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AI駆動開発:国内企業に学ぶ事例10選

1 日前
読了時間: 9分

AI駆動開発は、国内でも製造業・金融・流通小売・自治体・ITサービスの幅広い分野で、すでに成果が出ています。


本記事の10事例のうち5事例では、工数の50%以上の削減が公表されています。


AI駆動開発とは、AIをコード作成の補助にとどめず、要件定義からテストまで開発プロセス全体に組み込む進め方です。


「AI駆動開発:世界の先進企業に学ぶ事例9選」では、海外企業の取り組みを紹介しました。今回は視点を変え、日本企業の事例だけを業種別に紹介します。


事例企業の業界を製造業、金融、流通小売、公共・自治体、ITサービスと5つに分けてご紹介しますので、ご関心の業界からぜひ参考にしてみてください。




製造業:現場と品質を守りながら開発を速くする


製造業は、大規模なシステムを厳しい品質基準のもとで管理しています。この章では、そうした現場でAIが開発・運用の手間をどう減らしているかを、明治ホールディングスとNECの事例から見ていきます。



明治ホールディングス(Amazon Q Developer)


明治ホールディングスのグループDX推進部AWS事務局は、クラウドサービスの管理アカウントを300以上、20名で運用していました。管理業務が増えるなか、開発と運用の効率化が課題となっていました。


そこで同社は、AIがコードの作成や調査を助ける「Amazon Q Developer」を導入しました。ドキュメントや設計資料の作成、インフラ構成をコードで管理する「Infrastructure as Code」の開発、日々の運用対応など、幅広い工程で活用しています。


導入の結果、事務局全体の生産性は80〜90%向上しました。定型作業の多くを自動化し、一人あたり毎日1時間以上の作業時間を減らしています。




NEC(Metabob)


NECの社内AIエージェント開発チームでは、コードレビューや保守作業の多くを人の手で行っていました。従来の自動チェックツールも、書き方の誤りを見つける程度にとどまり、複雑な不具合の発見には時間がかかっていました。


そこで同社は、AIがコードの問題点を指摘する「Metabob」を導入しました。活用の範囲は、保守フェーズにおけるコードレビューと不具合の修正に絞られています。開発全体ではなく、この工程に特化した使い方です。


目視でのレビューや手作業の修正と比べると、工数を66%削減できました。AIを使った他のレビューツールとの比較でも、50%の削減効果が出ています。




金融:規律とスピードを両立する


金融業界は規制が厳しく品質基準も高い分野です。この章では、そうした環境でAIが開発プロセスにどう組み込まれ、規律とスピードを両立させているかを、東京海上日動システムズとみずほ証券の事例から見ていきます。



東京海上日動システムズ(AI-DLC)


東京海上日動システムズは、社内のコード生成基盤による生産性向上が10〜20%にとどまっていました。一方、IT人材不足とシステム需要増加のギャップを埋めるには、10〜20倍規模の改善が必要という課題がありました。


そこで、AWSが開発プロセス全体にAIを組み込む手法「AI-DLC」の検証ワークショップに、金融業界の企業として初めて参加したのです。要件定義から設計、試作品づくりまでを、4チームがそれぞれ異なるテーマで実践しました。


結果、4チーム全てが1.5日でシステムの初期版を完成させ、うち1チームはテスト環境への配置まで終えました。従来2〜3ヶ月ほど見込んでいたチームもあり、期間は大きく短縮されました。


一方、既存システムの改修や大規模な適用は、今後の検証課題とされています。




みずほ証券(Devin)


みずほ証券は、中期経営計画の柱としてDX推進を掲げ、生成AIを使った業務効率化に力を入れています。一方で、システム開発プロセス全体の見直しや、ビジネスニーズへの素早い対応、エンジニア不足の解消が課題でした。


そこで、AIがコードを自動で作成するサービス「Devin」を導入しました。開発部門の約130名が、85を超えるプロジェクトで活用しています。保守や追加開発にかかる工数のうち、約15%を占める影響調査の工程にも取り入れました。


導入の結果、タスク単位の工数削減効果は50〜70%、最大では90%にのぼっています。


参考:



流通・小売:現場の生産性を数字で語る


EC・通販を含む流通小売の現場では、日々の開発やテスト業務にAIを取り入れる動きが進んでいます。この章では、モノタロウとZOZOの事例から、現場の生産性がどのように数字で語られているかを紹介します。



モノタロウ(Devin/Cursor/Cline)


モノタロウでは、長年の開発で積み重なった、将来の修正の手間を増やす古い仕組み(技術的負債)の解消と、組織拡大に伴う属人化の解消が課題でした。


そこで同社は、AIがコードを提案する「GitHub Copilot」を全社標準として導入しました。あわせて「Devin」「Cline」「Cursor」も活用しています。特に、インフラの構成をコードで管理する「Infrastructure as Code」の開発では、高い評価を得ています。


Devinは、月間約300件のプルリクエストを作成し、実際に取り込まれています。プルリクエストとは、プログラムの修正案を提出し、チームのチェックを受けて本体に取り込んでもらう手続きのことです。

