競馬のファンサイト『nankan BOX』のサービス企画・開発を一気通貫で支援
競馬ファン層の拡大に向け、生成AIやAI駆動開発を組み合わせたサービス基盤を構築
株式会社eパドック様(東京都競馬グループ)
株式会社eパドック様は、地方競馬の公式投票サービス「SPAT4」の管理・運用受託業務をはじめとし、様々な角度から“競馬を楽しみ尽くす”お手伝いをされています。 快適な地方競馬の投票環境などシステム面の整備にとどまらず、競馬予想番組のライブ配信や地方競馬観戦ツアーなど、お客様がワクワクする魅力的なイベントやキャンペーンを多数実施されています。
中長期的な戦略として「ファン層の拡大」と「DX推進」を掲げ、新規サービスの導入などにより地方競馬がもっと楽しく、もっと身近なエンターテインメントへと発展していくことを目指して精力的に取り組まれています。
今回当社は、eパドック様が立ち上げる新しいファンサイト「nankan BOX」において、UI/UXデザイン・開発・リリース後の運用サポートまでを一気通貫で支援しました。
新規サービス「nankan BOX」とは
「nankan BOX」は、浦和・船橋・大井・川崎の南関東4競馬場におけるレース情報だけでなく、レースの見どころや出走馬の情報を分かりやすく紹介する情報サイトです。
「南関東競馬のコーディネーター、ナビゲーター、ガイドブックのようなサービス」をコンセプトとして開設されたこのサイトでは、競馬情報サイトにありがちな数字データの羅列ではなく、競走馬や騎手の背景にあるストーリーやレースの魅力を、わかりやすく紹介しています。初心者でも理解のしやすい情報をもとに、「自分で考えて競馬の予想を楽しむこと」ができます。

プロジェクトの背景と当初の課題
本サイトの立ち上げ背景として、競馬市場の変化に伴う顧客接点の再設計や新たな顧客層の獲得に向けた施策が求められていました。
市場シェア争いの激化とファン接点の再設計
公営競技市場はオンライン投票の普及により売得金は成長傾向にあります。しかし一方で、楽しみ方が「リアル体験」から「オンライン」へとシフトして入場者数は減少が続いています。
こうした市場環境の変化を踏まえ、テックファームはファンとの直接的な接点を強化し、競合サービスとの差別化・優位性を確立するための新たなファンコミュニケーションの場が今後重要になると捉え、本プロジェクトの企画支援・提案を行いました。
専門情報の高さによる初心者のハードル
競馬情報は専門性が高い情報が多く、初心者やライト層にとってはレースの焦点や馬の魅力を理解しにくいという心理的ハードルがあります。
既存の公式投票・情報 サイトは、すでに競馬の知識や投票方法を熟知しているコア層向けの機能性や効率性に特化しており、情報も数字データが中心となっています。そのため、知識が十分にないユーザーが競馬の魅力に自然に触れられるような「入り口」となる場が不足していました。そこで、ライト層や初心者へアプローチする情報サイトとして、「nankan BOX」の立ち上げが決定されました。
プロジェクトの特徴
本プロジェクトの特徴は、以下の4点です。
「AI駆動開発」の採用で、迅速な仕様変更にも対応
PdM・サービスデザイン手法を取り入れた企画のブラッシュアップ支援
運用管理システムのノーコード化により、予算内で妥協のないユーザー体験を実現
生成AIによる運用工数の削減
「AI駆動開発」の採用で、迅速な仕様変更にも対応
本プロジェクトの開発フェーズでは、仕様や設計をAIが解釈しやすい構造(マークダウン・Mermaid形式)に整備し、仕様と実装の一貫性を高める仕様駆動開発「cc-sdd」を導入しました。要件定義書から詳細設計書までをこの形式に統一し、前工程の成果物から次工程の成果物を生成できる流れを確立したことで、担当者個人の理解に依存しがちな仕様の意図や背景がドキュメントを介してチーム・AIの双方から参照できるようになりました。
一般的に開発スピードの向上は品質低下とトレードオフになりがちですが、本手法の採用により、開発工数を抑えながらバグの発生も減らすなど、スピードと品質を両立できたことがテックファーム内の振り返りでも確認されています。この開発基盤があったからこそ、公開直前にお客様から寄せられた細かな仕様調整に対しても、スケジュールを遅らせることなく対応を完了させることができました。
PdM・サービスデザイン手法を取り入れた企画のブラッシュアップ支援
本プロジェクトでは、具体的な機能や仕様が未確定である初期段階から、テックファームのサービスデザインチームが参画しました。
ビジネスゴールの定義、ステークホルダー分析、ターゲットユーザー分析といったプロダクトマネジメント(PdM)手法を取り入れ、提供価値の可視化やユーザー体験設計(UX)を実施。複数のターゲットペルソナを詳細に設定し、それぞれのユーザーアクティビティに沿ったユーザーストーリーを策定しました。
