顧客対応にも活用できます。

複雑なタスクの推論がOpenAI o1の大きな強みです。推論に強いことで、複雑な問い合わせにも対応できます。また、「じっくり考えて答えを出す」という特徴もあり、チャットなどの文章から相手の感情を推測することも得意です。

上記のようなOpenAI o1の強みを生かし、顧客データ分析によって効率的な顧客サポート体制の構築ができます。さらに、高い自然言語処理技術によってカスタマーサポートへの問い合わせ内容の自動分類も可能です。

顧客対応には時間がかかることもありますが、OpenAI o1を活用することで対応時間が大幅に短縮でき、顧客からの満足度も向上します。

OpenAI o1の推論を利用して複雑な論理パズルを解決

OpenAI o1は数学分野の分析で高い精度を誇ります。OpenAI o1を活用すれば、複雑な論理パズルを解くことも可能です。複雑な論理パズルは、従来の生成AIモデルにとっては難しい課題でした。

一方、OpenAI o1では人間の思考プロセスを模倣できるため解決できるようになっています。従来の生成AIとの大きな違いは、推論とバックトラッキング(間違えた場合は前の状態に戻る)の繰り返しが可能な点です。

OpenAIが公開する以下の動画では、数字パズル「ノノグラム」を解く様子を表しています。短い動画なので、ぜひご覧ください。

論理パズルを解く能力は、サプライチェーンの最適化や人材採用プロセスの改善、プロジェクト管理などの複雑なビジネス課題に対するアプローチとして非常に有効です。

OpenAI o1を活用すれば複雑な論理パズルを解けるため、ビジネス分野においてもさまざまな応用が期待されています。

まとめ〜OpenAI o1をビジネスに活用して業務改善を〜

本記事では、OpenAI o1について詳しく解説しました。

OpenAI o1は従来の生成AIとは一線を画す人工知能です。とくに物理学や生物学、化学、数学分野において優れていて、人間の博士レベルの知能となっています。

OpenAI o1の大きな特徴としては「推論トークン」を採用した高度な推論能力と画像認識機能の搭載です。とくに高度な推論能力によって深い思考ができるため、ビジネスにおいてもさまざまな分野で活用できます。

生成AIのビジネス分野での活用が常識となってきている昨今において、OpenAI o1の誕生は大きな変革をもたらすでしょう。ぜひ、OpenAI o1をビジネスに活用し、業務改善してください。