【お客さまインタビュー】 株式会社We Agri様

「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」のサービスデザインについて、弊社グループ企業で農産物及び農産加工品の卸売等を行うWe Agri様 へのインタビューをご紹介。

「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」のサービスデザイン

株式会社We Agri 様は、全国各地の生産者や集荷会社から海外・国内消費者への流通を一元管理する体制を構築。さらに、生産者から消費者の手に渡るまでの全てのロジスティクス・データを集積・分析するなど、農業流通の未来を創る事業を展開しています。国内生産者から集荷を行い、直接海外の消費者まで輸出を行う数少ない国内企業でもあります。
このたび、国内生産者から海外・国内消費者への流通を一元管理するシステム「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」 を開発。テックファームでは要件定義からサービスデザイン、開発まで行い、現在も運用・改善をサポートしています。その他にも、新規ECサイトの立ち上げにも携わらせて頂いています。
We Agri様のご担当者様と、弊社テックファームの担当社員にインタビューを行いました。

アグリ・エクスポート・プラットフォームの主な機能

  • 海外バイヤーからの注文管理
  • 国内農作物仕入れの管理
  • 輸出コンテナの管理
  • 貿易書類を自動的に作成
  • 農業に関するロジスティックデータを集積・分析 など

超アナログな農業界の現状をふまえた DX(デジタルトランスフォーメーション)で海外展開をサポート

はじめに、貴社の事業内容について教えて下さい。

株式会社We Agri 根岸 健 取締役会長

株式会社We Agri 根岸 健 取締役会長

(We Agri 根岸様)当社は、創業以来、農水産物や青果、加工品などを流通させる商社的役割を担ってきました。例えば、ぶどうやさくらんぼを特に優れた生産者から直接仕入れ、
デパートや海外(シンガポールや香港など)の高級スーパーへ輸出するといった事業です。
その中で、2018年にテックファームと資本・業務提携をし、これまでアナログで行ってきた取引や商品のやり取りをデジタルに置き換えようと決断しました。IoTやAIなど業務に関連する領域の最新テクノロジーを有しているテックファームさんと組むことで、業界全体のデジタル化を図ったのです。

また、会社全体のビジネスモデルを換骨奪胎してアグリ・テック企業に生まれ変わるという
意味を込めて、会社名を「ジャパン・アグリゲート」から「We Agri(ウィアグリ)」に変更し、農業流通のさらなるデジタル化に貢献していきたいと思います。

事業のデジタル化の中で、「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」 の開発に至ったということですね。このシステムには、どのような機能があるのでしょうか。

(We Agri 根岸様)農産物流通の形態はほとんど昭和から変わっておらず、非IT的な作業が多い極めてアナログな世界です。米国の有名大学の論文でもDX(デジタルトランスフォーメーション)化が最も遅れた業界と指摘されています。

そんな環境下で、もともとB to B事業として行っていた輸出業務の機能をIT化したのが「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」です。

いくつかの機能がありますが、貿易書類の自動作成を例にとって紹介します。国内の系統流通において求められる商品情報と輸出の際の貿易書類記載に必要な商品情報には大きな差異があります。例えば青森県の「サンふじ」というりんごは、色や形、大きさによる等級と階級によって数十種類のランクに分けられており、国内流通ではそのランク情報は必要です。一方で、これを海外輸出しようとした場合に貿易書類には、数十種類のランク情報は不要となる一方で、英文での商品呼称、商品荷姿の箱サイズや外装材を含めたグロス重量などの記載が必要となります。

デジタル化が進んでいない場合、毎回、電話やメールにて足りない情報を収集し、エクセルやワードで毎回新しく貿易書類を作成するという作業が発生します。これらの業務は、時間と労力がかかり、海外輸出の際の高いハードルとなってしまいます。
そこで、私共はITの力を活用することで、これまでエクセルなどで作っていた貿易書類をフォーマット化し、貿易書類のみに必要となる情報を、システム上で保存、参照、自動計算することで自動的に書類を作成し、業務負担を軽減できるようにしております。