さらに、Figmaを用いたプロトタイプを早期に作成することで、初心者からコアユーザーまでが直感的に楽しめるUI デザインをお客様と迅速に確認できる体制で、最優先でリリースすべき最小限の要件を定義した上で、チケット・予算・スケジュールを適切に管理しながら柔軟なブラッシュアップを行いました。これにより、ビジネス構想段階からリリースまで一気通貫でサービスデザインを実現しています。
運用管理システムのノーコード化により、予算内で妥協のないユーザー体験を実現
初心者層に新しい体験を届けるためには、使いやすいフロント画面や親しみやすいデザインといった、サービスのコアとなる「ユーザー体験(UI/UX)」のあるべき形を実現することを優先したシステムを検討しました。
そこで、ユーザーが直接目にするフロントエンドは妥協なく構築する一方、運用スタッフが使用する運用管理システムにはノーコードツール「Accel-Mart Quick」を導入する戦略を提案しました 。認証・認可やセキュリティ等の共通機能をプラットフォーム側に任せることで、管理機能の開発工数の削減を実現しました。これにより、ユーザー向けのフロントエンドに集中投資することが可能となり、当初想定していた魅力的なサービス体験を 損なうことなく、予算内でのシステムを実現しました。

生成AIによる運用工数の削減
ほぼ毎日レースが開催される南関東競馬において、日々公開するレースの解説テキスト等の記事作成は、運営スタッフにとって業務負荷となります。
これに対応するため、競馬情報データを自動で初心者向けの紹介テキストに変換する生成AI配信システムを構築しました※。事実誤認(ハルシネーション)を防ぎ、予想行為に関与しすぎないという運用上のレギュレーションを満たす詳細なプロンプトを構築し 、夜間のバッチ処理によって毎日12レース分の紹介文をAmazon Bedrock(Claude)が自動で一括生成する仕組みを開発しました。
実際の運用では、スタッフが管理画面にアクセスし、AIが自動生成した3つの候補テキストの中から最適なものを選択・微調整してボタンを押すだけで手軽に公開できます。執筆・入稿プロセスを自動化・効率化し、情報の正確性を担保しながら、日々の運用業務負荷の軽減を実現しました。
※本プロジェク トで活用している生成AI(AI駆動開発/コンテンツ生成システム)は、いずれもお客様のデータをAIの学習に使用しない設定としており、情報漏洩や第三者利用のリスクを排除した上で運用しています。
今後について
本サイトは2026年7月27日にローンチを迎えました。
今後、nankan BOXは段階的にユーザーニーズを分析しながら機能拡張を行い、20代〜40代の若年層を地方競馬本来のエンタメ世界へと誘うハブとしての成長を目指します。
テックファームは今後も技術を提供するだけの開発会社に留まらず、ビジネスのグロースを共に支えるITパートナーとして伴走し続けます。
お客様の声
今回のプロジェクトは、競馬情報の新しい見せ方や楽しみ方を提案する、新たなチャレンジとなる取り組みでした。弊社にとっても前例の無いプロジェクトであったため、システムのグランドデザインや仕様策定の段階から柔軟に伴走していただける開発パートナーを探していたところ、ご縁がありテックファームさんにお声がけさせていただきました。
プロジェクトの立ち上げにおいては、価値創造を目的としたワークショップを丁寧に実施していただき、サービスの目指す方向性や両社の認識を十分にすり合わせた上で開発をスタートすることができました。そのおかげで、プロジェクト全体を通して安心感を持ちながら推進することができました。
開発フェーズでは、仕様の再検討や変更が発生する場面も多分にありましたが、技術的な実現性を踏まえながら最適な提案をいただき、スムーズに意思決定を進めることができました。単に要件どおりに開発するだけでなく、事業的な位置づけやサービス価値を理解した上で提案していただけたことが、大変心強く感じられました。
高い技術力や課題解決力はもちろんですが、何よりもより良いサービスを一緒につくるという【共創力】がテックファームさんの大きな強みだと感じています。ご担 当いただいた皆さまのご尽力に心より感謝申し上げます。
プロジェクトマネージャーのコメント
AI駆動開発の導入により、開発の生産性と品質を同時に高めることができました。ユーザ受け入れ時にお客様からいただいた変更要望に対しても、スケジュールを圧迫することなく迅速に対応することができました。
特に、複雑な競走馬の履歴データからコンテンツを生成するロジックの設計・実装・テストでは、競馬のルールやレースの種類、競馬場ごとの違いといった細かな条件に加え、競馬そのものに関する知識をどうコンテンツへ反映させるかというところまで、検討すべき要素が多岐にわたりました。それでも要素ごとにロジックを整理し、効率よくインテグレーションを進めることで、スピードと正確性を高いレベルで両立させることができました。
また、AI駆動開発による自由度の高いフルスクラッチ開発と、ノーコード・ローコードツールを組み合わせるハイブリッドなアプローチを採用したことも、生産性と品質を高いレベルで実現できた要因の一つだと考えています。