費用は月あたり約5,000ドル。同社はこれを、開発者の増強に匹敵する貢献と評価しています。


一方、Cursor・Clineについては、開発者の手応えはあるものの、プルリクエスト数という指標では明確な増加が見られていません。この点は、同社も認めています。


参考:



ZOZO(工数削減の効果計測)


ZOZOのレコメンドシステム開発チームでは、AI活用による工数削減の効果を体感していました。しかし、その効果を数値で把握できておらず、投資対効果を説明できずにいました。


対象は、メールやLINE、プッシュ通知の配信をパーソナライズする、エンジニア3名の小規模チームです。開発・テスト・ドキュメント作成など、業務全体にAIを取り入れています。


使用しているのは「Claude Code」「Codex」「Devin」です。あわせて、GitHub Projectsなどを使い、効果を計測する仕組みを自社で構築しました。


この仕組みにより、体感でしかなかった効果を数値で示せるようになりました。AIによる工数削減時間は、2025年度上半期の212.6時間から、下半期には439.9時間に増加しています。


一方、「3人分の働きに相当する」という体感値に対し、実測では1人あたり約1.2倍にとどまりました。体感と実測の間には、差があることもわかりました。


※出典のZOZO公式Tech Blogは、エンジニア個人による執筆記事です。



公共・自治体:税金で運営される現場でも起きている変化


ここまで紹介したのは、大手メーカーや大手金融の事例でした。この章では、自治体でも同じ変化が起きていることを、札幌市の事例から紹介します。基幹系システムの標準化という、公共の現場ならではの背景に注目します。



札幌市(Devin)


札幌市では、基幹系情報システムの標準化にともない、開発言語「Java」のバージョンアップが必要になりました。これにより、大規模なテストコードの書き換えが求められていました。


対象となったのは、約150万ステップに及ぶテストコードです。この膨大な書き換え作業に、AIがコードを自動で作成する「Devin」を活用しました。


その結果、テストコードの書き換えにかかる工数は、従来の200人月から50人月まで短縮され、75%の削減に成功しています。




ITサービス:開発会社自身がAI駆動開発をどう実践しているか


ここまでは、AIを利用する企業の事例を紹介してきました。この章では、開発を専門とする企業が、自社の開発現場でAIをどう活用しているかを紹介します。キヤノンITソリューションズ、セラク、テックファームという3社の取り組みを見ていきます。



キヤノンITソリューションズ(Amazon Q Developer)


キヤノンITソリューションズは、全社をあげて生成AIを活用する取り組みを進めていました。その中心を担ったのが、社内に設置された生成AIビジネス推進室です。


同推進室が中心となり、AIがコードの作成を助けるサービス「Amazon Q Developer」を採用しました。導入にあたっては、3ヶ月間にわたる業務適用検証を実施しています。


この検証には、57名の技術者が参加しました。実際の開発業務でAIを使いながら、効果を確かめる取り組みです。


検証の結果、開発のスピードは約3倍に向上しました。あわせて、作業にかかる工数も67%削減されています。




セラク(Cursor Enterprise)


セラクは、全社的なAI活用戦略「AI SHIFT」を掲げ、活用をさらに加速させようとしていました。その一環として、まずは一部のチームで先行してトライアル運用を行いました。


導入したのは、AIがコード作成を支援するサービス「Cursor」の企業向けプランです。検証の対象は、開発サイクル全体、リリースの頻度、コード変更を処理する速度など、開発プロセス全体に及びました。


その結果、開発サイクルにかかる時間は、従来の10分の1にまで短縮されました。リリースの頻度にも変化が表れています。従来は「2〜3ヶ月に1回」だったものが、「週2〜3回」まで向上しました。




テックファーム(cc-sdd/仕様駆動開発)


テックファームは、東京都競馬・株式会社eパドック向けの新サービス「nankan BOX」の開発において、限られた期間のなかで高い品質のサービスを立ち上げる必要がありました。


そこで採用したのが、仕様をもとに開発を進める手法「cc-sdd」です。要件定義から設計、実装、テスト、進行管理まで、開発の全工程にこの手法を取り入れました。


結果、開発にかかる工数は、従来と比べて50%削減されました。生産性は約2倍に向上し、バグの発生数も約20%減少しています。開発会社であるテックファームが、実際にAI駆動開発を実践して得た手応えです。


参考:



まとめ


本記事では、製造業、金融、流通小売、公共・自治体、ITサービスの5つの業種から、10の事例を紹介しました。


多くの事例に共通していたのは、人材不足や属人化、大規模な書き換えといった具体的な課題を起点に導入していた点です。効果を数字で示す企業が多い一方、東京海上日動システムズは大規模適用を今後の課題とし、モノタロウやZOZOは体感と数値の差も公表しています。


世界版のまとめで挙げた3つの観点は、国内事例にも当てはまります。


1つ目は、負担の大きい工程から始めること。2つ目は、導入効果を必ず数値で確かめること。3つ目は、AIの活用を人材戦略として捉えることです。東京海上日動システムズやみずほ証券は、IT人材・エンジニア不足を導入の背景に挙げています。


また、札幌市の例が示すように、この変化は大企業に限りません。すでに同じ業界の企業や自治体が、AI駆動開発を実践しています。

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