それに加え、「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」を利用すれば、輸送経路や商品のダメージ度合いなどをデータとして蓄積することができます。これらのデータは、輸送方法の最適化を可能にし、輸送コストを抑えるために活用されています。
「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」の開発により、これまで英文貿易書類作成の手間や、ダメージリスク・輸送コストの見込みに不安を感じて海外輸出に二の足を踏んでいた生産者の方々にも、より容易に海外展開をご検討頂けるようになったのではないか、と考えています。

現場で働く人に寄り添ったサービス設計を提案

農業界特有の慣習も多かったようですが、「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」のサービスデザインにあたり、どのような工程を経たのでしょうか。

(Techfirm 楡井さん)本当に特殊な業界なので、まずは、青果物流通、輸出や貿易に関する基本的な用語を勉強し、理解を深めていきました。勉強をしていくと、農作物の輸出には多くの関係者がいることがわかり、流通、輸出に関わる様々な情報が、誰にとって、どのようなタイミングで重要なのかを整理することが必要だと感じました。

そこで、青果市場に連れて行っていただき、実際の現場を自分の目で確かめてきました。社会科見学みたいでしたね。そこでは、印刷したエクセルを回覧しながら作業を進める様子など、働く人々の動きを見ることができ、「この作業は両手が塞がるため、タブレット端末の導入は難しい」など、システム設計だけではわからないことに数多く気付きました。

その後は、市場で見聞きした情報をもとに、立場別に目的や作業内容を整理した業務フロー図を作成しました。同じ立場でも会社ごとにフォーマットや流れが違うこともあるため、複数の関係者に、ヒアリングを重ね、複雑で曖昧な輸出業務フローの課題点を可視化しました。

(We Agri 根岸様)システム屋さん泣かせの、あいまいな部分が多い業界なので、苦労したと思います…。IT業界の言葉や見方が通じない世界です。DXと一概に言っても、何ができるのか、何を期待していいのかもわからない中で、我々に歩み寄ってくれた姿勢に感謝しています。

「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」のサービスデザイン・開発を進める上で、良かったポイントは?

(We Agri 根岸様)きれいなシステムを作れる人はたくさんいると思いますが、ローテクなものをハイテクへ転換する作業は、ほかの会社ではできなかったと思います。デジタルには程遠い、超アナログな業界ですから、従来エクセルで行っていた作業にしても「どうしてこれを使っているのか?」と考え、システムに落とし込んでくれたことに本当に感謝しています。

 

「DX化できた」と言えるようになるために

今後の展開について教えていただけますか?

(左)根岸 健 取締役会長
(右)テックファーム 楡井 みのりさん

(We Agri 根岸様)まずは「アグリ・エクスポート・プラットフォーム」によって、青果物の輸出をデジタル化できたと思います。そして切り身など生の水産物、さらには農水産加工品、酒類などダメージを受けにくいものにも幅を広げています。

並行して、新型コロナウイルス感染拡大の影響下で消費者の行動変容が起きていると仮定し、B to B to CのECサイトを立ち上げました。手始めに国内のサイトを4月末にオープン。海外版はシンガポールのみですが、9月末にサイトをオープンさせました。シンガポール展開は海外展開の下地作りという位置づけです。to Cまでつなげたプラットフォームを展開することで、日本の食材が更に高く評価されていくのではないかと考えています。

今後は、流通のみに止まらず、会計システムを含め、一気通貫でシステム化していきたいと考えています。バックオフィスやフロントにも役立つシステムを作って、初めて私たちが考えるDXが成功したと言えるのではないでしょうか。

弊社に期待することはありますか?

(We Agri 根岸様)現在までのDXを登山に例えると、10合目の山頂を目指す道のりの、今はまだ3合目ぐらいにいると思っています。まだまだ次の開発が控えています。

また農業界のように、「DXってどうやるの?」というアナログ企業の中には、実はデジタルとの親和性が高い企業があると思います。その人たちのDXへの取り組みのハードルを下げて、さまざまな企業のDXをサポートしてあげてください。

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